湘南ゼミナール 千葉県公立高校受験情報

2024年度千葉県公立高校入試分析資料

英語

「読解力重視の入試」

〈難易度の変化〉
昨年より易化

〈総評〉全体的なコメント

今年度から一部問題にマークシートが導入されたこともあり、記述式問題が減り、記号選択問題が増えた。また、リスニング問題が2問(6点分)減ったため、問1~問6が合計50点分で昨年度より配点減、残りの問7~問9(読解問題)が合計50点分で配点増となり、読解問題の配点割合が大きくなった。全国的な読解力重視の入試傾向は今後も変わらないと思われる。また、記号問題が増えたことで、ミスを誘導する紛らわしい選択肢が散見される。このような精読を要する問題は今後より増えると思われるので注意が必要である。今回はマークシート導入もあり、昨年に比べると取り組みやすい問題であったが、難易度の高い単語・連語・熟語が注釈なしで問題文に含まれている(例えばbe related to)ので、教科書に載っている重要単語を暗記するだけでは読解するのが難しい入試となっている。高得点を狙うには、何よりもまず豊富な語彙力を身につけることが必須であり、そのうえで過去問演習等を通して読解力と読み解くスピードを鍛えていくことが重要である。

大問1~大問4「リスニング」:標準
問1~問3は、昨年同様の標準的な問題であったので過去問演習をしていれば平易であろう。問4は、昨年度までは「英文を聞いて、その要約文の空所に入る英単語を書く問題」(4問、12点分)であったが、今年度は「英文を聞いて、その要約文の空所に入る適切な語句を選択する問題」(2問、6点分)に変更された。結果的に、長年出題されていた単語を書く問題は1問もなくなった。突然の形式変更に戸惑った生徒も多かったであろうが、内容的には昨年度の形式に近いものであったので、落ち着いて解けばそれほど難しい問題ではなかった。ただし②は、同義文完成の要素が入っている問題(読まれたto talk withをcommunicating withに置き換える)であったうえ、紛らわしい選択肢が入っていたので、ミスをしてしまった受験生も多かったと思われる。聞こえた単語を直感的に選ぶのではなく、前置詞の意味まで正確に汲み取る必要があった。

大問5「文法(語形変化・語順整序)」:基礎
語形変化は、基本的な文法事項を問うもので、ここ数年の中では最も平易な問題であった。語順整序も「比較」「間接疑問」「関係代名詞の省略」と頻出の単元であった。特に「関係代名詞の省略」は2年連続で出題されているので、「後置修飾」の問題演習は必須であろう。過去問演習を繰り返していた受験生にとっては例年どおり得点しやすい問題であった。

大問6「条件英作文」:標準
昨年と同様の形式・配点であるが、昨年までは「1つの場面における4コマ漫画のセリフ2箇所を考える問題」であったが、今年は「全く関連のない2つの場面におけるセリフ1箇所ずつを考える問題」に変更された。2問の関連性がなくなり、取り組みやすい問題となったが、(2)「雨宿り」の状況説明を少し難しく感じた受験生もいると思われるので、昨年に比べ若干難易度は上がったと考えられる。とはいえ、中学2年生程度の英文で書ける内容がほとんどなので、日頃からできる限りシンプルに思考する訓練をしながら、書いた英文を講師などに添削してもらうのが最も効果的であろう。

大問7「長文読解」:標準
(1)は昨年同様300語程度の長文であったが、昨年のような文法力・精読を求めるような問題は見られず、恒例の「内容から推測して単語を書く空所補充問題」も対義語(up⇔down)を考えればよく、例年よりも平易であった。とはいえ、「increase」や「situation」のような、公立入試であれば以前は注釈に載ったであろう単語も今はほとんど注釈に載らないので、それなりの語彙力がついていないと読むのは難しいであろう。長文読解に近道はないので、日頃から語彙を増やす努力が肝要である。(2)の図表に関する問題は、すべて選択問題で、条件も探しやすい内容であったので、昨年よりも平易であった。

大問8「長文読解」:標準
昨年とほぼ同様の約450単語であった。問題形式は、「脱文補充」「内容一致」は例年通りだが、例年出題されていた「英問英答」の代わりに「10~15語の条件英作文」(5点)が出題された。この英作文は、昨年度までは大問9で出題されていた難易度の高い問題であるが、今年度は前後の文章を参考にすればよかったので内容的には以前よりも書きやすいものであった。そのうえで昨年よりも配点が高くなっているので、上位校受験者は差がついた問題であろう。

大問9「対話文読解」:基礎
昨年度は難易度が高めであったが、今年度は日常的な会話のうえ、難易度の高かった条件英作文がなくなり記号選択問題のみになった(条件英作文は大問8で出題)ので平易であった。一方で、本文中のことわざが比喩であることをきちんと捉えないと間違いを誘発しやすい内容であったので、精読が求められる。また、紛らわしい選択肢も見受けられるので、選択肢は一つ一つ丁寧に吟味する必要があるだろう。

数学

「マークシート式での解答になり、昨年度よりも易化。汎用性のある解法を会得できているかが鍵」

〈難易度〉
昨年度より易化

〈総評〉全体的なコメント

今年度より導入されたマークシート式での解答は、全体の7割程度であった。大問は1から4まであり、小問集合(各領域における基本問題、作図含む)、関数、平面図形(証明含む)、総合問題(平面図形、1次関数)からの出題であった。大問1では難易度は昨年度よりも易化し、取り組みやすい問題が増えた印象だ。あらためて、基礎・標準レベルの問題をいかに正確に早く解けるかが合格への鍵となった。一方、大問2の関数や大問3の平面図形では、基礎的な問題とともに、入試頻出の応用問題が出題された。過去問演習を通じて、汎用性のある解法を取得できていたかが鍵である。また、大問4の総合問題は、思考力や応用力を問う問題となり、いかに適切に対応できたかが大きな点数の分かれ目となった。入試に向けて、早い段階から基礎・標準レベルを取りこぼさないことと、応用問題に向けた思考力や表現力の育成が必要となる。日頃の学習の際に、計算演習などのパターン演習のほかに、早期の段階から入試問題などに触れる機会を増やすことで、汎用性のある解法の定着が肝心である。

大問1「計算・小問集合」:難易度(基礎~やや応用)
合計16問・計51点と昨年度の大問1と形式に大きな変更はなく、各単元からバランスよく出題された。各小問に目を向けると、 (2)に『方程式(2次方程式の解の公式)』を使う問題など、昨年度に引き続き、基礎的な一行問題が数問出題された。一方、2014年度前期選抜以来の『データの活用(標本調査)』の出題や、『平面図形(作図)』の前に小問が設問されているなど、過去の形式とは異なる出題もあった。総じて難易度は基礎~標準レベルであるため、受験生には冷静な対応力が求められた。また、受験生が不得手な『空間図形(展開図と最短経路)』や『平面図形(円周角の定理)』、『データの活用(確率)の内容での出題もあったが、定期試験レベルの問題であった。確実に早く得点できたかが点数の分岐点であっただろう。日頃の学習の中でも、時間を測って解答するなど、入試を意識した演習に取り組むことが重要である。

大問2「関数」:難易度(基礎~応用)
出題は小問3問と、例年同様の出題形式であった。昨年度は例外的に1次関数と図形の融合問題であったが、今年度は例年同様、2次関数の放物線と図形の融合問題での出題であった。
(1)では、指定された座標を求め、その後直線の式の傾きと切片を求める問題であった。平行四辺形の性質を利用する問題が、2021年度入試で出題されており、過去問演習を通じて、ただ解法を理解していくだけでなく、周辺知識まで定着できたかどうかが差になったと推察される。(2)では、与えられている条件を満たす座標を求める問題であったが、難易度は例年より易しい。問1同様、日頃の過去問演習のなかで、その解法を吸収するだけでなく、汎用性のある解法や考え方を定着していく必要がある。

大問3「平面図形」:(基礎~応用)
今年度は2つの三角形の合同の証明をするとともに、その結果を利用し三角形の面積を求める問題であった。昨年度とは異なり、(1)では証明の結論の穴埋め問題ではなく、証明するための条件の穴埋め問題であった。ただ、前後関係から答えが導き出せるため、大きな問題はなかったであろう。また、(2)は、三角形の内角の和、もしくは円周角の定理の逆を利用した証明問題であった。4点が同一円周上にあることを利用できた受験生が記述の時間を短縮できたであろう。日頃の学習から様々な解法に触れておきたい。(3)は三角形の面積を求める問題であった。例年であれば難問が出題されるが、今年度は頻出問題であったため正答できた受験生はトップ校受験者を中心に多そうだ。過去、国私立・公立問わず同様の出題があるため、県立高校の受験者であっても幅広い問題に触れることが肝要であろう。

大問4「総合問題」:難易度(基礎~やや応用)
新入試制度に変更して以降、同様の形式である生徒と先生の会話を読んで解答する形式である。今後も継続的に出題される可能性が高いため、会話文問題の対策は必須である。今年度の問題は、2022年度、2020年度前期と同様、1次関数と図形の融合問題であった。理科的要素も相まって、見た瞬間に難しそうと感じた受験生が多かったのではないだろうか。ただ実際は会話文中にヒントがちりばめられているため、誘導に従って落ち着いて取り組めた受験生は一定の得点ができただろうと思われる。日頃の勉強から、難易度が高そうな問題でも、まずは作業をすることを習慣づけたい。(2)では、例年同様、1次関数の問題である。文字を利用して解いていくことになるため、日頃の演習でも、文字を利用する抽象的な問題にも慣れていく必要がある。(3)では、2022年度の最終問題同様、立式した式から導き出した規則性を利用し解いていく問題である。方針自体は立てやすいが、計算にやや複雑な分数処理を要求された。情報処理力と試験全体の時間配分がこの問の成否を分けたであろう。

国語

「記述の難化が進み、より読解力・表現力の求められる入試へ」

〈難易度〉
昨年度よりやや易化

〈総評〉全体的なコメント

軽微な変更として漢字の書きが1問減り、その分の配点が読解に移った以外、問題構成に大きな変更は見られかった。また、漢字の読み書き・記述・作文などはマークシート化されず、大きな形式変更はなかった。
文章題は文章量が多く、一問に時間をかけすぎると解答時間が足りなくなる恐れがあった。問題ごとの優先度・難易度が明確な点も昨年と変わらないことから、時間配分を意識しながら回答する必要がある。
マークシート式への変更に伴い、選択問題は全体的に易化したが、対照的に記述問題は全体的に難化した。全体的に記述の文字数・配点は大きく、敬遠せずに取り組む姿勢が求められた。
平均点は昨年よりは上がり、50点台前半に落ちつくと考えられる。

大問1「聞き取り」:昨年よりやや難
昨年と同様に文脈の理解が必要な問題が多く見られた。その中でも(2)はどの選択肢も判断が難しく、受験生も判断に迷っただろう。音声を聞く際メモを機械的に取るのではなく、早い段階で選択肢を確認・判断する力が求められる。

大問2・3「漢字」:昨年同様
書きの問題が1問減り配点が減少したが、他に大きな変更はない。読みの難易度は変わらず高く、「示唆(しさ)」「諮(はか)る」など日常ではあまり用いられない漢字も多く、十分な対策が出来ていなければ苦戦は必至だろう。書きに関しては全体的に易しく、最低限の知識があれば十分解答できた。「一日千秋」のような四字熟語は毎年出題されているため、日頃から四字熟語に触れておくことが肝要だ。

大問4「論説」:昨年同様
読解の中心となる長文と、補助的な役割を果たす短文の二文構成という構成は変わらなかった。文章量が増えており、読解に時間がかかるうえに内容も中学生には難しいものであった。文章を速く読む訓練が今まで以上に重要になる。
難易度の高い設問は(5)。(a)(b)ともに長文・短文双方から必要な情報を拾い、抽象的な言い換えが求められた。「思考力・判断力・表現力」を問われた問題であったため、苦戦した受験生も多かっただろう。
速読はもちろん、具体的な内容を抽象度を上げて書き換える能力も必要。普段から線引きなどの作業を徹底したうえで、論理的な解法や記述の訓練を繰り返し行うことで得点力の向上につながる。

大問5「小説」:昨年より易
読解の中心となる長文と、それに関して話す会話文という構成は論説文同様で、文章量は増加傾向にある。
難易度は文章・設問ともに易化。内容は時代物だが、難解な表現などもなく、読みやすかった。
難易度が高いのは(6)(a)Ⅰ、(b)といった記述の問題。どちらも空欄の前後文を根拠に書きあげる問題であり、論説文同様高い書き換え能力が求められた。
特に(6)(b)は30字以上40字以内と長めの記述であり、条件語句を満たしながら記述を完成させるのは簡単ではなかっただろう。
対策としては記述・解法の訓練はもちろんだが、部分点も加味して要素を拾いながら書く練習を繰り返すとよい。

大問6「古典」:昨年同様
今年度は特に古文の難易度が高く、内容をつかみづらいため、ろうそくと二百文の関連性が想像しづらいなど、受験生には理解しづらい部分も少なくない。
先に会話文を読み、概要をつかんだうえで古文の読解に移ったほうが読み取りやすかっただろう。
(5)(b)の記述問題の難易度は特筆して高い。例年通りであれば古文の記述問題は20~25字程度の字数であったが、今回は30字以上35字以内と字数が多く、最低限の要素だけでは字数不足になる仕様だ。古文の文脈と会話文の文脈を読み解き、正しい内容を補う必要があった。
一方で漢文の返り点問題は書き込みから選択式に変更になり、難易度が下がった。
傾向が変わらない問題や難易度の下がった問題を確実に解答し、点数を確保するのはもちろん、読解力や思考力、表現力が試される問題をいかに攻略するかが高得点の鍵となる。

大問7「作文」:昨年より難
昨年見られた資料の読み取りから形式が変わり、言葉の意味の説明とそれに関する具体例を答える問題。簡単な説明は添えられているが、そこから具体例を考える点、題材が「知恵」と「知識」という抽象度の高い点が難易度を高く感じさせただろう。だが「条件に従って書く」という点を守って書くことができれば、従来の作文と大きく違わずに書くことができる。
不慣れな形式・内容であっても基本を守って取り組むことを意識したい。

理科

「基礎的・基本的な知識を問う出題が中心の入試」

〈難易度の変化〉
昨年よりやや難化

〈総評〉全体的なコメント

形式は昨年と同様、大問9題の構成。問1の小問集合を含め、物理・化学・生物・地学から各学年バランスよく出題された。問題構成は、各大問で小問4問ずつの構成が基本であり、記述問題は2問で6点分、作図やグラフ作成など図示させる問題は2問で7点分、名称を書かせる問題が5問で13点分、計算問題で数値を書かせる問題が5問で12点分、化学反応式を書かせる問題が出題の仕方に特徴があったが、基礎内容でありこちらが1問で3点分、その他は記号で答える問題で22問で59点分という出題であった。マークシートとの併用型試験の導入初年度という背景もあったのか、正解がはっきりしていて素直に解答していける非常に解きやすい印象の構成であった。知識問題が大半を占めるのも例年同様であり、教科書の基礎・基本事項の定着がなされていれば、高得点が狙える入試である。言い換えれば、いかに小さなミスを防ぐかがカギを握る入試である。一方で、観察・実験を題材に話題を広げて問う出題の仕方も例年通りである。そのため、情報量や文章量は非常に多く、データや図・表などから結果を分析して解釈する力やそれを表現する力が求められることに変わりがない入試である。日頃から重要な箇所への着眼や線引きを徹底するなど、情報の整理をする練習が望まれる。今年度も比較的容易な問いが並んだが、各分野で頻出の応用問題はしっかりと解ける状態まで反復練習をしておきたい。細部の知識が出題されることも稀にあるため、曖昧な知識はその都度、教科書で確認をする癖をつけた学習をすることが効果的である。また、全国の他県の入試問題の傾向からも、事象・現象の原理原則や、理由を説明できる本質的な理解を問うような出題も、今後増えていくと推測する。教科書内容だけでなく、応用・発展内容を日頃から触れ続けていくことなど、思考力・判断力・表現力をより一層強化する学習への主体的な姿勢が望まれる。中1や中2のみなさんは、毎回の定期試験に向けて学習する際に、教科書もしっかり読み込んでいこう。基礎知識やどんな実験・観察があるかが印象に残っていれば、入試対策になったときに単元ごとの学習をスムーズに進めていくことができる。ぜひこれからそういった学習方法を意識して取り組みたいところである。では、各大問の分析を以下にまとめるので、今後の学習の参考にしよう。

大問1「小問集合」:難易度(基礎)
各学年、各分野(化学・生物・地学・物理)から偏りなく出題される小問集合の形式は例年通りで、内容はどれも基礎的な問題のみである。平均の速さの計算をさせる問題を出題した昨年のように、基礎計算が出題される場合もあるので、日頃から苦手意識を持たずに取り組むことも大切である。
大問2「気体の性質(中1化学)」:難易度(基礎)
気体を発生させる実験と、発生した気体の性質を調べる考察からの出題であった。実験方法や気体の調べ方、気体の名称・性質、同じ気体の他の発生方法が問われた。教科書にある実験が題材で、どれも基礎内容であるので全問正解したい。

大問2「気体の性質(中1化学)」:難易度(基礎)
気体を発生させる実験と、発生した気体の性質を調べる考察からの出題であった。実験方法や気体の調べ方、気体の名称・性質、同じ気体の他の発生方法が問われた。教科書にある実験が題材で、どれも基礎内容であるので全問正解したい。

大問3「光合成(中2生物)」:難易度(基礎~標準)
オオカナダモを用いた光合成の実験を会話文を通して考察する出題であった。(1)で対照実験を設定させる問題が記述問題として出題された。指定語句と字数制限があるが、思考すべきことはシンプルで解答はしやすかった。(2)は顕微鏡の操作手順が問われた。曖昧な知識のままだと失点する可能性がある問題であったため、やはり「曖昧な知識は教科書で確認する」を徹底しておけば容易に得点できる問題に変わることは伝えたい。その他には、葉緑体、光合成における物質の出入りが問われたが、基礎知識で素直に解答できる問いであった。この実験や光合成の図も、教科書と瓜二つであり、解きやすかったはずである。

大問4「電流と磁界(中2物理)」:難易度(標準)
コイルや磁石を使った電流と磁界の関係を調べる実験からの出題であった。(1)は抵抗の計算が出題されたが、オームの法則の基礎計算であることに加え、マークシートにするため記号で選択させる問であるため非常に容易であった。(2)では実験結果から考察させる問題が出題された。コイルの振れ方の大小・向きから、流れた電流の大小・向きを考え、抵抗の大小を論理的に思考させる良い問題である。こういった問題に対して抵抗感を持たずに取り組んでいけると非常に力がつく。その他、電磁誘導やその結果を思考させる問いが出題された。この問も教科書にある実験が題材で、典型的な出題であったため解答しやすかった。

大問5「地層(中1地学)」:難易度(応用)
露頭やボーリング試料から地層の重なりを調べる考察からの出題であった。(1)ではあくまで知識が問われているが、空欄の前後の考察の文章から「堆積岩を選ばなければならない」という思考ができたかがカギであった。(2)は新生代の示準化石を選ぶ問で基礎知識の問題。(3)(4)は地層の深さや傾きを決定させる解き方に慣れておけば容易ではあったが、今回は文章中に傾きの有無は明示されており、線引き等でその情報を読み落とさず、東西にどのようなずれ方をしているかを数値計算を元に算出できたかで正誤が分かれた問題であったため、正解率は比較的低くなる。難しめの問題にはなるが、日頃から入試問題で練習をしておけば確実に正解できる問題である。また、中盤の問いでもあるため、次の大問の浮力を見て早く先に進まないといけないと焦って読み落としをしたり計算ミスをしたりしてしまわぬよう、決めておいた時間配分さえ守れていれば、落ち着いて集中して解答しきりたい問題である。

大問6「浮力(中3物理)」:難易度(応用)
水中の物体にはたらく力を調べる実験からの出題であった。ばねや動滑車を使った実験にしているため、教科書にある実験をいくつか組み合わせた応用問題である。(1)は水圧の典型的な知識問題で確実に正解したい。(2)①ではフックの法則を利用して実験結果のグラフから深さ0㎝におけるばねの伸びを数値として抽出できたかがカギであった。(2)②は浮力を問う問題で、物体にかかる3つの力(重力・張力・浮力)を図示し、グラフから深さ→ばねの伸び→張力(ばねが物体を上に引く力)と思考できたかがカギであった。ここでは①で出した答えを利用できるようになっている。浮力は力の図示が非常に大切である。日頃から力を図示する練習を必ずやっておこう!中2のみなさんはもうすぐ中3でこの単元・問題に出会うよ!お楽しみに!(3)はここまでの内容に動滑車を入れた応用問題である。深さ0㎝のとき、深さ5㎝のとき、この2つのときの力を図示することができれば難解ではないが、グラフの外形が想像できているからこの思考になるため、しっかり正解しきれるグラフが書けた生徒は少なかったのではないかと考える。しっかりこの分野の入試問題レベルの問題演習ができていたかで大きく正誤が分かれた問題であった。

大問7「太陽と月の観測(中3地学)」:難易度(標準~応用)
2022年の皆既月食の観察を話題の起点として、会話文を通して月と太陽の観測からの考察をする出題であった。(1)の衛星の公転は知識問題として容易に正解できた。(3)では皆既日食のときの天体の位置関係と太陽の欠け方が問われた。欠け方は、月の動き方をイメージできなければ解きづらく、また、西か東かで迷った生徒もいただろう。これは地球にいる我々主体の方角の話であることを意識したい。(2)の月の見え方も位置関係の把握がカギである。天体は中1物理の光や力の分野同様、図示が肝になるので、日頃から図を描く癖を大切にしたい。また、(2)は問題文冒頭の2つの日付を線引き等で見落としていないかが正誤の分かれ道であった。(4)は数学の相似の考え方を連想できた生徒は比較的解きやすかっただろう。ただ、それがわからなくても、文章中に考え方が書かれているので、それを活かすことができたかがカギである。これも図示がうまくできると非常に解きやすいものとなる。

大問8「金属の酸化(中2化学)」:難易度(基礎)
金属が空気中の酸素と結びつくときの金属の質量と酸素の質量との関係を実験結果から考察する出題であった。教科書にもある典型的な実験が題材。(1)の化学反応式を書かせる問は、出題の仕方に特徴があったが、指定を素直に捉えていつも通り解答できれば正解できる知識問題であった。(3)も知識で解ける出題と見なせるが、あくまで実験結果から記憶している比の数値が出てくるかは慎重に解きたい。(2)は理由を字数指定で記述させる問だが、深い思考は問われておらず、頻出の記述であるので容易に解答できた。(4)の不完全反応の問題は典型的な出題であり、解答の手順を押さえておけば確実に正解できる1問だった。が、この問題のみ、H25年度後期入試の社会以来の出題ミスにより受験生全員に得点が与えられることとなった。みなさんにできることは、正しく出題されていたとしたら確実に得点できるように準備することである。

大問9「生態系(中3生物)」:難易度(基礎)
生態系に関して、先生との会話文を通して出題する内容であった。教科書にあるような図も多く利用され、どれも知識事項が多く、(3)も生態系の数量の関係を思考する典型的な出題であったため容易に正解できた。最後の大問であるため、時間に焦っている生徒は、(2)で草食動物の「草」だけを見て植物を連想して「生産者」だと勘違いをしたりしないようにはしたい。容易に解答できる問題を最後の大問に持ってくる傾向があるのは受験生への思いやり・愛情なのだろうか。

総じて、常に知識事項は頻繁に教科書で確認しつつ、日頃から応用問題に対しても練習しておくことが高得点獲得のカギになると言える。毎回の定期試験の段階で1つ1つの分野や単元を高いレベルで仕上げておくことがとても大切である。

社会

「出題傾向に変化なし、難易度は易しめに」

〈難易度〉
昨年より易化

〈総評〉全体的なコメント

資料の読み取りをもとにした思考力や判断力を求める問題は昨年と変わらず大問ごとに出題されたが、比較的平易な問題が多かった。条件記述も昨年に比べると書きやすい問題が多く、受験生にとっては解きやすい問題構成だったといえる。平均点は60点前後になると思われる。
特筆すべきは、大問1と大問2において正解を「すべて」選ぶ形式の問題が出題されたことが挙げられる。また、今年度は地理と歴史が新指導要領の教科書になってから最初の入試となったが、新たに加筆された内容から出題はされなかった。来年度以降の動向に注意したい。

大問1「総合問題」:難易度(基礎~標準)
読み取り問題は正しいものを「すべて」選ぶ形式であるが、読み取り自体は平易であったため、昨年よりも正答率が高くなると思われる。全体的に取り組みやすい問題が多かったが、8字の字数指定がされた「環境アセスメント」がやや難しかったか。

大問2「地理(日本地理)」:難易度(標準~応用)
他の大問に比べると難易度はやや高かった。都道府県に関する問題では、政令指定都市の定義が「人口50万人以上」であることが問われた。地形図では、正しいものを「すべて」選ぶ形式の問題が出題された。問われていることを理解し、条件に沿った回答ができるよう作業を怠らないように意識したい。

大問3「地理(世界地理)」:難易度(標準)
世界地図の読み取りはメルカトル図法と正距方位図法を見比べて判断する問題が出題され、その他の設問はヨーロッパを題材とした問題であった。また、雨温図の問題が4年ぶりに出題された。

大問4「歴史(前近代史)」:難易度(標準)
条件記述では、歴史分野としては珍しく図や説明文が提示され、御家人の生活が苦しくなった理由が問われた。また、昨年と同様に日本と世界のできごとを関連付ける問題が出題された。日頃から歴史の年表ページを見るなど、同時代のできごとを整理できるようにしたい。

大問5「歴史(近・現代史)」:難易度(標準)
千葉県では定番の4つの選択肢のうち指定された時期に該当する3つの選択肢を並び替える問題が出題された。第一次世界大戦後に発足した「国際連盟」と第二次世界大戦後に発足した「国際連合」を区別できたかどうかがカギとなった。また、四大公害病の一つである「四日市ぜんそく」がどの県で発生したかを問う問題が出題された。語句を覚えるだけでなく、その語句のもつ意味を理解するところまでおさえる必要があったと言える。

大問6「公民(経済)」:難易度(応用)
近年、出題が見られなかった需要供給曲線に関する問題が出題された。需要量と供給量の関係を読み取り、価格の推移を判断する必要があり、やや難しめの問題だった。(3)では日本経済の年表をもとに各時期の経済成長率の推移のグラフを選ばせる問題が出題された。見慣れない形式であったため、戸惑った受験生もいただろう。他の大問に比べると難易度は高かったと思われる。

大問7「公民(政治)」:難易度(基礎~標準)
3問すべて裁判所が題材となった。語句記述では「被疑者」が問われたが、漢字指定であったことも踏まえると正答率は決して高くないだろう。また、司法制度に関する正誤を問う選択問題が出題されたが、「すべて」「~ことはない」という断定的な表現が多かったため、落ち着いて取り組めば十分正解できたと思われる。

大問8「公民(国際)」:難易度(基礎)
(1)では国家の領域を題材とした正誤を問う選択問題が出題された。「領海」「排他的経済水域」「公海」といった語句の定義が明確であれば、十分正解できる難易度であった。

〈対策〉
近年の千葉県入試は、資料の読み取りをもとにした思考力や判断力が求められる問題だけでなく、語句の定義が定着しているかを確認する問題が出題されている。来年の受験生には、まず教科書の熟読をおすすめしたい。その際は教科書本文だけなく、記載されている資料や補足の説明、年表ページなども熟読すると良いだろう。また、入試過去問を繰り返し解き、千葉県の入試形式に慣れておくと良いだろう。