INTERVIEW 002

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2019 年の女子高生がなりたい職業第1位にランクインした「公務員」(ソニー生命保険調べ)。
そのお仕事の魅力に迫るべく、今回は横浜市の職員として働く中川悦宏(よしひろ)さんを突撃しました。
堅いイメージのある公務員の真逆をいく、自由でクリエイティブ、そしておしゃれな中川さんに湘ゼミスタッフも驚愕しっぱなしです!

答えてくれる人

横浜市役所 政策局 共創推進室

中川 悦宏 さん
(32歳/日本大学文理学部出身)

― 公務員ってどんなお仕事ですか?

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公務員といっても実はいろいろな働き方があり、国の各省庁、県庁、市町村の役所、自衛隊、警察、学校の先生など様々です。僕の勤める横浜市は日本最大の「基礎自治体」(市区町村)であり、日本最大の政令指定都市でもあります。だから市役所の職員といっても、ひとつの小さな“国”のような規模感と仕事の幅があるのが特徴ですね。

僕自身、町内会など地域団体の皆さまと一緒に子どもたちの農業体験したこともあれば、厚労省と一緒に新制度の制度設計をして条例を策定したことも。まさに川上から川下までワンストップで行う市の仕事を経験してきました。

現在は企業やNPO、大学などの民間団体と連携してまちづくりを行う「共創」を進める、全国的にも珍しい部署にいます。社会や地域の課題が多様化する今、「産・官・学」の垣根を超えてパートナーシップを取ってオープンにイノベーションを起こす動きがますます必要になっていると感じますね。

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今夏で6回目となった横浜の大人気イベント「ピカチュウ大量発生チュウ!」も、中川さんら「共創推進室」が立ち上げに関わったイベントのひとつ。

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実は当初、3ヶ月しか準備期間がない中で始動したイベントで。ただあまりに大きい話だったので通常の担当業務を横断して室内で特殊部隊を作り、市役所の関係部署と連携しながら警察に話に行ったり地元の皆さんに協力をお願いするなど、各々が走り回りました。

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(c)2019 Pokemon. (c)1995-2019 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.
ポケットモンスター・ポケモンは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。

― どうして公務員になろうと思ったんですか?

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本当はサックス奏者としてプロのスタジオミュージシャンになりたくて、ハタチくらいのときに師事していた菊地成孔さんに進路相談をしたんです。その時、夜中の歌舞伎町で言われたのが、「筋は良いから10年前なら食えたかもしれないけど、今は業界的に厳しい。食い扶持は音楽以外で稼いだほうが良いのでは。」というものでした。

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ジャズライブハウス「Motion Blue YOKOHAMA」で演奏する中川さん。

「公務員は副業NGなので、ギャラはもらいません。だからこそ今はやりたい音楽しかやってないし、受ける依頼は厳選します」(中川さん)

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ハイブランドのPR動画の音楽制作、プロミュージシャンのCD制作やライブ出演など、今もボランティアで音楽活動を続けている。

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「音楽業界の最前線にいる売れっ子の師匠が言うんだから、それが現実なんだろう」と納得して、スタジオミュージシャンになることは諦めました。じゃあ他にどんな仕事なら前向きに取り組めるか、音楽以外で自分のアイデンティティは何かと考えた時、地元のためなら頑張れるかなと思ったんです。
だから僕の場合は育ってきた横浜市以外、ありえませんでした。

― どんな学生でしたか?

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中学の時からジャズは聴いてました。ジャズに夜の広がりというか、宇宙みたいなものを感じて、「やっぱ“夜”超いいわー」ってなってましたね。周囲にはほとんど聞いている人はいませんでしたけど。(笑)

その一方でやりたくないことはまったく続かなくて、小3のときに「お金がもったいない」と、自分で習いごとを全部やめてきたのを覚えています。
勉強はやればできる方だったと思いますが、目的がないとスイッチが入らない。高校受験は、当時好きだった先輩が市ケ尾高校を目指していると聞いて、それで頑張ったという感じでした。(笑)

大学受験に関しても、正直、どこの大学でも自分にとっては大差ないなという感じで選んだので、計画性はほとんどないんです。当時やっていた吹奏楽の延長でクラシックも考えましたが、「クラシックの厳格な世界には耐えられないな」と思いポップス・ジャズへ転身し、クラシックでなければ音大でなくてもなんとかなるなと思い、日本大学へ行きました。もっとしっかり考えて決められればよかったのですが……。

横浜市と「ひつじのショーン」がコラボした企画も、中川さんが仕掛けたもの。

「もともとは妄想に近いものでしたが、英国と横浜のつながりを調べてストーリーを作り上げていき、アードマン・アニメーションズ(『ひつじのショーン』の制作会社)にも好意的に協力いただけました」

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(アードマン・アニメーションズによる横浜市オリジナルアート
© Aardman Animations Ltd 2019

横浜市は東京2020大会における英国のホストタウンとなっている。 英国代表チームのキャンプを受け入れるほか、横浜市民約374万人とともに 英国とのつながりを深める取組を仕掛けている。

― 公務員になるにはなにが必要ですか。

僕のように地元密着の市区町村に勤める場合は「その地域を良くしたい」という“愛”は欠かせません。あと勉強は最低限必要ですね。
ただ勉強は、僕の解釈ですけど、試験に受かるための“ツール”でしかないという割り切りの部分と、「この問題に横浜市はどう対応してるのかな?」という社会の中での疑問を掘り下げていく“実学”というふたつに分かれると思うんです。そのことを理解したうえで、ツールとしての勉強時間を最短で終わらせるための方法を編み出すとか、そういうことを自分はやっていました。

その中で、「世の中のどんなことに自分は関心があるのか」ということにも敏感でいてほしいと思います。公務員になったあともこの感覚は大切で、「好き!」みたいな前向きな衝動でもいいんですけど、どちらかというと僕は「なんでこれはそうなっているのか」「そのやり方じゃなくてもいいのでは」みたいな、違和感の方をむしろ大事にしています。極論、知識や勉強って、その違和感をうまく説明したり解決したりするためのツールだとも言える。自分のもやもやを解消するために、勉強をうまく使ってほしいなと思います。

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「多岐にわたる共創の仕事は、一からクリエイトしていくものが多い。 なので、『これってマニュアルないんですか?』みたいなタイプの人は向かないかも」(中川さん)

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役所は基本的に各部署がそれぞれの領域内で仕事をしていますが、世の中が複雑になってきて課題も多く、手が回らないような状況もままあります。でもその状況を良くしていきたいし、ひいてはそれが横浜をアップデートすることにつながると思うんです。
僕は横浜をいろんな人とアップデートしていきたいし、それが未来に向けての一歩になったらこんなにうれしいことはないですね。

― 以上、子どもの夢の現場よりお届けしました。 ―

横浜市役所 政策局 共創推進室とはこんなところ!

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※現在の庁舎から、2020年6月には馬車道駅前に移転する

2008年に設立された、横浜市の公民連携に関する総合調整部署。民間企業等からの提案・相談を受け付け、関係部署との間に立ちながら連携事業の構想~実現までをコーディネートする。

また、PPP/PFIやサウンディング調査などを含む公民連携の各種制度を所管し、庁内での導入・運用を支援している。

https://www.city.yokohama.lg.jp/business/kyoso/kyoso-info/syousai/about.html

あなたははじめて夢を聞かれた時、
いくつの世界を知っていましたか?
この企画をとおして、将来やりたいこと、
自分がすきなこと、はたらく未来を
少しでも広げるきっかけになればと思います。
ぜひ今後も子どもの夢企画をお楽しみに!

湘南ゼミナール