

翠嵐・湘南・横浜サイエンスフロンティア高校など、神奈川県下の難関校は、5教科の学力検査に加えて、第6の入試科目といわれる「特色検査」を実施しています。2019年以降の特色検査突破、志望校合格のために、以下につづく各高校の傾向と対策をぜひ最大限にご活用ください。特色検査実施校に数百名の合格者を輩出している湘南ゼミナールが自信を持ってお薦めします。
■ 2018年度の実際の特色検査を高校別に分析し、次年度への対策の指針をまとめました。
特色検査 変化と安定の6年目
自己表現検査「ペーパーテスト型」実施校
横浜翠嵐・希望ケ丘・横浜緑ケ丘・柏陽・横須賀・湘南・平塚江南・厚木・横浜サイエンスフロンティア
開示の影響による選択問題の増加による変化と安定
昨年度から学力検査の解答用紙に「マークシート」が導入されました。また、特色検査は採点済解答の写しが全受験者に開示されることになりました。以上の影響からか、昨年度大半の学校で選択問題が大きく増えると同時に、設問数も増加しました。今年度はその変化が落ち着いたのか、多くの学校でたとえば設問数が減るなど、極端な性格が弱まったことも安定した印象につながったのかもしれません。一方、設問内容から見る学校の個性は強まる傾向があります(詳しくは各学校の分析に)。ここでは、今年度の学校ごとの特徴と変化を、次の3つの観点で整理します。
1 全体的傾向 どのような学力を求めるか
2 教科の傾向 どの教科を重視しているか
3 形式の特徴 選択が中心・説明記述重視など
高校ごとの特徴と変化(□以降が変化です)
- ●横浜翠嵐
- 1全体 全方位的読解力と思考力・極めて難解な問題も
- □説明の要求度が弱まる
- 2教科 特定の教科の問題ではないが、全方位的
- □英語が再び増加
- 3形式 説明記述問題と複雑な選択が県内では特に多い
- □説明が減少・選択が増加
- ●希望ケ丘
- 1全体 論理・数学などのパズル的問題が中心
- □知識的要素が無くなる
- 2教科 論理・数学・国語・英語なし・知識ほぼ不要
- □知識不要になり小型化・設問減
- 3形式 語句記述・説明記述問題なし・選択と計算が中心
- □語句記述・説明記述が無くなる
- ●横浜緑ケ丘
- 1全体 説明記述と作文とプレゼンテーション
- □昨年まで作文⇒数学的説明記述
- 2教科 論理・国語・数学
- □問題1に、数学的要素が登場
- 3形式 説明+企画
- □企画部分は変化なし
- ●柏陽
- 1全体 国語読解と英文読解:読解重視の学力検査発展型
- □読解重視が強まる
- 2教科 国語・英語の読解に、数理社を加えた教科横断
- □読解重視の傾向が強まる
- 3形式 選択問題多数
- □変化なし
- ●横須賀
- 1全体 パズル重視・教科の知識の必要性は限定的
- □知識問題が加わる
- 2教科 英語・数学・理科・社会のパズルが中心
- □歴史パズルで知識を求める
- 3形式 選択と計算の比重大・ページ数最大
- □ページ数など多少減
- ●湘南
- 1全体 言語論理およびデータと数学を重視
- □変化なし
- 2教科 5教科+論理+技能教科が数問加わる
- □変化なし
- 3形式 選択・語句記述・計算中心で、説明1問のみ
- □設問数減
- ●平塚江南
- 1全体 多様性重視・コンパクトな設問でバラエティ豊か
- □変化なし
- 2教科 5教科+論理・多様な出題が一貫している
- □変化なし
- 3形式 選択が過半数だが、説明記述もある
- □論述が無くなる
- ●厚木
- 1全体 学力検査の拡大発展型
- □変化なし
- 2教科 国語読解を除く各教科・教科横断色は薄い
- □変化なし
- 3形式 解答用紙にマークシート使用・全て選択問題
- □設問数やや減・全設問が選択に
- ●横浜サイエンスフロンティア
- 1全体 資料読解+問題解決型プレゼンテーション
- □変化なし(やや解きやすく)
- 2教科 各教科の要素が統合された総合的問題
- □変化なし
- 3形式 語句記述・説明記述もあるが主力は論述
- □変化なし
選択問題を増やした学校が目立ちます。また、設問数を減らしたり、教科のバランスを変えたりするなどの変化があります。昨年からほぼ変わらないのは湘南と横浜サイエンスフロンティアくらいです。
特色検査を理解するための6つの質問と解答
設問を論理型(知識不要)と学力検査型(教科の知識が重要)に分類します
設問を論理型(知識不要)と学力検査型(教科の知識が重要)に分類します。
- 1 論理型
- 純粋に思考力を問う設問:ある種の「パズル」の場合もある学力検査には珍しいタイプ。知識をほとんど要求せず、論理的思考のみで解決する。公立中高一貫校の「適性検査」の延長線上にあるとも言えます。
- 2 知識+論理型
- 学習した知識+論理的思考力を用いる設問
中学までに得た知識を分野に関係なく自在に使いこなすことが求められます。高校入試、大学入試の小論文・総合問題などに似たものがあります。特色検査ならではのタイプです。 - 3 学力検査型
- 主に学習した教科の知識を用いる設問
学力検査の問題とよく似たものです。単独の教科の設問とほぼ同じ場合と、複数教科の内容を組み合わせた「教科横断型」の場合があります。
すべてにわたる速さと正確さが必要です《全方位的能力》
- 1 柔軟な理解力
- 教科・分野が特定できないので、まず「何が問われているのか」を正確に理解することが必要です。高度な言語能力が必要です。
- 2 幅の広い思考力
- 問題解決のために、これまでに学習したすべての事柄から、使える知識や方法を探し出し、問題にあてはめます。単なる教科横断ではなく、総合的な思考・知識を活かします。
- 3 速く正確な処理・表現力
- 多くの高校で時間不足が起こります。じっくり考えればできるものでも、焦ってミスしてしまうこともあります。「速く・正確に」計算や判断し、表現できることが高得点に結びつきます。
大いにあります。難関が目標なら、まずは挑戦すべきです
これまでに述べたような能力は、学力検査の共通問題だけを目標に学習しても、なかなか身につけられないものです。高校卒業後の進学や社会に出てからの知的能力による活躍を考えるならば、特色検査実施校に挑戦することは大いに意味のある選択です。今年受験した生徒たちが第一期生となる、2020年度末からの新・大学入試の問題は、特色検査に似た性格のものになる予定です。
また、それぞれの高校の問題から、その学校が求める学力や生徒像が読み取れます。学校選びにあたって、進路状況、難易度や部活動など以上に、学校の特色を理解することに役立つかもしれません。
まずは模試に挑戦し、特色検査を体感しましょう
学校ごとの課題や目標は、この後の分析で説明します。ともあれ、何が出るか分からない問題に対し、慣れることが大切です。湘南ゼミナールは特色検査初年度から、様々なメニューで受験者を鍛えてきました。今年度も、さらに強化します。スタートは春の「3月神奈川県特色検査模試」(新中2・新中3対象)。ここで特色検査がどんなものか、体感してください。課題や目標がより明確になります。
大きく異なります:次の三つのタイプに分類できます・もう一度整理します
- 1 思考力重視型 思考力を強く要求……「論理型」と「知識+論理型」の設問が多い
- □横浜翠嵐
- 推理・説明を重視した県下最高レベルの難問。ほとんどの設問が既存のパターンに似ていないため、斜め読みでは設問の意味が理解できない。「何が示され。問われているか」を正確に読み取るハイレベルな読解力が特に重要。
- □希望ケ丘
- 言語的論理パズル、数学的(図形を含む)パズルなど情報処理が柱。英語は用いない。今年は内容・方針は変わらないが、コンパクト化が進み、パズル色はさらに強くなった。
- □横浜緑ケ丘
- 数学的な推理を含む説明+企画シート作成。教科の知識はあまり用いない論理的思考力・創意工夫・表現力重視の問題。
- □横須賀
- 作業型の複雑なパズルが大半。英文読解も数理社の内容も、各種パズルのための素材という性格が強い。多くの作業を「速く・正確に・ねばり強く」行う学力を求める。
- □横浜サイエンスフロンティア
- 学力検査を土台に、独特の思考要素を加える……「知識+論理型」の設問が多い。
- 2 バランス型 学力検査を土台に、独特の思考要素を加える……「知識+論理型」の設問が多い。
- □湘南
- 論理重視・数学重視で、パズル的な問題も多い。中学までに身につけた言語能力・数学的能力を試される。技能教科(今年は家庭)の内容が出題されることがある。
- □平塚江南
- 5教科のバランスをとった学力検査型問題に論理重視の設問が混在。「意見」を含む説明記述問題が復活(2問)。
- 3 学力検査の延長という性格が強い……「知識型」の設問が多い
- □柏陽
- 国語読解と理数の教科横断型+英語読解と社会の教科横断型。読解問題の拡大強化型。
- □厚木
- 英語読解に各教科を関連づけた教科横断型+理数の発展的問題。
可能性はあります。高校も試行錯誤しながら進んでいます。
特色検査は、パターン化された難問ではなく、中学までの学習の中から、学校ごとに自由に出題される問題です。一定化させないのが方針という考え方もできますから、来年度以降も変化する可能性は大いにあるということです。また、新しい大学入試の試行が進むことで、その影響を受けることも考えられます。
特色検査は、実施する側にとって、作成だけでもかなりの手間がかかります。それでもわざわざ実施し、個性を打ち出そうという各校の姿勢は高く評価できます。特色検査のみならず、入試問題は本来、学校からのメッセージです。傾向の変化も含め、問題を通じて「学校との深いコミュニケーションを楽しむ」くらいの姿勢で臨みましょう。
特色検査 高校ごとの特徴・データ比較
データ集計結果ー形式・教科の観点から個性を比較する・文字数と設問数を昨年度と比較する
設問形式による比較
選択・記述(計算)・説明(作図・英作文)・論述に分類し、その比率を比較する
左側の薄いほうがシンプルで、右の濃い側ほど書く手間がかかると思ってください。横浜翠嵐高校の説明重視、厚木高校の選択重視がよくわかります。また、論述(意見を書く)のある高校は、横浜緑ケ丘(事実上ほぼ論述)、横浜サイエンスフロンティアの2校です。
教科のバランスによる比較
5教科および論理*に分類し、その比率で比較する *特定の教科内容とは別の論理を用いるもの
文系は薄い色、理系は濃い色です。どちらを重視するかのバランス、および、特定の教科ではない「論理」問題を多く用いる高校がどこかも分かります(横浜緑ケ丘高校はある種の「小論文型」なので特別です)。
文字数および設問数による比較
総文字数*・英単語数*・設問数・選択問題数を昨年と比較 *文字数と英単語数は、概算です。色の濃い部分が上位です。
神奈川県特色検査 問題別分析の見方
全設問を「何を読み」「どう考え」「どう表現するか」で分析します。
各高校の特色検査の問題の性格を、より具体的に、分かりやすく説明するために、「問題構造図」を用意しました。
すべての設問を分析し、難易度と性格を図にしたものです。
Point 1 設問ごとに「形式」「内容(教科)」「種別」を表示します
まず、設問の形式を「選択」「記述」「計算」「説明」「論述」に分類します。
次に、使われる教科の学力を示します。教科と結びつけにくい思考タイプのものは「論理」とします。
Point 2 「読解プロセス」「思考プロセス」「解答プロセス」に分けます
問題を解くための過程は、次の3段階です。
「読解」⇒「思考」⇒「解答」
この3段階のそれぞれで、どれくらいの手間をかけるのか、また、特に難しいポイントがあるかどうかを、下図のように「色つきマスと略号」で表します。「思考プロセス」は、左から右に、標準的な手順で行われる思考パターンを、1つの作業ごとに1つのマスで表します。
Point 3 表を見れば、設問の難易度と性格がわかります
上のような分析を図式化しました。表の例を下に示します。各高校の特色検査について、難易度のイメージをつかみたい場合、次のように見てください。
1)色つき枠のマスが多いほど難しい、または手間がかかる
2)表の右すみに、マスの数を数えた、簡単な難度を数値で記載しました。
まずおおまかにイメージをつかみ、その後で詳しく見てください。他の高校とも比較できます。
問題分析表の見方
2018年度の横浜翠嵐高校の実際の特色検査を分析し、次年度への対策の指針をまとめました。
A : B : C : D 比 2 : 6 : 2 : 2 / 時間 60 分 / 配点 200 点 / 観点:理解分析力・思考判断力・表現構成力・想像力
2018年度募集定員:358 名 / 2018 年度志願者数:777 名 / 2018 年度志願競争率:2.17 倍
やはり「県下最高レベル」―精密な読解・判断・推理力を求める「頭脳の総力戦」
-
問題の概要
全体は3部構成―難解な文章読解と情報判断で解答に接近する
- 特徴と変化
- 1全体的傾向 精密な読解力と思考力を要求・難解な語句が多い
- □文章は多少読みやすく
- 2教科の傾向 特定の教科の問題ではなく、全方位的な内容を含む
- □英語が再び増加
- 3形式の特徴 説明記述問題と微妙な選択問題が多い
- □説明が減少・選択が増加
難解な文章の読解と、一筋縄ではいかない論理的な推理・判断力を求める問題です。設問数は特別多くありません。しかし、「なぜそうなるのか?・これは何を意味しているのか?」という思考を常に要求します。示された情報の精密な読解力が特に重要です。斜め読みのレベルでは何を言っているのか理解できないような設問もあります。時間的にも内容的にも厳しい、「頭脳の総力戦」です。
- 課題1
- 事故の発生を防ぐための工夫「フールプルーフ」「フェイルセイフ」などの説明文を読みます。この後に、計算や論理判断、図で説明、などの問題が続きます。最後は1ページ分の英文読解です。文章中の「トレードオフ」の英語による説明を読み、その例としてふさわしい英文を選びます。
- 課題2
- 「立憲主義」に関する説明文を読みます。その内容についての論理判断の問題が中心です。広い意味での「内容一致」を判断する読解問題群です。
- 課題3
- 「植物の生存戦略」をテーマにした説明文を読みます。C(競争強者)S(ストレス強耐性)R(撹乱適応)の3つのタイプを理解し、仮説作成、論理判断、小英作文を解きます。
各課題の文章には、上記のような抽象的で難解な用語が多く用いられ、その語句がそのまま設問にも使われます。各設問は前後のつながりがあまり無く、順序も分野も不規則に並びます。また、選択問題が増えましたが、「すべて選ぶ」というような難しいものも多く、読解・思考・解答の全過程で頭脳をフル活用しなくてはなりません。
-
設問一覧 難易度平均[7.0](昨年度8.0) ※表の詳しい見方は概要にあります
読解・思考・解答すべての面で高レベル~選択問題が多いが、平易とは言えない
選択問題が 13 問中7問と、解答を書くだけなら楽になったのですが、県下最高の難問群です。次のような難しいポイントが、各設問に組み込まれています。全ページの表の上の部分「プロセス」に注目してください。
「文章に何が書いてあるのか、理解が難しい」「設問で何が問われているのか、イメージしにくい」以上が読解プロセス、「情報が多く、考えているうちに混乱しやすい」のが思考プロセス、「選択肢をどう選べばよいのか、まぎらわしい」「記述をどうまとめればよいのか、とりとめがない」などが解答プロセスでの難しいポイントです。 -
設問の特徴① 横浜翠嵐の問題はどのように難しいのか
精密な読解力+類推力がテーマ ―「何となく」では正解できない厳しさ
総文字数はおよそ 9200、英単語数はおよそ 900。最多ではありませんが、情報量が多く手間がかかります。3つの文章の内容は、かなりハイレベルです。
今年度の問題は選択が増えた結果でしょうか、似たタイプの思考力を求める問題が多く並び、同校が今年度求めた学力の性格がはっきり示されました(来年度以降も続く、という意味ではありません)。
2つにまとめます。1 難解で抽象的な語句を理解でき、他と区別できる精密な読解力
2 理解した意味を他の語句や具体的なことがらにあてはめて結びつける類推力では、設問の中身に沿って「どのように難しいのか」を、具体的に分析します。
課題1は文章で事故防止策の重要語句が2つ示されます。
フールプルーフ……装置やシステムが、誤った操作を受け付けないようにする
フェイルセイフ……装置やシステムが、故障などの異常時に被害をくいとめられるようにする前者は「起きる前」、後者は「起きてから」の対策です。
文章中に具体例が示されていますが、字面上区別しにくいこともあり、2つの概念を正確に区別するのは骨が折れます。ここまでが「読解力」です。なお、最初の設問1はこの区別とは無関係な「システム設計」です。慣れていないと「何が問われているのか」つかむのがたいへんです。システム設計の3問の後に「フールプルーフとフェイルセイフ」の区別をする選択問題です(この配列も集中力の持続を困難にさせ、難易度を上げています)。
設問2は、6つの日常的なことがらから「フェイルセイフ」にあたるものをすべて選びます。ここで「類推力」が問われます。たとえば、選択肢アを要約すると「電子レンジはドアを開けたままでは作動しない」です。これがどちらなのか選びます。「作動しない」なので、誤った動作を受け付けないようになっています。「フールプルーフ」です。選択肢は具体的なので難解ではありませんが、まぎらわしいものもあり、「すべて選ぶ」のには注意深さが必要です。乱雑な読解は通用しません。
設問3はフールプルーフの考え方にしたがって、紙を切る装置の安全システムを設計する問題です。ここでも理解した意味を適用する類推力が求められています。設問4の英文読解も設問2に似た構造です。文章中にある「トレードオフ」が英文で説明されます。この文章を読んで意味を理解し、そこから「トレードオフ」の事例といえる選択肢(説明と選択肢で1ページ分なので、かなりのボリュームです)を選びます。この設問には語注が無く、昨年は無かった別紙の「単語集」を参照します。ここでも読解力+類推力が厳しく試されます。課題2の「立憲主義」では次のような難解な語句が語注なしで並びます。「立憲主義」「便宜とコスト」「社会全体利便」「世界観を奉ずる」「硬性憲法」「軟性憲法」「集合離散と妥協・連携」……法律用語は文章で説明されますが、それ以外(集合離散)などは知らなければ文脈から推理する他ありません。課題2の求める読解力にはこのような「意味の推理力」も含まれます。 設問1は「多数決で決めるべきではない」ことを、設問2は「一人一人が自分で判断すべきこと」を、それぞれ5つの具体例からすべて選びます。特に設問1は選択肢の差異がデリケートで、かなり迷わされます。以上の2題の構造は課題1の類推力問題と同じです。設問3は文章読解の発展型で、「文意に沿わない選択肢」を選び、それを選んだ理由を文章中の語句を用いて説明します。国語によくある「内容一致」問題の構造ですが「正しくない理由を説明」という逆転があるため、かなり複雑になっています。また、本文からの語句選定が難しいため、苦労させられます。乱雑な読み方では、はね返されてしまいます。
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設問の特徴② 横浜翠嵐の問題はなぜ難しいのか
精密な読解力+類推力がテーマ ―「何となく」では正解できない厳しさ
なぜこんなに難しいのかといえば、「そのような問題を解くことができる学力の持ち主を選びたいから」です。
右のグラフを見てください。比較的易しい特色検査と、難問ぞろいの特色検査では、得点分布は大きく異なります。グラフは、論理的思考力を重視している3校の特色検査の得点分布を模式的に表しています。
平易:希望ケ丘、難:横浜翠嵐、幅広い:湘南・横須賀、を例として比べています(なお、グラフはあくまでも分布イメージです。実際の結果とは直接関係していませんのでご注意ください)。問題が平易なら、得点は高くなるので、「ミスしないこと」が重要です。横浜翠嵐のように難しい場合は分布が下に偏るので、一つでも多く難問を解決できたかどうかが問われます。つまり、同校が求めるのは「難しい語句や抽象的なものでもかみ砕いて理解しようという積極性と、実際に理解できる能力」ということです。また、用いられる題材のほぼ全てが、5教科の学力検査と重ならない(課題1)または、内容的に教科の枠を超えて広がっています(課題2と3)。したがって、見たこともない情報をかみ砕く読解力も加わります。また、全体の分布が低いということは、同時に「突出した何かを保有する人物を選ぶ」のに適しています。
横浜翠嵐高校が難問を出し続ける理由は、以上のような学力観、人物観によるわけです。 -
昨年との比較
主に選択問題増加によってやや解きやすくなる―本質的な難しさはやはり残る
一つ選ぶ」選択問題が増えたので、解きやすくなったことは事実です。例年より、最後まで解き終えられた受験者が増えたはずです。用いられる文章が昨年の2つから3つに増えました。その代わり、文章の中身はいくらか具体的になり、昨年よりは理解しやすくなりました。一方、昨年に比べると「文章を読まずに設問だけ読んで解答できる」という設問が減りました。このように、易しくなった部分と難化した部分があります。また、理解困難な超難問が減りましたが、このことは「あきらめてパスしたほうが賢明」という問題が減ったことを意味します。すべてきちんと解かなくてはいけなくなりました。一概に楽になったとはいえません。やや易化したとはいえ、県内最高峰であることは変わりません。英語にも変化が見られました。昨年は英語は最小限まで縮小されましたが、一昨年のレベルまで戻りました。難易度を高める「単語集」も復活しました。これは「横浜翠嵐は英語はあまり出さないから……」という予想をさせないための措置かもしれません。そう思って過去数年の変化をたどると、求める学力の本質はあまり変わらないが、設問の形式や外観は大きく変化すると言えそうです。イメージを固定化して、過去問のパターンをなぞるような学習ではいけない、と主張しているようです。
-
代表的な問題と湘ゼミの対策例 ①
課題1 設問2(ほかにも複数) フェイルセイフに該当する具体例を選ぶ
この設問の内容は2ページの「設問の特徴①」の項目で説明したとおりです。
問題分析:抽象的で難解な語句の読解力+抽象的内容を具体例の判断に適用する類推力
上と同じく、この設問の内容は2ページの「設問の特徴①」の項目で説明したとおりです。
「特色検査模試」の出題(文章省略)
「ナッシュ均衡(ゲームなどの状況において各参加者が、「相手がどう出ようが、自分が損をしない行動」をとろうとするときに生まれる均衡状態)」に陥ったとはいえない状態を次のア~エの中から一つ選び、記号で答えなさい。
- ア となりどうしの家電量販店が、同じ商品の価格設定で迷っている。どちらもできるだけ高い価格で売りたいのだが、競争相手に値下げされたら不利になる。そのため、どちらも不本意ながら相手と同じレベルまで価格を下げざるを得ない。
- イ 核兵器保有国のいくつかは、核兵器削減の条約に参加するなどの動きを見せている。率先して完全に廃棄してしまうのが最も賢明な方法という説もある。核兵器を保有して維持するのは大きな費用がかかるためである。しかし、仮に全保有国が一斉に廃棄したとしても、どこかの国が秘密のうちに再保有した場合、自国が大いに不利になってしまうのは確実である。このような事情から核廃絶が困難と言われる
- ウ 家電量販店では、「他店よりも1 円でも高ければ値下げします」といった広告がよく目につく。これは、価格の値下げ競争を激しくするものではなく、それに歯止めをかけるものとして、導入された。なぜならば、どの店舗の価格もまったく同じであれば、値下げをする必要がなくなるからである。
- エ 関係のよくない2つの国が湖をはさんでいる。どちらも湖から生活用水をくみ取り、湖に排水している。両国は、湖の水質悪化を止めるために、浄化設備の設置について話し合っている。様々な理由から協議はなかなか進まない。環境改善を考えれば、どちらかの国だけでも設備を導入すればよい。しかし、費用負担が大きい上、導入しない側の国が経済的軍事的に優位に立つことを考えると、自国だけで環境改善に取りくむ決断はできない。
「特色検査模試」の出題(文章省略)
日本国憲法第26 条の内容にもとづく具体的な政策やきまりなどとしてふさわしいものを、次のア~エの中から二つ選び、記号で答えなさい。
- ア 小中高校および大学を新たに設立するためには文部科学省の認可を受けなければならない。
- イ 小学校および中学校の教科書は、無償で提供されており、書店で買い求める必要はない。
- ウ 2014 年から高校の授業料について、世帯の所得が高い場合には無償化が適用できなくなった。
- エ 心身に障害をもつ子どものために、個々人の事情に応じた学校が設立されている。
-
代表的な問題と湘ゼミの対策例 ②
課題2 設問3 ある文の内容が、課題文とかみ合わない理由を、課題文に即して説明する
文章の主旨と合わないものを選び、選んだ理由を文章中の語句を用いて説明します。文章では次のような順序で説明が進みます。番号は文章の段落に対応しています。
- 1 「立憲主義」は国家権力を制限するためにある
- 2 西洋の歴史では複数の異なる正義観が対立し血みどろの争いに至った
- 3 その解決と、公平に暮らせる社会秩序の維持のために生まれた思想が「立憲主義」である
- 4 立憲主義の手法は、社会を「公と私」に分け、「私」では個人の世界観(価値観)の自由を保障し、「公」ではそれを脇において共有できることを冷静に判断する
- 5 立憲主義の基盤である「憲法」は多くの国で改正が難しい「硬性憲法」である
- 6 なぜ主権者である国民が変えたいと思っても変えにくくしてあるのか?
- 7 選挙では短期的な利益がテーマになり、その利益をめぐって政治家が集合離散し多数決が行われる
- 8 7のような短期的判断に対し「多数決に向かないこと」「個人が判断すべきこと」がある
- 9 7と8の理由から、日本国憲法では憲法改正には高いハードルが設けられている
問題分析:論理の正確な読解+抽象化と具体化を行い、理由を説明する-何よりも正確に
上のような段落の要約が必要です。この過程で抽象的な語句を正確に理解し、具体例と結びつけたり、説明文(選択肢)と突き合わせて一致しているかどうかを確認したりすることが求められます。文章全体をしっかり読み込み、段落間の関係をつかまないと正しく判定できません。
選択肢は次のように要約できます。- ア 立憲主義は国家権力を制約する(段落1と一致)
- イ 立憲主義は血みどろの争いを否定し、多様な価値観を認めつつ社会秩序を目指す(段落3と一致)
- ウ 硬性憲法は立憲守護の原則をとる国で採用されることが多い(段落5と一致)
- エ 異なる意見の集団が多い場合、集団の集合離散などの結果、多数派が形成され事が決する多数決は合理的な方法である(7・8に一致しない=正答)
「横浜翠嵐高校特色検査模試」の出題(文章の一部のみ掲載・解答欄省略)
どんなに偉い科学者であっても、一人で主張しているうちは「正しい」わけではない。逆に、名もない素人が見つけたものでも、それを他者が認めれば科学的に注目され、④もっと多数が確認すれば、科学的に正しいものとなる。
下線部⑥ (僕は)⑥「大勢が同じことを主張しているから正しい」「有名な人が言っていることだから正しい」ということはない、と考えているからだ。
設問 下線部④と下線部⑥は、一見すると矛盾することが述べられているように見えるが、著者の考えにおいて両者は矛盾することなく成り立っている。この理由を、解答欄を補うように説明しなさい。 -
代表的な問題と湘ゼミの対策例 ③
課題3 設問2 植物の適応についての説明文の空欄にあてはまる語およびグラフを選ぶ
「攪乱適応」についての情報処理・論理判断の問題です。この設問の内容は「設問の特徴①」の項目で説明したとおりです。
問題分析:選択肢の「反復使用許可」+語句の難解さで難しくなる
まず、次の文章の空欄を補います。撹乱の規模が大きいと撹乱に強い種だけが行き残り生物種は【 1 】なる。撹乱がほぼない安定した環境では 【 2 】 によって生物種は【 3 】なる。ある程度の撹乱がある不安定な条件では強いものが勝ち残るとは限らず生物種は【 4 】なる。
1・3・4のための選択肢は「多く」「少なく」「等しく」です。2は「競争」「進化」「ストレス」から選びます。最後にここで説明された状況を表現したグラフを5つの中から選択します。この設問には「選択肢を何度使ってもよい」という条件があります。もし「選択肢は一度だけ使う」だったなら、一つをあてはめれば残る対象が減るので、解き進むにしたがって候補が減ります。ところがそうならないので読解の正確さがより重要になります。ここまでが第一の難しさです。これを解決すれば、グラフの選択は容易です。第二の難しさは「設問の特徴①」でも説明したように、「撹乱」などの語句が難解でイメージしにくいことです。このため、読解や情報の整理が乱雑なままではすぐに混乱してしまいます。「横浜翠嵐高校特色検査模試」の出題
著者は、「原因結果的にものを考えるということが、科学の眼の一つなのである。」と記している。これは、「連続するものごとを、ばらばらにつかむのではなく、原因と結果の流れから見て考える」ことである。では、次の資料を同じ視点から見て、富士山頂では上手に米を炊くことができない理由を説明しなさい。
-
課題と対策のまとめ:3つのポイント
1:読解の正確さの追求 2:作業を正確に進める 3:難しいものを読む=疑問を解決する
- 1の「読解の正確さ」を鍛えるための基本を記します。「手も使いながら読む」ことです。複雑な文章・情報を読む際、目印をつけたり、関係のある箇所の間に線を引いたり、情報を一度図式化して、視覚的に分かりやすくすることが重要です。このような練習を重ねると、正確さに速さが加わるようになります。
「難しい」ものに出合ったら、その難所を整理する練習のチャンスと考えてください。図式化・視覚化の技術は、高校や大学の入試で強力な武器なのはもちろん、一生使い続けることのできる知的資産です。横浜翠嵐を志願するなら、どれだけ練習しても無駄ではありません。 - 2:計算・作業の対策です。パズル的な作業や複雑な計算の問題は、手間さえかければ正解できるのですから、落としてはいけません。「ミスを無くす」ことです。ミスしやすい人は、どこでミスするのか明らかにしなくてはいけません。「ミスしない方法」を受身で教わるのではなく、能動的に「なぜ、どこで、自分はミスをするのか」と考えるべきです。「記憶や暗算に頼る部分でのミス」「書き写すときのミス」「多数の要素や大きな数の扱いでのミス」などがあります。
有効な対策はやはり「手も使いながら読む」練習です。複雑な計算や証明の問題、経過を説明する問題やパズルなどを始めから終わりまでミスなく終えられるように練習します。制限時間を設けて速度にもこだわってください。 - 3「難しいものを読む」について説明します。あたり前ですが「難しいものを積極的に読む」ことです。難しいとは、見たことも聞いたこともないことが説明されているか、抽象的で分かりにくいことが説明されているかのどちらかです。そのような難解なものを読み「これは何?」を体験してください。
そして、熟読によって理解するよう努力してください。この問題は、ネットですぐ調べるような安易な解決方法に頼る人物をしりぞけようとしています。難しい箇所は前後の文脈などを含めて何度も読み返し、自力で理解することを試みてください(それでも分からなければ、調べたり教えてもらったりしましょう)。
- 1の「読解の正確さ」を鍛えるための基本を記します。「手も使いながら読む」ことです。複雑な文章・情報を読む際、目印をつけたり、関係のある箇所の間に線を引いたり、情報を一度図式化して、視覚的に分かりやすくすることが重要です。このような練習を重ねると、正確さに速さが加わるようになります。
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課題と対策:「3」の具体例
難しいものをどうやって読み解くか
3「難しいものを読む」ことの実例を示しましょう。かなり難解ですが、覚悟を決めてつきあってください。
20 世紀の思想に最大級の影響を与えたオーストリア人哲学者ウィトゲンシュタインの著書『論理哲学論考』の要旨を抜き出して箇条書きにしたものを記します。- 1 世界は、「そうであること」のすべてである。
- 2 「そうであること」、つまり事実とは、ものごとが現実にそうなっていることである。
- 3 事実の論理的な「像」が「考え」であり、「考えることができる」とは「像」作成が可能ということである。
- 4 「考え」とは意味のある「命題」のことである
抽象的な語句がならび「何を言っているのかさっぱり分からない」人が多いことでしょう。しかし、じっくり読み、語句の間の論理の関係をていねいに追えば、全く理解不可能でもありません。では、図式化して読解します。
- 1 世界=そうであることのすべて
- 2 そうであること=事実=ものごとが現実にそうなっていることである。
- 3 事実の論理的な像=考え 考えられる=像ができる
- 4 「考え=意味のある命題」
代入法が使えることが分かります。すると、次のような等式が成り立ちます。
- 世界=事実のすべて=現実にそうなっているものごとのすべて
- 事実の論理的な像=考え=意味のある命題 考えられる=像ができる=意味のある命題ができる
さらに整理します。
世界=事実のすべて=考えることができることのすべてここでの「考える」ということは、ことばを組み合わせて「これとこれは同じことといえるだろうか」「これらの間の共通点や相違点は何だろうか」などを検討することです。となると、世界とは「ことばによって考えたり想像したりすることができるものごとのすべて」ということが結論となります。 このような作業を行う力が「精密な読解力」なのです。
以上のような内容が続いた後、『論理哲学論考』には、ダメ押し的な結論が記されています。
「語ることができないものについては沈黙するほかない」
語ることができないものについて沈黙するというのは、「語れないものは語れない」と書き換えられます。同じことを反復しているだけに見えます。なぜこんなことをウィトゲンシュタインが論じたのか説明します。
世界は「ことばによって語られる(像ができる・考えられる)」すべてで成り立っている。しかし、ことばで語ることができないものがその外にある。ことばや思考の限界を知ることが哲学のできることである、ということです(この書物には謎めいた記述が多く、世間には無数の解説書があふれています。ここに記したのはその読解の一例にすぎません)。
ウィトゲンシュタインの説は、言語にできること、考えて解決できることの限界を示しました。たとえば「どう生きるのが正しいのか」という問いがありますが、「正しいこと」を正しく像にする(考えて定義する)ことはできません。個人によって意味が異なる像しか成り立たないからです。したがって、この問いかけ自体が意味のないものになります。ことばでは定義も解答も不可能なことを求める質問であり、この解答は「語ることができないもの」なのです。彼は「どう生きるべきか」のような「いわゆる哲学」の問題の多くは、はじめから無意味であると主張したのです。
ここまで読んで「難しかった……」と同時に「結論だけを知れば意外にシンプルなことを、どうしてそんなに難しく論じるのか」と思った人も多いでしょう。哲学に限らず、学問(科学)でもっとも重要なのは「そこに説明された方法を用いれば誰でも同じ結論を得られるように説明する」ことです。だから、回りくどくてもていねいに進めるのです。書く側にも読む側にも、同じだけの精密さが求められるのです。
しかし、今の例のように、手間を惜しまなければ解読は不可能ではありません。このような「難しいものの読解」の経験が多いか少ないかが、横浜翠嵐高校の特色検査の結果に影響します。しかし、「難しいものの読解」は、横浜翠嵐高校の合格のためだけに必要なことでしょうか。そのことをよく考えれば、同校が求めることと対策のために苦労することの長期的な意義が理解できます。
横浜翠嵐高校は一貫して「疑問と推理」をテーマに出題しています。難しいものの読解に加え、日常生活で「なぜ、こうなっているの?」という疑問を抱くことも重要です。今年の問題で言えば「なぜ紙を切る裁断機は2つのスイッチを両手で同時に押さなければならないようになっている?」「どうやったら最も効率の良い作業の組み合わせができる?」―このような疑問から問題が出発しています。
幸いにも、疑問解決のための「調べる方法」はたくさんあります。ただし、調べて「何となく分かった」で終わらせないことです。ていねいに調べ、精密に考えます。そして、誰かに説明することも重要です。他人に説明できるようになれば、理解は確実に深まっています。できれば構造的に、手短に、分かりやすく……。ぜひ、友人や家族と、身近に見つけた問題について疑問点を交換し、その解を出し合うようなやりとりをしてください。
疑問・推理・調査・解決というプロセスを数多く体験すれば、難問も興味深く見えるようになります。道を10 メートルも歩けば、疑問は数え切れないほど生まれます。機械やシステムのしくみ、社会のルールの意味、生物の不思議……疑問・推理・調査・解決を繰り返すだけで、生活は何倍も楽しく充実したものになるのです。特色検査模試の受験者の多くが、次のような感想を書きました。「難しかったけれど、考えに考えて、発見があることがとても楽しかった」―この感覚に至るような体験が最高の対策です。
2018年度の湘南高校の実際の特色検査を分析し、次年度への対策の指針をまとめました。
A : B : C : D 比 3 : 5 : 2 : 1/時間 60 分/配点 100 点/観点:論理的思考力・洞察力・情報活用能力・表現力
2018 年度募集定員:358 名 / 2018 年度志願者数:548 名 / 2018 年度志願競争率:1.53倍
テーマは「生きた論理と知識」― 活用色の強いバラエティ豊かな難問群
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問題の概要
言語論理・数学的論理・データを重視・技能教科まで含めた幅広さが特徴
- 特徴と変化
- 1全体的傾向 言語論理およびデータと数学を重視
- □変化なし
- 2教科の傾向 5教科+論理+技能教科が数問加わる
- □変化なし
- 3形式の特徴 選択・語句記述・計算中心で、説明1問のみ
- □設問数減
問1は「日本語の変化」をめぐる中学生の対話による問題群。湘南高校が毎年ここに配置する言語論理的な問題が中心です。データ読み取りも加わります。問2は小問集合。
(ア)は俳句の季語と天気図の判定。(イ)はレースを用いた論理パズル。(ウ)は英語と日本語の表現の相違をめぐる問題。今年唯一の英語です。(エ)は立体パズルと計算。技術家庭科の「作図」も内容に加わっています。
問3は中央アジアの塩湖「アラル海」の縮小とバーチャル・ウォーターを題材にしています。環境問題が主題です。内容は数学・理科・社会・家庭科を組み合わせた教科横断型です。各設問の核になる部分には知識をあまり用いないパズル的内容が存在します。そこに、「各教科で学んだ知識」が関連づけられて、問題の全体が作られています。メインテーマは「言語論理・数学的論理・データ」です。 -
設問一覧 難易度平均[6.1](昨年度は6.3) ※表の詳しい見方は概要のページにあります
多様な素材でコンパクトな論理型問題が多数並ぶ
内容は多様で、一つ一つの問題はどちらかといえば小規模なのですが、直感的に選択肢を選ぶことはできないように工夫されています。また、学力検査向けの教科の学習では見慣れない、独特の切り口の問題が多いので、ボリュームは標準的ですが、時間的に厳しくなる可能性があります。ただし、手が出せないほどの難問はありませんので、速さと正確さの両立が重要です。
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設問の特徴
「非連続型テキスト」の読解力が最重要・よく読んで正確に判断するのがポイント
読み取る情報は豊富ですが、解答形式は選択が3分の2で、残りもシンプルな記述が多く、前のページの表のように、「読解(入力)・思考・解答(出力)」のプロセスに分けると、読解と思考に重きをおいています。なお、英語の比重は小さく、難しい表現も用いられていません。特に重要なのは「言語の論理」です。ことばの意味やはたらき、その変化やズレなどを毎年繰り返し出題します。選択肢を見ると、内容のデリケートな違いをていねいに読み取らなければ正解できないよう入念に組み立てられています。
また、文章だけでなく、グラフや表なども含めた「非連続型テキスト」の読解力を意識すべきです。つながっていない複数の情報群をまとめて意味を読んだり判断したりします。学力検査でも重要になっていますが、湘南高校は横浜翠嵐高校と並んで「非連続型テキスト」の読解を特に重視しています。
初めて見る情報を正確に読む過程で、これまでに学んだ内容や見聞したことを思い出し、組み合わせます。そして、判断し、問題を解決します。これが、新しい時代の学力の重要なキーワード「活用」です。湘南高校は、教科の知識を土台にしながら、一歩進めて使いこなすことを大切にしているように見えます。具体例をあげましょう。
問2(ウ)の文章で、日本語と英語の命令の違いが説明されます。例えば日本語で「遅れるな」という禁止の命令を英語に訳すと「時間どおりに来なさい」という形になっていることが説明されます。さらに「因果関係」を表す語「だから」と「so」のニュアンスの差が示されます。日本語の「だから」はゆるやかな関係を意味し「父が転勤になった。だから家族も引っ越した」が成り立ちます。しかし、この文の英訳に「so」を用いることはできません。なぜなら、「so」には「~だから(必然的に~となる)」というニュアンスがあるので、家族も引っ越すとは限らない(単身赴任の可能性がある)状況では使えないのです。このことをふまえて「so」の自然な用例を5つの文から2つ選びます。上の「~だから(必然的に~となる)」という部分は、文章中に明示されていません。これを正しく読み取って、英文を読むことが課題です。読解力が二重に試されています。
さらに、この設問の興味深い点は、読むうちに中学校で学んだことの理解が深まり、知識が立体的になる体験ができることです。このような体験も、湘南高校の特色検査には必ず盛り込まれています。 -
昨年との比較
設問数が減少し、やや易化・出題方針と形式は変化なし
設問数は昨年比75%に(昨年24 問→今年18 問)減少しました。また、選択問題の比重が大きくなりました(一昨年35%→昨年50%→今年67%)。昨年は学力検査のマークシート使用と特色検査の全面開示の初年度でした。ほとんどの学校で選択が増え、そのかわりでしょうか、設問数が増加しました。今年は「落ち着いた」というのは言いすぎかもしれませんが、「選択が増加したまたは設問数が一昨年レベルに減少、またはその両方」という学校が多数でした(湘南・横浜翠嵐・希望ケ丘・横須賀・厚木など)。
出題方針の論理重視・活用重視・教科の多様性と個々の設問の難易度は、ほぼ例年どおりです。 -
問題・分析・湘ゼミの対策例
問1(イ)~(オ) 情報読み取り+仮説+分析などの総合的な論理問題群
問1は「日本語の変化」をめぐる中学生の対話による問題群。はじめに言葉の乱れが話題に上がり。後にその得失(メリットとデメリット)を考え、変化のあり方を考えるように進みます。(ア)は『徒然草』の一節を用いたストレートな古文読解。興味深いことに、同じテーマで同じ文(ただし現代語訳)が、2014 年度横浜市立南高校附属中(南附中)の適性検査で用いられました。
(イ)は確信犯・知恵熱・やぶさかでない・ぞっとしない、の4語について、年代別に「理解している意味の違い」をグラフ化したものを見て、年代が異なると最も誤解が起こりやすい語を選びます。文章を読まなくても解ける独立したデータ読み取りです。ただし、数値の意味をどう解釈するかひねられており、熟考しないと理解できません。
(ウ)はカタカナ語のメリットで「キレる、が漢字より特別なニュアンスを伝えやすい」「リビングルームと居間で、洋風と和風の区別もしている」「バリアフリーは日本語になかった意味を表す」「トイレは便所に比べ、不潔なイメージを和らげる」「アイデンティティは自己同一性の意味をよりわかりやすく伝える」という例から誤りを選びます(最後が誤りです)。抽象的な意味を具体的な事例にあてはめる問題で、横浜翠嵐と湘南の2校が特に好んで用いました。
(エ)は「京都で生まれた新語が1年1kmのペースで地方に伝わる」という仮説が示され、資料にある「かたつむり」の地方ごとに異なる呼び方(でんでんむし、なめくじなど)が、いつごろ生まれ伝わったのかを選びます。データの読み取りに、地理の知識を組みあわせて推理します。
(オ)は調査データの読み取りです。「自分の本音を伝えやすい手段・方法は何か」という若者への調査結果グラフがあり、会話や通話、手紙、メール、ブログなどを選んだ人の割合が示されます。これを見て、誤った分析結果を選びます。選択肢は、「2~3月の調査だから受験生の中に回答拒否があったのでは」「有効回答率が低いのは個別面接の方法が原因ではないか」(ここまでは読み取り)「項目の割合を合計すると100%を超えるので、複数回答を認めたのでは」「直接会話を選んだ人は非回答者より多いのでは」(この2つが計算)「直接会話で本音を伝える人は他の方法を使わないのでは」(最後のこれがデータにない推測を含み、誤りです)。問題分析:言語の論理に、客観的で冷静な視点に「こだわる」のが湘南流
このような題材は数多く用いられますが、湘南高校はよくあるように「だから会話が重要」といった結論を性急に導きません。むしろ、データの作られ方や読まれ方を論理的に扱い、安易な見方をしないように促してさえいます。「言葉の乱れ」についても同様で、ここでは『徒然草』の「今の言葉はよくない」という意見を客観的に突き離して見直す視線が感じられます(先に記した南附中も同じでした)。
言葉を含む情報の意味や受け取られ方を問うことにこだわるのが湘南高校の伝統かもしれません(参考までに、「こだわる」も昔は悪い意味で使われ、今では主に高い評価のために使われます)。会話の最後に先生が登場し「君たちの発表、やばいことになりそうだな」と発言する点も、出題者(先生)が自分たちを客観的に見ていることを示す辛口のユーモアを含みます。 -
「特色検査模試」の出題
ユニセフ(国際連合児童基金)が2001年に発表した統計データをもとにした下の二つの資料から、どのようなことを読みとり、どのような対処を想定することができるか。正しいと考えられるものを次のア~エの中からすべて選び、記号で答えなさい。
- ア 学校に通えない子どもが多い地域は、同時に5歳未満児の死亡率が高いことが多いので、死亡率を引き下げるために、あてはまる地域の学校を増やすべきである。
- イ 学校に通えない子どもが多い地域と5歳未満児の死亡率が高い地域は、どちらも経済的に豊かでない国が多い点が共通している。このような地域への支援の方法としては、産業の発展をうながすような方法が望ましい。
- ウ 学校に通えない子どもが多い地域と5歳未満児の死亡率が高い地域は上位2つまでは共通しているが、それ以下の順位には異なる点がある。したがって、地域の共通点から対処を想定することは難しい。
- エ 学校に通えない子どもが多い地域と5歳未満児の死亡率が高い地域は同時に、人口が急激に増加している地域でもある。人口の急増が貧困を招き、資料のような事態の原因になっている可能性があるので、人口増加の抑制策を検討してみる必要がある。
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「特色演習」の出題
次の資料は、朝食をとったかどうかと、学校の成績との間の関係について調査した結果を表現したものである。このグラフの、正答率は全国一斉の学力調査、中学3年生の結果による。また、解答は、「朝食をいつも食べますか?」という質問に対する、やはり中学3年生の解答を集計したものである。このデータに関するあとの問いに答えなさい。
この調査結果について説明した次の文章を読み、文章中の空欄に、①には計算結果の数値を、②③にはあとの語群から選んだ記号を、④⑤には適切な言葉を書きなさい。
ある新聞に『正しい生活 成績向上の道』と題して全国学力テストの結果の一部とその解説が掲載された。次はその記事の文章である。
『朝食を毎日食べる層ほど小6、中3とも平均正答率が高いという結果が出た。規則正しい生活習慣が成績の向上につながっている』(原データには小6の結果も示されている)
そして、朝食を毎日食べている層はまったく食べない層に比べ中3国語Aの正答率で14.1ポイント、数学(同)では【 ① 】ポイントの差があったと解説している。
たしかに2つの数値には明らかな【 ② 】がある。しかし、だからといって、この2つの間に【 ③ 】があると解釈してしまうのは行きすぎというほかない。朝食をきちんと食べ、規則正しい生活をさせる家庭は教育環境に配慮する可能性が高く、それが成績の高さに影響したと見ることができる。つまり「良好な教育環境への配慮」が「朝食」と「成績向上」の双方に影響したと考えるのが自然である。
上のような「行きすぎ」を、別の例で考えてみよう。
「灯油の販売量が増えると脳卒中の発生が増加するという関係」が発見されたとする。だからといって【 ④ 】と説明することはできない。わかることは「寒さ」という要素が重要であることくらいである。「寒さ」が両者に共通の増加の原因ということである。くりかえすが、灯油の販売量と脳卒中の間に直接の関係はない。この場合における寒さは「交絡(こうらく)因子」と呼ばれる。
同じように考えれば、朝食と成績向上の交絡因子は【 ⑤ 】ということができる。
このように、情報の読みとりには注意が必要である。送り手がある意図をもって、受け手の誤解を促すような場合もあれば、そんなつもりがないまま、送り手が勝手に決め付けてしまうような場合もある。特に、善意から生まれる「行きすぎた決め付け」は、なかなかやっかいなことと言わざるをえない
語群: ア 因果関係 イ 相関関係 ウ 擬似相関 エ 一対一対応の関係 -
問題・分析・湘ゼミの対策例 ②
問2(ア) 俳句の季語を選び、その季節の天気図を選択する教科横断型問題
7つの俳句が並びます。季語から季節を選び、その季節の天気図を選びます。ある種の古文読解と理科の横断型問題です。
問題分析:「生きた知識」を意識させる小問
設問自体は小型で平易なものです。それをあえて取り上げたのは、特色検査で求められる知識のあり方をわかりやすく教えてくれるからです。季語を見ての季節の判定は俳句に関する問題の基本中の基本です。天気図の判断も同様です。しかし、特色検査のための学習の経験がないと、この2つの問題が同じものごとを異なる形式で表したことに気づかないものです。今回の正解である「夏」について「その印象を言葉で表現する」のが文学作品であり、気圧の変化などの気象現象として見るのが地学であり、気象現象を農業や生活との関係から見るのが地理です。学んだことが単なる言葉の集まりではない「生きた知識」として取り込まれていれば、太陽や月、虹や雲などを見たり、風や雨、霧などに触れたりしたときに、さまざまな角度から感じて考えることができます。「教科横断」とは、そのような知性の全体的総合的な活動を表す名称です。
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「特トレ」の出題
次の俳句は、与謝蕪村の作品で、摩耶山(兵庫県)あたりで詠んだものとされる。この句について、あとの問いに答えなさい。
― 菜の花や月は東に日は西に ―(1) この句で詠まれている月の形はどのようなものだったと推測できるか。次の中から選んで、記号で答えなさい。なお、灰色の部分は本来、見えない「影」にあたる。
(2)省略
(3) この句が詠まれたであろう日の太陽の南中高度にもっとも近いものを次の中から選びなさい。
ア およそ75度 イ およそ55度 ウ およそ35度 エ およそ15度 -
代表的な問題と湘ゼミの対策例 ③
問3(ウ) 食材の成分や、そこに含まれる仮想水などの計算問題
調理実習で作る料理において、仮想水(バーチャルウォーター)と呼ばれる考え方がどれだけ使われているかを計算する問題です。表には、各農産物1kgを生産するのに必要な水の量と、2日分の料理に必要な材料・仮想水の量が書かれています。料理の材料には空欄があり、仮想水の量と材料の重量をもとにして正しい材料を埋めていきます。また、材料の仮想水の量を求める問題も続けて用意されています。
問題分析:表を読み取り課題を解決する純粋な情報処理型問題
題材の外観は家庭で中身は理科、作業の内容は算数・数学の問題です。問題を解く上で、予備知識は何も要りません。資料を読み取り、計算するタイプの純粋な情報処理型問題です。
8つの農産物についての計算と、6つの料理についての計算、さらに問題文にある6つの食品についての計算といった多くの手順があります。ていねいにまとめ、正確に計算をする力を身につける必要があります。今年は比較的小規模でしたが、例年、スタミナを必要とする大型情報処理・計算問題が出題されています。代表的な問題と湘ゼミの対策例 ④
普段わたしたちがよく口にする食品には、どのくらいの脂質が含まれているのかを調べるため、次のような実験をした。まず、市販のポテトチップスを30g用意する。鍋に水を160mL入れ、用意したポテトチップスを入れて沸とうさせて2~3分間煮る。次に、鍋の中にある液体をメスシリンダーに移し、上部にできる油の層の体積を調べた。
(1) メスシリンダーをみると、図のようなめもりの状態だった。この液体の体積は何㎤か。
(2) ポテトチップス30gに含まれる脂質は、1日の脂質の摂取量のめやすの何%にあたるか。水を沸とうさせると10%の水が蒸発すると考え、脂質の密度を0.8g/㎤、1日の脂質の摂取量のめやすを70gとし、鍋に入っている水はポテトチップスに吸収されないものとする。なお、解答は四捨五入して整数で答えなさい。
2018年度の横浜緑ケ丘高校の実際の特色検査を分析し、次年度への対策の指針をまとめました。
A : B : C : D比= 3 : 5 : 2 : 2 / 時間 50分 / 配点 200点 / 観点:論理的思考力・表現力・創造性
2018年度募集定員:278名 / 2017年度志願者数:456名 / 2017年度志願競争率:1.64倍
説明と企画(プレゼンテーション)―知識より能動的学力を重視する個性派
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問題の概要
説明力+他者(年少者)への配慮と想像力を求める
- ■特徴と変化
- 1全体的傾向 説明記述と作文とプレゼンテーション
- □昨年まで作文 ⇒ 数学的説明記述
- 2教科の傾向 論理・国語・数学
- □問題1に、数学的要素が登場
- 3形式の特徴 説明+企画
- □企画部分は変化なし
- 問題1
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「防災」がテーマです。
問1 中学校で1日にトイレットペーパーがどれくらい消費されるかを推理し、計算式を交えながら求め方を説明します。与えられた条件は「全生徒数500人・トイレットペーパー1個は60m」です。 問2 実際のトイレットペーパー備蓄数を考える際に配慮すべき要素とその理由を3つ答えます。例として「要素:避難してくる地域住民数を考慮する・理由:中学校が地域の避難場所に指定されているから」が示されています。
いずれも評価の観点は《論理的思考力・表現力》です。 - 問題2
- 「学会」の設立計画書の作成です。何を研究する学会か、考えて答えます。条件は生活に関わりのある身近なものごとです。例として「東京のスリバチ地形」「日本の笑い」などがあげられています。解答項目は「名称」「研究対象を選んだ理由」「主な活動や研究内容」「その学会を社会に広くアピールするためのアイデア」の4つです。
評価の観点は《論理的思考力・表現力・創造性》です。
問題1・問題2に共通するのは、《論理的思考力・表現力》です。
問題1では、与えられた情報をもとに数学的な推理と社会全般に関する想像を行い、その内容を説明します。具体的に考え、その結果を手際よく分かりやすく説明することが求められています。
問題2は、おなじみの「企画」です。ここでもテーマ「何かを研究する学会」について想像し、具体的に検討します。その上で、読み手がよく理解でき、印象深く受け止められるような表現を工夫します。
横浜緑ケ丘高校の課題の一貫した特徴は「創意工夫」です。今年は出題内容に変化がありましたが、「リアルな想像から出発した課題発見・解決・提案」という性格は変わっていません。 -
設問一覧
説明と企画作成
右の表は本来、他の学校の特色検査と比較するためのデータですが、横浜緑ケ丘高校に限っては、比較は困難です。
問題1の問1で、数学的な想像(フェルミ推定:あとの項目で説明)が取り上げられました。しかし、計算結果を書くわけではなく、公式や解法を用いるわけでもありません。数学というよりも「数学的思考法」を用いる問題と言うべきです。
全体的に、学習した教科の知識をアウトプットする要素はごく限られています。
教科の知識の確認は学力検査に任せ、「読解・思考・表現」をトータルで判断しようという意図が感じられます。後の項目でも記しますが、説明や企画を通じて「想像力を土台にした創意工夫」がどれだけ具体的にできるか、ということが唯一最大の課題です。 -
設問の特徴
能動的学力のみが主な対象-リアルな想像力と他者への配慮という課題
主に、次の2点が求められています。
1 ある課題に対して「想像力・創意工夫」を発揮すること
2 受け手である他者が理解しやすいよう配慮すること
想像力を駆使してものごとをとらえると同時に、自分の考えを客観的に見て、分かりやすく興味深く説明する工夫が求められています。知識的要素はごく限られています。特色検査に限らず、テストで求められる学力は2種類あります。
第一が「受動的学力」です。まず、出されたことがらをしっかり覚えて「知識」として、使うことです。そして、示された素材について作業したり推理したりする「思考」も、この受動的学力に含まれます。ここでの「知識と思考」は、指示にしたがって作業することが中心で、意志表示は求められていない点が共通しています。問題1・問1がこのタイプです。
第二が「能動的学力」です。こちらは基本的に「意見・考え」を述べることです。作文や企画等です。「一つの正解」が存在しない問題です。もちろん、その過程で「思考」は必要ですし、「知識」を必要とする場合もあります。問題1・問2と問題2があてはまります。
能動と受動のどちらが良いとかどちらが難しいということはありません。学力検査は基本的に受動的学力を測定します。特色検査は受動的学力を中心に、学校によって能動的学力(論述や作文)が加わります。
横浜緑ケ丘高校の特色検査は、能動的学力を特に重視します。大学入試の小論文に近い性格とも言えます。重要なテーマは何度も書きましたが「創意工夫」と「他者への配慮」です。創意工夫が求められるということは、ありきたりな解答とオリジナリティの高い創意工夫にあふれた解答で差がつくことを意味します。なお、模試の受験者や対策講座受講生の様子を見ていて、最も楽しんでいると思われるのが横浜緑ケ丘高校の志望者です。「工夫することの楽しさ」がテーマと言っても良いでしょう。 -
昨年との比較
数学的推理が初登場・求める学力と方針に大きな変化はない
問題1の内容に数学的要素が加わったことが大きな変化です。数式を用い、「どうすれば限られた情報から求めるデータに接近できるか考える」という数学的想像力を求める問いかけは、同校の特色検査では初めてです。ただし、「生存のために想像力を働かせる」というテーマは一昨年の問題にもありました。「配慮と想像力」という課題は一貫しています。なお、問題2では今年は図などの使用については特に記されていませんでした。
数学的内容が加わることを予想しておらず、驚いた受験者が多かったでしょう。また、解の求め方を日本語で説明する(問題1・問1)ことは、慣れていないとかなり戸惑うことでしょう。しかし、過去の問題も踏まえて同校の方針を考えると「身の回りのあらゆるものごとについて考え、その意味やより良くするための方法について考える」という課題が浮かび上がります。 -
課題と対策①
作文の練習に「多様な視点」を常にとりいれる
作文力が基本です。「数値を求める方法」や「選んだ理由」「アピールの方法」などを限られた文字数で分かりやすく印象的に説明することです。
第一のテーマは、日常的な観察力アップです。常に「ここにどんな課題があるか」「どうすれば解決できるか」「もっと分かりやすくするにはどうすればよいか」という疑問符をつけて観察し、考えることです。問題1での災害時の状況をリアルに想像できる力につながります。
第二のテーマは表現力です。形式的な作文というよりも、分かりやすく伝える工夫が重要です。上記の観察の結果生まれたアイデアなどを、誰かに伝えてみることです。言葉や身振り手振りから、文字でも図でも色々使って試みましょう。最終的には文章にまとめられるのが理想です。問題1はもちろん、問題2での提案をコンパクトにまとめる力につながります。 -
課題と対策②
日常生活での課題発見・解決・説明・提案が何よりの対策
「創意工夫」の本質をまとめます。意味は「新しいものを創りだしたり、ある物事をより良いものにしたりするために努力すること」です。「新しいもの」は、すでにあるものを新たに組みあわせることで創られます。奇抜なアイデアや天才的なひらめきを求めるものではありません。創意工夫とは、2つの要素で成り立ちます。
1 ものごとをもっと良くしたいという意欲
2 ものごとを様々な角度から観察し、改良を試みる行動
1があるから2が生まれます。まとめれば「もっと良くしよう」です。具体的には次の2点が基本です。
A 問題点や課題を見つけ、解決・改善法を工夫する
B より分かりやすく、印象深く伝える
この訓練は、いつでもどこでも楽しみながらできます。
たとえばテレビ番組を見て、街角で行われているイベントを見て、学校行事などの最中にも、「自分ならこうする」と考え、誰かに説明することです。企画を考えることは、いつでもどこでもできて、その上楽しみながらスキルアップできるという、一石二鳥にも三鳥にもなる行為です。どんどん経験してください。テレビ番組を見たり、イベントに参加したり、さまざまなものを手にとってみたりすることがさらに楽しくなるという、素敵なおまけ もついてきます。
また、問題1の「数学的想像と説明」については、次のような思考力が重要です。「求めたいもの」「手元にある素材」を正しくつかみ、どのような方法をとれば目的を達成できるのか、と考えを進めます。理科の実験で「何を行えばよいか」考えたり、数学の応用問題で、どこにどのような角度、長さ、数値などを見つければよいかと資料を精読したりするのと同じです。広い意味での「問題解決思考力」です。 -
問題・分析・湘ゼミの対策例 ①
問題1 数学的推理・社会への関心・想像と説明
問1 中学校で1日にトイレットペーパーがどれくらい消費されるかを推理し、計算式を交えながら求め方を説明します。与えられた条件は「全生徒数500人・トイレットペーパー1個は60m」です。
問2 実際の備蓄数を考える際に配慮すべき要素とその理由を3つ答えます。例として「要素:避難してくる地域住民数を考慮する・理由:中学校が地域の避難場所に指定されているから」が与えられています。問題分析と解説:問1・フェルミ推定―仮説力と適切な説明力がポイント
「中学校の平日の通常授業の1日に使うトイレットペーパーの量を推計する」という、一見何をすればよいかわからないような問題です。このように、限られた情報をもとに仮説を立てながら近似値を求める方法を「フェルミ推定」と呼びます。
まず、問題文に「平日の通常授業の1日」という条件があります。また、解答欄に「中学校の全校生徒は500人、トイレットペーパー1個は60m」という情報が示されています。逆に言うと、ここに無い情報は、常識を超えない範囲で仮定するべし、ということです。
例えば、次のような解答が考えられます
平日の通常授業で、全校生徒が1回ずつトイレに行って紙を使うとする。
1回に50cm使用すると仮定する。
1日の紙の使用量は 50cm×500人=25000cm=250m となる。
トイレットペーパーは1個60mなので、
250÷60=4あまり10 となる。
1日に学校で消費されるトイレットペーパーの量を個数で表すと約5個となる。
解答のポイントは、1行目の「仮定」部分です。この仮定内容は「常識に合わせて・具体的に」であれば、それほど正確さにこだわる必要はありません。その仮定の値をもとに、数式を使って説明します。
この説明は、証明のように決まった形がありません。自分で考えて組み立てます。文と数式の組みあわせは、分かりやすく書かれていれば、細かい形式にこだわる必要はありません。「どう書けばいいだろう」と途方に暮れるのではなく「どう書いたら理解しやすいかな」という発想で工夫することです。
また、どこまで細かく想像するのかも迷う点でしょう。上記の例以上に正確に考えようとすれば、男女による使用回数や使用量の違い、生徒以外の教職員の人数をどうするか、トイレットペーパーの個数なら「5個」になるが現実に5個あっただけでは足りないのではないか、などのさまざまな要素が想定されます。しかし、ここでは「どのように推計するか」を組み立てて説明することが重要なので、あまり細部に深入りする必要はありません(そもそも解答欄にそれだけのスペースがありません)。ただし、想像できることは重要です。想像した上で、状況に応じて解答を作成するのが理想的な状態です。
今年の問題1から、「フェルミ推定」を使いこなすこと自体を目標としてはいけません。来年同じ題材は出題されないと考えるべきでしょう(とはいうものの、フェルミ推定を使えることは人生のさまざまな場面で極めて有益なので、せっかくの機会ですから、ここで理解しておくことを強くすすめます)。
示された課題に応じて、どのような分野でも「想像し説明できる」状態を理想とするべきです。過去の「特色検査模試」の解説から引用:フェルミ推定について
このように、限定された情報を手がかりに、未知の数値を概算する方法を、この方法を得意としたイタリア出身の物理学者エンリコ・フェルミ(1901~1954)にちなんで「フェルミ推定」と呼びます。 有名な例は、フェルミ自身が大学生に出したといわれる「イリノイ州シカゴ市に、ピアノの調律師はおよそ何人いるか」という質問です。この場合は、シカゴの人口と世帯数、ピアノの保有世帯の割合、1人の調律師が行う調律の回数などを仮定し、その数値をもとに概算します。
もっとかんたんな例として、「日本に中学生は何人くらいいるか」を考えてみます。日本の総人口はおよそ1億2000万人です。男女ともに平均寿命は80~90才くらいです。大まかに見積もって、1~100才までの人がいるとすると、「1才あたり」の人口は120万人と考えられます。これを、少子高齢化をふまえて「若者は1才あたり100万人」とすれば、中学生は約300万人と概算できます。
当然、誤差はありますが、適切な条件を設定すれば、それなりに有効な解を得ることができます。フェルミ推定は実社会のさまざまな分野でそれと意識せずに用いられる場合も含めれば、極めて多く用いられています。まずは考え方を身につけ、何かの題材で試してみることを強く勧めます。
※中学生人口について、事実を記します。総務省の統計では平成29年度、日本の15歳未満人口は1578万人となっています。1年あたりにすると約105万人です。かなり「いい線」でした。問題分析と解説:問2・リアルな想像力がポイント
実際のトイレットペーパー備蓄数を考える際に配慮すべき要素とその理由を3つ答えます。ここで、前の問1で書いた「どこまで細かく想像するのか・細かく想像しておくこと」が役に立ちます。先ほど記したことから3つの要素を記します。そのまま解答に使えます。
・男女による使用回数や使用量の違い
・生徒以外の教職員の人数による増加分
・トイレの設置数(ペーパーの個数なら「5個」になるが現実に5個で足りるか)
例えば以上の3つの要素について、みなさんならどのような「理由」を書くでしょうか。練習としてチャレンジしてみてください。もちろん、上記以外の解答も想像してください。「横浜緑ケ丘高校特色検査模試」の出題
総合的な学習の時間に、「障害者福祉について考える」をテーマに、グループごとにさまざまなことがらについて話し合い、その内容を発表することになりました。あなたのグループでは、「パラリンピック」がテーマに決まりました。2020年の東京パラリンピックでは、次の22の競技が実施されます。
陸上 / アーチェリー / ボッチャ / 馬術 / ゴールボール / パワーリフティング
ボート / 射撃 / シッティングバレーボール / 競泳 / 卓球 / トライアスロン
車いすバスケットボール / 車いすラグビー / 車いすテニス / カヌー / 自転車
視覚障害者5人制サッカー / 柔道 / 車いすフェンシング / バドミントン / テコンドー
東京の次の夏季パラリンピックであるパリ大会で、どのような競技を加えるのがよいか、次の話し合いまでにグループのメンバーがそれぞれに自分の考えを用意してくることになりました。
問1 あなたがパリ大会で新たに加えるべきだと思う競技の名を書きなさい。また、それを選んだ理由を100字以内で書きなさい。なお、自分で現実には存在しない競技を考え出してもかまいません。また、上記22種の東京パラリンピックの種目名をそのまま使ってはいませんが、参考にするのはかまいません。
問2 問1で答えた競技を実施するにあたって、障害者が競技に参加するために注意しなければならない条件やルールなどを考え、その内容を150字以内で書きなさい。 -
問題・分析・湘ゼミの対策例 ②
問題2 「学会」企画の作成
「学会」の設立計画書の作成です。何を研究する学会か、考えて答えます。条件は生活に関わりのある身近なものごとです。例として「東京のスリバチ地形」「日本の笑い」などがあげられています。解答項目は「名称」「研究対象を選んだ理由」「主な活動や研究内容」「その学会を社会に広くアピールするためのアイデア」の4つです。
問題分析と解説:楽しめる入試問題―ここでもリアルで具体的な想像と工夫
「学会」という言葉自体を知らずにとまどった受験者がいたかもしれません。しかし、示された情報から「何かを研究し発表し、社会に貢献する団体」であることは想像できるはずです。ここから研究テーマを定めます。本来、どんなテーマでもかまいません。ただし、次の2点は押さえておくべきです。
1 設問の指定内容 それを満たしているかどうか「生活に関わりのある身近なものごと」
2 解答欄にある項目 その項目が書きやすいかどうか「社会に広くアピールする」など
1を満たし、2が書きやすいことを忘れずにテーマを選びます。
一例として、問題1の題材を再利用した「トイレットペーパー学会」を想定してみましょう(実際には、内容の重複は避けるべきですが、ここでは内容を分かりやすくするために、あえて重複させます)。
解答例の下書きを示します。下書きを作成しないと、整理された分かりやすい説明にするのは困難です。あなたなら次のメモをどのようにふくらませ、どのように説明するか、考えてみてください。下書きなので、項目の内容が不十分だったり、末尾が動詞や名詞で不統一なままだったりします。その整理改良もあなた自身の課題と考えてください。- □名称
- 日本トイレットペーパー学会。
- □選んだ理由
- 日常生活に欠かせないものである上、災害のときなどに足りないとかなり困る。森林の保護にも関係。
- □活動・研究内容
- トイレットペーパーの品質の向上を製紙業界と共同して研究する。災害時に少ない量で済んで、処分しやすいトイレットペーパーの開発。洗って何度も使えるトイレットペーパー。
- □学会を社会にアピールするアイデア
- 開発した新製品を企業や学校で体験してもらうデモを各地で行う。避難訓練などに製品を持ち込み、トイレットペーパーの必要性や、新製品の価値などを訴える。さらに、その場で「夢のトイレットペーパー」コンテストを行い、優れた案を表彰する。
「横浜緑ケ丘高校特色検査模試」の出題
わが国では、東京オリンピックを控え、外国人観光客をさらに多く受け入れ、日本の良さをさらに体験してもらうための方法を考えることが課題になっています。
そこで、「子どもの国際交流」を目的とした、これまで無かった新しいタイプの施設の案が募集されることになりました。その施設は大きな見本市会場*の中に作られます。あなたは、そこに応募しようとしています。どのような施設で、子どもたちがどのようなイベントで交流するのかを考え、解答用紙にある様式にしたがってまとめなさい。
*見本市会場:数千平方メートル規模の大きなホール施設を有するイベント会場。わが国では東京ビッグサイトや幕張メッセ、パシフィコ横浜などが有名。
2018年度の柏陽高校の実際の特色検査を分析し、次年度への対策の指針をまとめました。
データ A : B : C : D比 3 : 5 : 2 : 2/時間 50分/配点 200点/観点:理解力・情報活用能力・論理的思考力・表現構成力
2018年度募集定員:318名 / 2017年度志願者数:427名 / 2017年度志願競争率:1.34倍
国語・英語の読解を中心にした教科横断型・学力検査発展型の問題群
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問題の概要
全体に「速く正確な」読解と判断を求める
- 問1
- 題材文は中谷宇吉郎の科学エッセイ『雪を作る話』。この文章に関する国語読解問題と、ここで示された内容に関する理科と数学の設問が並びます。国語と理系の教科横断型問題です。
- 問2
- 英語の長文読解です。「異文化間の相互理解のための方法」が題材です。ここから、一般的な読解問題、データの読み取り、歴史地理との教科横断型問題が続きます。
読解+教科横断という構造が共通しています。文章を出発点にした教科横断型問題です。ただし、設問を個々に見れば、単教科型(後述)が多いので、結果的に読解力が重要(特に英語)になっています。
文字数は8,200字となかなかのボリュームです。英単語は約1,000語。たとえば新潟県や福岡県などの「入試の英語」が例年全部で1,200語程度であることを考えると、特色検査「後半部分」の英文の重さが分かります。また、今年度の英文は特色検査唯一の「説明的文章の長文(他は会話文)」であり、数値情報もたくさん盛り込まれており、読解力の重要性が高まっています。 -
設問一覧 難易度平均[5.8](昨年度は5.5) ※表の詳しい見方は概要のページにあります
全体に「速く正確な」読解と判断を求める
設問数は20で、うち4分の3が選択問題。かつて多かった説明記述は1問のみ。 -
設問の特徴・問1
外観は教科横断的だが、単教科型のシンプルな設問が多い
「教科横断型」にも、2つのタイプがあります。第一は、設問個々を取り出して見ると単教科型になるもの。第二は、1つの設問に複数の教科の内容が盛り込まれているものです。
柏陽高校の問1は、前者の典型です。
(ア)は短歌の鑑賞文選択です。国語のテストそのままで、文章とは無関係に解答できます。(イ)は「夕焼けと天候の関係」ですが、やはり文章から独立した理科(気象)の問題です。(ウ)は筆者の考える「科学的」な思考や行動の実例を選択します。これは国語読解の典型的な「内容一致」です。(エ)は冬の上空で水滴が水のまま存在できる理由の選択で、やはり理科単独の問題です。(オ)は文章中の顕微鏡観察での不思議を科学的にチェックします。主に光の屈折に関する問題で、文章とも他の問題とも直接関係はありません。(カ)は図形パズルと計算で、やはり独立。(キ)は文章についての内容一致で、(ウ)と同じ構造です。 -
設問の特徴・問2
本格的長文読解に、データ読み取りや社会の知識による内容判定が加わる重量級
教科横断型の第二のタイプ「1設問内でも教科横断」タイプは、問2に見られます。 しかし、問2はそれ以上にストレートな英語長文読解としても重量級です。そこに教科横断が重なるので、今年の問題の難易度を引き上げています。 まず、英文について解説します。 内容は「異文化圏の人々との接触に関する課題と解決」です。テーマ自体は珍しくありません。しかし、今回の英文には、語の多さ以外に、次の3つの難しさが存在します。
1 文章の構造 論理構造をもつ、しっかりした「論説文」
2 文の構造 複文(関係代名詞などを用い、複数の動詞を有する文)が全体の4割以上
3 文章の内容 販売記録や訪日数など複数の数値データを用い、英文中で読解
順に説明します。
1 文章の構造
他の特色検査はすべて「会話文」です。長くてもどこで区切られるのかが分かりやすく、また、「応答」の反復なので流れをつかむのも比較的容易です。これが「文章」になると、ずっと英語が切れ目なく続く印象に近づくため、順を追って読むだけではポイントが絞りにくいものです(また、長文でも物語風の構造をもつものは、時間軸に沿って話が進むので、場所と時間を正しくつかみ、要所にある「セリフ」でメリハリをつけて読むことができます)。
この長文は語りかけの形をとりながらも、本質は「論説」です。国語のそれと同じ論理構造をもっています。これに気付いて段落間の関係を把握できるかどうかが読解のカギを握っています。では、段落リストです。
1 話題提示:オリンピックなどで国内の非日本人は増加の一方
2 問題提起:異国人との協働に何が大事?―仮に、異国人がいない環境で協働の準備をする方法は?
3 具体的説明1a:2社の商品の比較(販売と顧客の好みのデータ)から、どちらが優れているとなるか
4 具体的説明1b:同じデータを使っても見方によって異なる結論を導くことができると説明
5 具体的説明2:訪日外客数の同じデータでも見方を変えれば、評価が変わると説明
6 結論・まとめ:具体的に示したような方法で、異国人がいなくても理解や意思伝達の向上は可能
2の問題提起に対し、3~5の具体例を通じて、6で解答しています。こうやって段落単位の流れをつかめば、どこにどのようなことが記されているかの見通しがつき、正確でスムーズに読解できます。また、この文章は6段落中の4つの先頭が空欄になっており、この点も読み進めにくくストレスの原因になっています。
2 文の構造
複文とは、関係代名詞などを用いて、複数の主語・動詞をもつ文のことです。中学生活の終盤に学ぶ関係代名詞は学習者を苦労させます。文の構造がつかみにくく、適切な日本語に訳すのが難しい「文」です。これが4割以上というのは、公立高校入試としては限界に近いレベルです(一般的な入試問題は20~30%くらいです)。英文和訳はありませんが、慣れていないとなかなか先に進みません。
□参考 「文」をその構造から3種類に分けると次のようになります
・単文 動詞1つの文(原則、主語も一つ)
Tom plays baseball every day.
・重文 複数の文(主語+動詞)が接続語 and, but, or などで結び付けられた文
Tom likes baseball and he is playing it in the park.
・複文 関係代名詞などによって、文の中に複数の文(主語+動詞)が組み込まれる文
I think that Tom is playing baseball now. や、 The person who is the best baseball player in my school is Tom. など
3 文章の内容
数値情報(データ)の読み取りは神奈川県の学力検査でもおなじみです。計算や比較がよく用いられます。ただし、このデータ読み取りは性格が異なります。「見方を変えると意味も変わる」ことに用いられます。「A社が優れる」という結論が「B社が優れる」に変わってしまったりします。その視点の変化を得るためのデータです。仮に日本語で書かれていてもじっくり考えないと理解できない可能性があります。深みのあるデータの使い方です。
設問は次のように並んでいます。
(ア)は前回の東京オリンピックの年代の判断です。英文とは無関係な社会の問題です。(イ)(ウ)は空欄を補うための英文の選択で、ストレートな読解問題です。形式的は入試にもよくあるのですが、(ウ)はデータの読み取りと判断が加わるのでなかなかの難問です。(エ)はややひねりのある適語補充。(オ)はデータの読み方における評価の逆転を日本語で説明します。(カ)(キ)はデータから国を選びます。英語が使われているので教科横断ですが、比較的平易です。(ク)(ケ)は英文の内容の理由や説明として正しいものを選ぶ内容一致。(ケ)は読解というより社会の基礎知識です。(コ)は本文と一致する英文を、(サ)は本文の題名に適する英語を選びます。2つとも内容一致です。
以上のように、英語のストレートな読解問題が6問で、残りが社会の知識問題です。設問そのものは総じて難解ではないので、英文読解が早く正確にできたかで結果が左右されます。社会はそれほど影響しません。
以上のことから、柏陽は「論理的長文」の読解力を何より重視している、と言えます。 -
昨年との比較
英語長文のレベルが高いためやや難化し、読解力重視がさらに鮮明に
大きく変わっていません。設問数は1増(19→20)、選択問題は昨年の増加の後、さらに増えました(68%→75%)。説明記述は1問のみ(2015年度は説明記述と論述が3分の1以上あったのが、ここまで減りました)。 レベルはやや難化。問題2の英文の難しさが大きく影響しています。 また、昨年3問あった計算問題が1問(規則性パズルに付属)になるなど、理数色は弱まりました。結果的に「英語・国語の読解力」が結果を左右するようになりました。読解力重視は昨年度も認められましたが、一段と鮮明になりました。
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問題・分析・湘ゼミの対策例 ①
点を描き、次に6つの点の正六角形を描き、次に15個の点の正六角形を描き、次には……という、「規則性」による推理と計算の問題。
正六角形になるように規則的に点を結びます。
はじめは1つの点、1回目に6つの点で正六角形を作り、その次には辺の長さを2倍にして正六角形を作り、その次には辺の長さを3倍に……と続けます。この点の個数の変化をまとめた表があり、はじめは1個、1回目に6個、2回目に15個とあります。
設問(1)は5回目の操作の後の点の総数を、(2)はこの操作を説明した文の空欄にあてはまる数値を計算します。
図と表をみて、規則性を見つけられるかどうかがポイントです。推理をする必要があるという点で、活用型問題と言えます。問題分析:理科的な判断を素材に、さまざまな分野のできごとに触れる
図には、2回目の正六角形まであるので、3回目の正六角形は自力でかいてみます。3回目の正六角形は、2回目の正六角形に13個加えればよく、15+13=28個となります。このルールで進むと、(1)の5回目の正六角形は28+17+21=66個となります。
(2)は、5個→9個→13個→17個→…と書いていき、「4つずつ増える」というルールを見つけます。ある程度手を動かせば分かるルールなので、時間が許す限り確実に書いて解答すべきです。公立中高一貫校の適性検査によく見られるパズルです。「特トレ」の出題
下の図1のような部品ア、イ、ウがある。それぞれの部品は、凸部と凹部で隙間なくつなぐことができる。図2は、ア、イ、ウのそれぞれを他の部品とつなぐ様子を示したものである。また、イとウの斜線部分は正三角形である。例えば、ア、イ、ウをつないだものを真上から見ると図3のようになる。また、図4は、図3の部品のつなぎ方を模式的に表したものである。ア、イ、ウの部品をあわせて10本使い、部品をつないで枠をつくる。ただし、すべての種類の部品を使い、部品は裏返して使えないものとする。
(1) 図5は、ある枠の部品のつなぎ方を模式的に表したものである。この枠は、ア、イ、ウをそれぞれ何本使っているか、答えなさい。
(2) ウを1本だけ使って枠をつくるためには、アとイをそれぞれ何本使えばよいか、答えなさい。また、その求め方とこのときできる枠を図4にならってかきなさい。 -
問題・分析・湘ゼミの対策例 ②
問1 ストレートな英文読解と社会科的知識の横断型問題群
問2の中心は、前の項目にも書いたように、ストレートな英語長文読解です。ここに関連して、文章や資料に示された国を特定して解答する社会との教科横断型のシンプルな問題があります。
「特色検査模試」の出題
教科横断型の設題は、学習内容の意外なつながりに気づくきっかけになります。
この設問は、緯度経度を用いた場所の特定ですから、教科としては社会に属します。しかし、平面上での緯度経度による場所の特定は、座標平面の考え方と同じシステムを用います。緯度経度の基本的知識があれば、ていねいな作業で解決できるある種の「パズル」ですが、同時に数学の設問との共通点も感じられるはずです。繰り返しますが、学んだことがらは、教科のワクに閉じ込めておくべきものではありません。「問題解決」のためにどんどん活用するべきです。「特色検査模試」の出題
Green Revolution(緑の革命)
The “Green Revolution” also had an effect on the increase in population. *Thanks to the Green Revolution, *billions of people could live in the last few ②decades. The Green Revolution improved *agricultural *productivity in the following way:
Using more *artificial fertilizers and *chemical pesticides
About 23 times more artificial fertilizers and about 50 times more chemical pesticides are used now compared to 50 years ago.
Bringing in *agricultural machinery
All agriculture is done by machines. Every year, about 17% of the *energy in America is used in agriculture.
Increasing *access to water
In many farming *regions, *groundwater is used. Groundwater is not *renewable. Some regions have *run out of groundwater. Now, about 70% of clean water is used for agriculture around the world.
The Green Revolution *greatly improved the productivity of the farm. One century ago, one farmer could only make food for 2.5 people. Now, one farmer can make food for more than 130 people. If we didn’t have the Green Revolution, we would not have enough food to *feed 1 billion people. (語注省略)
(3) 英文中の_____下線部②の単語を別の言葉で表すとどのようになるか。次のア~エの中から1つ選び、記号で答えなさい。
ア ten weeks イ ten months ウ ten years エ one hundred years
(4) 「緑の革命」は英文にあるとおり、豊かさをもたらすと同時に深刻な問題も生んでいる。その問題に対する直接的な解決案を説明した文としてふさわしいものを、次のア~エの中からすべて選び、記号で答えなさい。
ア 廃棄される食料をできるだけ削減する。
イ エネルギー供給源としての水力発電の割合をできるだけ大きくする。
ウ 農産物における残留薬品成分などの検査基準を厳しく設定する。
エ 汚れた水を浄化できる装置を安価に大量に供給できるように工夫する。「特色演習」の出題
《資料1》
Ayumi is a high school student. *During her summer vacation, she went to a museum with her aunt. There she learned the history of *lights. She knew that people used *candles to light a room before *electric lights were made. But she couldn't think life without electric lights. When she went into one of the rooms in the museum, she was surprised that the room with just one candle in it was very dark. She said to her aunt, "It's so dark in this room. Did people use a lot of candles *a long time ago?" Her aunt said, "I don't know about it well, but I think they went to bed earlier than we do now, so they didn't have to use so many candles. They didn't use much *energy. How much energy do we use in our life?" Ayumi came back home. She thought, " A long time ago, people lived without electricity. But how about Japan now?" She began to study about energy.
Japan has to keep buying energy sources from foreign countries. Are other countries also buying energy *sources? Ayumi studied the *data in some books. Look at data *below. 【 A 】 have to get more than 90% of their energy sources from foreign countries. 【 B 】 have to buy only about 20% of their energy sources. 【 C 】are lucky countries. These countries don't have to buy energy sources.
Is there the best way to live without energy sources from foreign countries? In another book, she learned about new energy sources. ①*Solar energy generation and *wind energy generation are among them. Japan has already begun to use them and it is planning to use them more and more in the *future.
In her room, Ayumi thought about energy in her life. She was using a lot of energy, maybe more energy than she needed. She decided to start *saving energy. She remembered ②her aunt's question at the museum. She thought, " I alone can't do many things to save energy, but I remember that I have to do something to make a better future." (語注省略)
下の表は「OECD各国のエネルギーバランス2005より作成」
(1) 《資料1》の【 A 】【 B 】【 C 】のそれぞれには表にある国のうちの2カ国が入る。その国名を英語で答えなさい(順不同)。
(2) 次のX, Y各グループの4つの英文は、《資料1》の下線部①に関して《資料2(省略)》に書かれた内容を英語に訳したものである。それぞれのエネルギーの説明として誤りのあるものを1つ選び、記号で答えなさい。
X) solar energy generation
ア They think that solar energy generation is more expected than any other *renewable generation.
イ Solar energy generation has a good chance to a lot of workers.
ウ Now Japan is the largest country in the *amount of solar energy generation.
エ Solar energy generation is more expensive than any other generation.
Y) wind energy generation
ア The cost of wind energy generation is the lowest in the cost of other renewable energy generations.
イ They think that they need to *support wind energy generation.
ウ They also think that the *institution of wind energy generation should be built on the sea.
エ We are able to build the institution of wind energy generation in the *National Park. (語注省略)
(3) 《資料1》の下線部②について、her aunt's questionとは何か。本文中から探し、はじめの3語を書きなさい。 -
課題と対策
幅広い読解演習+日常学習の深化
柏陽のこの数年の問題に一貫しているのは「読解力重視」、つまり「情報を正確に読み取る」ことです。これらの大切さは、どれだけ強調してもしすぎではありません。
日本語でも英語でも、長くて内容豊富な文章の読解に慣れるのが第一です。
特に今回のポイントは英文読解でした。そこで、対策の提案をします。
1 論説的性格の英文の読解
2 パラグラフ・リーディング(段落をまとめながらの読解法)
3 スラッシュ・リーディング(英文を斜線で区切って前から訳す方法)
項目別に説明します。
1 論説的性格の英文の読解
高校入試の読解は、会話文や物語的構造の英文が主流です。そこで、全国の入試問題から「論説文」的なものを選んで練習することをすすめます。かつて、神奈川県の難関高校が「独自問題」を作成したことがありました(後に特色検査にバトンタッチしたと見ることもできます)。現在でも都道府県によっては複数のグレードの問題を用意したり、学校が独自に作成したりすることがあります。前者の代表は埼玉県、福井県(今年から)大阪府(3グレード)、後者は東京都、京都府の前期選抜などです。この種の上位レベルの問題には、論説型英文がよく用いられます。問題を探し出す過程も学習の一部として有意義ですから、他地域の問題を読んでみてはいかがでしょう。
2 パラグラフ・リーディング パラグラフとは段落のことです。英文を読む際に、段落ごとのポイントをつかみ、何が書かれているのか最初にまとめてから通読するという方法です。今回の英文にはぴったりの方法です。この方法は、当然ですが国語の読解にも適用可能です。入試問題に時々「この文章の段落構成を図式化したものとして正しいものを選べ」といったものが見られます。この英文など、この問題がそのまま作成できます(右図参照)。また、その段落が例であることを示す単語(example)や、重要箇所の目印になる単語(answer, importantなど)に目をつけることも重要です。最後のタイトルを選ぶ問題(サ)などは読み返すと時間的に苦しくなりますが、これまでに書いたような構造と結論が分かっていれば、解答を即決できます。この語句チェックも、国語でそのまま使えます。
3 スラッシュ・リーディング
スラッシュとは斜線( / )のことです。英文を意味のかたまりに分解し、分かれる箇所にスラッシュを書いて可視化します。そして、かたまりごとに前から順番に訳します。英語は語順が異なるので、最終的に後ろから順に訳すような工夫が必要になり、それが手間を増やします。英文和訳の問題はめったにないので、訳は大まかな意味をつかむことができればまず問題ありません。この方法はスピーディに訳を進めるのに最適です。
また、柏陽の長文には関係代名詞を用いた複文がたいへん多いので、スラッシュ・リーディングはさらに威力を発揮します(逆にいうと、シンプルな主語一つ動詞一つの英文ならスラッシュを使わなくてもそう苦労しません)。では、実例です。段落5の文で、先に説明した「複文」のシンプルなものです。
You may not be surprised at this because the population of ( ⑤ ) is the largest in the world.
訳:⑤の人口は世界で最も多いので、あなたはこれに驚かないかもしれません。
「後ろから訳す」とまとめるのに手間がかかります。この文に「スラッシュ」を書き入れて切り分けます。スラッシュは「意味のかたまりごとに書く」としましたが、厳密な統一ルールがあるわけではありません。次のスラッシュは一つの参考として見てください。
You may not be surprised / at this / because the population / of (⑤) is the largest / in the world ..
訳:あなたは驚かないかもしれない / これに / なぜならば人口は / (⑤)の中で最も多い / 世界で
上のように区切って、前から訳します。日本語としては「だいたい」まとまればよいと割り切りって進めます。
さらに長く複雑な文を記します。動詞が全部で5つあります。段落5の中ほどにあります。
When you look at Table3 again, you find that the number of the people who came from (⑤) is larger than the combined number of the people who came from the USA, the UK, Canada, Australia and New Zealand.
スラッシュを加えると、訳しやすくなります。ではその例です。
When you look / at Table3 again, / you find that / the number / of the people / who came from (⑤) is larger / than the combined number / of the people / who came from the USA , the UK , Canada , Australia and New Zealand .
訳:あなたは見る時に / テーブル3を再び / あなたはそれに気付く / その数字 / 人々の / (⑤)から多く来た / 総計よりも / 人々の / アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドから来た やや細かく分けました。慣れるともう少し大まかに区切ってざっくりと訳すことができるようになります。
もう少し細かく、上の文を「主語と動詞」を基準に分割する例も示しましょう。グレー部分が主語、四角部分が動詞です。また、関係代名詞などの主語にあたる部分を《日本語》で補いました。また、対応する単語にはそれぞれ波線を加えてあります。
この文で分かりにくい点は、第三の主語「number~」の動詞が「is」 で、この主語と動詞の間に people who came from~という主語と動詞のセットがはさみこまれていることです。文の中に文が入る「二重構造」です。日本語でこの文のニュアンスを強引に表せば、次のようになります。やむを得ず( )を用います。
この分かりにくさは、日本語と英語の語順と構造の違いによります。スラッシュ・リーディングに慣れれば、上のような厳密な分析をしなくても、長く複雑な英文がある程度分かれて見えるようになり、だいたいの訳ができるようになります。高校での英語読解ではこういった複雑な構造の文が増えるので、たいへん有効な読解法です。
今回紹介した対策は、基本的に大きなかたまりのままの情報を区切って細分化し、つかみやすくする、ということを意味しています。これを一言で表す言葉が「分析」です。そもそも「分かる」とは「分ける」と同じ先祖から生まれた語です。「解く」も「分解」の関連語です。「分ける・分析する」ことが読解の基本であることを知ってください。
最後に、多様な読解の練習を積んで、学力検査でも特色検査でも、見た目が変わっても内容が珍しくても、安定して正答できる力を身につけてください。読解力がどれほど重要なのかは、将来何かの職業につけば、いやというほど思い知らされます。柏陽高校を志願する人は、特色検査の対策を通じて、最も重要な知的能力を鍛えるチャンスが得られた、と前向きに解釈すべきです。
第一、未知のものに触れて読んで、知識や経験を拡大することは、本来とても楽しいことです。さまざまな情報に接触し「どういう意味かな?」「どうやってまとめようかな?」「何かに応用できないかな?」など、楽しみながら考えることができるようになれば、まさしく一石二鳥です。
2018年度の希望ケ丘高校の実際の特色検査を分析し、次年度への対策の指針をまとめました。
A : B : C : D比= 3 : 5 : 2 : 2 / 時間 50分 / 配点 200点 / 観点:表現構成力・情報活用力・判断推理力・論理的思考力
2018年度募集定員:358名 / 2017年度志願者数:499名 / 2017年度志願競争率:1.39倍
論理思考最重視・パズル度100%の特色検査―設問数減で解きやすく
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問題の概要
論理的判断力と情報処理力を重視したシンプルな設問が多数
- 特徴と変化
- 1全体的傾向 論理・数学などのパズル的問題が中心
- □知識的要素が無くなる
- 2教科の傾向 論理・数学・国語・英語なし・知識ほぼ不要
- □知識不要になり小型化・設問減
- 3形式の特徴 語句記述・説明記述問題なし・選択と計算が中心
- □語句記述・説明記述が無くなる
- 課題1
- [Ⅰ]は5人の年齢と将棋の対戦結果を判定する論理パズル2問。[Ⅱ]は30枚のカードを操作する計算パズルが3問です。
- 課題2
- [Ⅰ]は「折り紙パズル」が3問。[Ⅱ]は「学ぶ」ことについてのストレートな文章読解が2問です。
- 課題3
- [Ⅰ]は質問への正解数を使う論理パズルが1問。[Ⅱ]は俵を積み上げた場合の数を判定する規則性パズルが3問です。
- 課題4
- 摂取カロリーと消費カロリーの資料を用いた計算問題が4問。すべて選択式です。
英語はなく、全体に「論理」を重視した問題です。知識によって解決する問題はありません。全設問が、示された条件や説明にしたがって作業して解答する、ある種のパズルです。課題2[Ⅱ]は国語の読解ですが、ここでも知識は不要なので、論理を用いた広い意味のパズルと見ることができます。数学的な問題でも、中学で学んだ「解法」はほぼ使用しません。国語の部分を除くと、5教科の学力検査とほとんど重なる要素が見られません。特色がはっきりしています。
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設問一覧 難易度平均[5.8](昨年度は6.0) ※表の詳しい見方は概要のページにあります
論理的判断力と情報処理力を重視したシンプルな設問が多数
「読解プロセス」「解答プロセス」はシンプルですが、「思考プロセス」が大きいのが特徴です。「思考」重視と分かります。また、表に「知(知識)」マークはありません。論理重視であることが確認できます。パズル的傾向の特に強い学校は他に横須賀高校がありますが、横須賀には英文読解(英語の知識が必要)と、社会の知識を求める問題があるので、希望ケ丘の「パズル的傾向」は、県下一です。
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設問の特徴
知識要素無し・その場の判断と作業が中心
「論理重視」とはすなわち、国語・数学中心とも言えます。知識不要な上、データ読み取りによる判断もないので、ほぼすべてが国語または数学のパズル、とも言えます。
国語と数学の教科としての共通点は、覚えることよりも、筋道立てて判断するために「論理を用いる」ことが中心であることです。一見無関係に見える国語と数学が、論理という深いレベルでつながっていることを教えてくれる興味深い問題です。
また、英語が無いことも、知識より論理的思考力を試すために特色検査を位置づけていることが分かります。知識的要素は学力検査に任せ、特色検査では独自のカラーを強く打ち出そうという明快な方針がうかがえます。今年は以上の傾向が強まったので「公立中高一貫校の適性検査に似ている」と多くの人が感じることでしょう。 -
昨年との比較
設問数減で、やや解きやすく ― パズル重視の方針がより鮮明に
昨年度の21問から18問と、やや減少。過去6年間では、2013年度:9問 → 14年度:11問 → 15年度:17問 → 16年度:11問 → 17年度:21問 → 18年度:18問、と推移しています。一昨年の水準に戻ったとも言えます。
基本的な出題方針は変わっていません。「言語論理」「図形」「数値」など、パズルの各分野が並べられています。前の項目にも書きましたが、学力検査との重複はごく小さいので「5教科の学力検査+論理科目としての特色検査」という入学者選抜の構造が分かりやすく示されています。
昨年度までに比べると、社会の知識を用いたり、データを読み取ったりするような設問が無くなり「パズル」色が強まっています。その結果、設問はシンプルで小型になりました。また、学力検査の数学と同じように、数値の解答も選択する問題が増えました。 -
問題・分析・湘ゼミの対策例 ①
課題1・[Ⅰ]設問2 将棋の結果を用いた組み合わせ判定型論理パズル
A~Fの6人で将棋の総当たり戦を行った結果が次のように示されます。これをもとに、勝数の多い順を判断します。
*AはEに勝 Cに負 / *BはA・D・Eに勝 / *CはB・Fに勝 / *DはAに勝 Cに負 / *EはD・Fに負 / *FはA・Bに勝 / *引き分けは無 / *同じ勝数になる人の組み合わせは無問題分析:「図式化」で整理+処理の正確さ
[I]の2つの設問は、ともに言語による論理パズル、[II]の3つの設問は、公倍数に関する「算数」の問題です。どちらもていねいに読んで正確に整理することを求めます。希望ケ丘らしい「手間のかかる情報処理」パズルです。
上に示した[I]設問2の解答手順を解説します。まず、問題文にある各人の勝敗情報から、右のような「勝敗表」を作成します。すると、C~Fの対戦にそれぞれ1つずつ空欄が残ります。
最後の情報に「引き分けがなく、同じ勝数になる人もいない」ことがあるので、Eが勝ってしまうと1勝4敗でAと並ぶことになってしまい、矛盾が発生します。よってEの「5敗」が確定します。その対戦相手のCは「5勝」と決まります。
同様に、Fは「4勝1敗」と決まり、対戦相手のDは「2勝3敗」となります。
以上の結果、順番は C > F > B > D > A > E となります。
「図式化」して視覚的にわかりやすく整理し、正確に処理することが、論理パズルを解くポイントです。
「特色検査模試」の出題
仮想の「ゲーム」の説明(要約)
あるレストランは美味しくて大評判だが、店は予約できず、客席はけっこう狭い。6人までは快適、7人はきつく、それ以上は窮屈で不愉快。私を含め、ここに13人がいるとします。毎晩、その店に行きたいと思っているが、狭いので、何人かは家で過ごさなければいけない。
次に、「快適に過ごせた度合い」を得点制にする。
・店に出かけたら、客は6人以下だった→快適に食事を楽しめたので、ベストの2点
・店が空いていたのに家にいた→残念だったということで0点
・店に出かけたら、7人以上の客がいた→窮屈でストレスを感じるので0点
・店が混んでいたとき家にいた→不快感はないので1点
何度もくり返し、みなで得点の合計を競い合う。目標は13人全員合わせた総得点数が高くなること。ここで、一人ひとりがとる行動を、次の2パターンで実験した。
第一は全員が「自分さえよければいい」と勝手に振る舞う。店に行って食事を楽しめたら、翌日もまた店に行こうとする。家にいたときに店が混んでいて、窮屈な思いをしなくて済んでラッキーだったら、また翌日も家にいる。つまり得点を取ったら、次も同じ方法で点を取ろうとする。
第二は、他を思いやって、ある日に良い思いをしたら、次の日は他の人にゆずる。もしも家にいて得点をもらったら、翌日は混んでいるかもしれないけれど店に行ってみる。これは、勝ちつづけようとせず、得点をもらったら、次は他人に勝ちをゆずるという行動を表す。
このふたつの振る舞い方でゲームをくり返した場合、10日ぐらいつづけるだけで差がついてくる。
(1) 上の資料にもとづいて、次の空欄( ① )~( ⑫ )にあてはまる数値を答えなさい。 例えば、1日目は13人のうち5人が店を訪れたとします。この場合は店に訪れた( ① )人の人だけがそれぞれ( ② )点もらえるので、合計得点は( ③ )点です。
翌日は、0点だった人のうちの半数の人が前日と行動を変え、残りの半数の人は前日と同じ行動をとるとします。0点の人が奇数だった場合は、前日と行動を変える人が前日と同じ行動をとる人より1人多くなるようにします。例えば、0点だった人が7人の場合は4人の人が前日と行動を変え、3人の人が前日と同じ行動をとります。
全員が自分勝手に振る舞う場合、2日目は、1日目に店に訪れた( ① )人の人は行動を変えず、1日目に家にいた8人のうち、( ④ )人の人が行動を変えるので、( ⑤ )人の人はそれぞれ( ⑥ )点もらえることになります。2日目にもらえる合計得点は( ⑦ )点であり、2日間の合計得点は( ⑧ )点です。
一方、全員が得点をもらったら相手にゆずる行動をとる場合、2日目は、1日目に店に訪れた( ① )人の人は行動を変えるので、( ⑨ )人の人がそれぞれ( ⑩ )点もらえることになります。2日目にもらえる合計得点は( ⑪ )点であり、2日間の合計得点は( ⑫ )点です。
(3) (1)・(2)に共通していることを次のア~オの中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 「全員が得点をもらったら相手にゆずる行動をとる場合」のほうが合計得点が高くなり、その差は日を追うごとに広がっていく。
イ 「全員が得点をもらったら相手にゆずる行動をとる場合」のほうが合計得点が高くなり、その差はほぼ一定である。
ウ 「全員が自分勝手に振る舞う場合」のほうが合計得点が高くなり、その差は日を追って広がっていく。
エ 「全員が自分勝手に振る舞う場合」のほうが合計得点が高くなり、その差はほぼ一定である。
オ 「全員が自分勝手に振る舞う場合」と「全員が得点をもらったら相手にゆずる行動をとる場合」で、合計得点は交互に代わる。「夏ゼミ」の出題
運動会の日。赤い帽子が3つ。白い帽子が2つあった。
先生が鶴見さん、泉さん、戸塚さんの3人をこの順番に並ばせ「前へならえ」をさせて、それぞれ5つの帽子の中の1つをかぶらせた。残りの帽子は誰にもわからないようにかくしてしまった。
一番うしろの戸塚さんは前の2人が何色の帽子をかぶっているか見えているが、自分の帽子の色は分からない。
真ん中の泉さんは、一番前の鶴見さんが何色の帽子をかぶっているのかが見えているが、自分や後ろの戸塚さんの帽子の色は分からない。
一番前の鶴見さんは、自分も他の人の帽子の色も分からない。
先生はまず、最後の戸塚さんに「自分の帽子の色がわかりますか?」と質問した。
戸塚さんは「わかりません」と答えた。
次に真ん中の泉さんにも同じ質明をした。
すると泉さんも「わかりません」と答えた。
しかし、1番前の鶴見さんは2人の発言を聞いて「わかりました!」と答えた。鶴見さんの帽子の色は何色か、答えなさい。 -
問題・分析・湘ゼミの対策例 ②
課題2[Ⅰ] 折って切り取って開く図形パズルが3問
正方形の紙を4~5つの手順にしたがって折りたたみ、折った状態でその一部を切り取ります。この後で紙を開きます。設問1と2は、最後に開いたときの紙の切れ目の状態を選びます。設問3は、紙を折って切って、「最後に開いた状態の一部」と手順が示されます。以上の情報から、どのように切り取ったかを選びます。図形パズルの典型的な問題です。
問題分析:図を書いて試して解答に近づくパズル
単元で分類すれば数学の「平面図形」ですが、解法の知識不要で、想像力と作業で解決する図形パズルです。
設問1について説明します。
手順は次のようなものです。
手順① 正方形をたてに半分に折り、たて長の長方形にします。
手順② さらに半分に折ってもとの4分の1の面積の正方形にします。
手順③ 正方形を対角線で折って直角三角形にします。
手順④ ③でできた直角三角形の一部(右の図の黒い部分)を切り取ります。⇒選択肢は「紙を広げた結果」です。
結果を知るには。わかっている最後の状態から手順を「逆算」するように作業を進めます。
手順④の図(右上)を手順③の正方形にかき入れ、さらに折り目を対称の軸とした線対称な図形をかきます。これでできた手順③の図を手順②の長方形にかき入れ、折り目を対称の軸とした線対称な図形をかきます。最後に、手順②の内容を手順①にかき入れ、折り目を対称の軸とした線対称な図形をかくと、選ぶべき解答が現れます。下の図を見てください。設問2も同じような手順で考えます。設問3は開いたあとの状態の一部が与えられています。この場合は、手順①からかきますが、手順を進めるたびに、折り目を対称の軸とした線対称の図形をかけば正しく追うことができます。
手順を整理して「対称な図形」をかく「手間のかかる作業型図形問題」です。「夏ゼミ」の出題
対角線が20cmの正方形の折り紙を下の図のように、縦と横に半分に折り、さらに縦と横に半分に折る。次に図のようにA側の二辺の真ん中の点を結んだ線で、折り紙から三角形の部分をすべて切りはなす。残った五角形の折り紙を広げたときの面積を求めなさい。また、広げた図形がどのようになるかを、実線で解答欄(※省略)に書きこみなさい。
上の問題でできた五角形を広げるとどのような図形ができるか。実線で解答欄(※省略・右の図は解答例)に書きこみなさい。
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代表的な問題と湘ゼミの対策例 ③
課題3[Ⅱ] 俵を用いた立体の積み方のパズル
俵をルールにしたがって積み上げます。右の図のように、1段め(最下段)に4俵の場合は2段めに3俵、3段めに2俵となります。段が上がるごとに1俵減る、ということです。
このルールをもとに、設問1は1段めに10俵で10段の場合の俵の総数を、設問2では10段まで積み上げて最上段が5俵のときの俵の総数を、設問3では100俵の俵を6段以上積んだときの最上段と最下段の俵数を求めます。
ストレートな規則性パズルです。問題分析:規則性を見つけ出して解答する情報処理型問題
規則性を見つけ出して解答します。やはり、ていねいに図式化し一般化する力が問われます。
まず、「1段上がるごとに俵の数が1つ減る」というルールを把握する必要があります。
設問1のように、1段めに10俵並べると、1段めから順に「10俵、9俵、8俵…」と積み上げられ、一番上は1俵です。よって、1から10までたして、55俵となります。
設問2では、10段積んで最上段が5俵となるときのすべての俵数を求めます。このとき、1段めは14俵並んでいるので、 (5+14)×10÷2=95(俵) となります。
設問3は、100俵の俵を積み上げるのに、1段めに何俵並べ、何段まで積み上げ、その結果最上段が何俵並ぶのかを計算します。ただし、6段以上積み上げる必要がある点に注意しなくてはいけません。
まず、下の図1のように6段まで積み、最上段が1俵になる状態を考えます。このとき、俵は全部で21俵です。そこに、すべての段の俵を増やすと、下の図2の黒い丸のように6俵ずつ増えます。ところで、 100-21=79 ですから、79は6の倍数ではありません。ということは、このまま6俵ずつ増加させても100俵ぴったりにできません。同様に、7段まで積んだ場合、最上段が1俵になるとき俵は全部で28俵です。100-28=72 なので、これは7の段になりませんから、100俵ぴったりになりません。8段まで積んだ場合は、最上段が1俵になるとき俵は全部で36俵です。100-36=64 なので、8の倍数です。64÷8=8 なので、各段に8俵ずつ追加すればよいので、その結果1段めは 8+8=16俵、8段めは 1+8=9俵となります。このように、実際に図を書いて規則性を確認しながら進めます。図や情報の書き方や整理のしかたに注意しないと、途中でつまづいたとき、前に戻れなくなってしまいます。
「特色演習」の出題
(1) 図のごとく、俵を杉形(すぎなり)にす。上一俵下十三俵なるとき、この杉形の俵数如何(いかん)。
語注 杉形:ピラミッド状に積み重ねること。重ねた形が杉の形に似ていることからきている。 如何:いくつあるか -
課題と対策
常に言葉を厳密にあつかう+頭と手を動かす
論理というと、難しい印象を受けるかもしれません。ですが、例えば、「~のみ」「すべてを含む」や「ゆえに~」などの「意味の関係を表す言葉を厳密に、よく考えて使う」ことに尽きるのです。日々正確な日本語を使うよう意識しましょう。
練習ではパズル的な問題における作業の正確さが重要です。複雑な立体の設題に挑戦し、「問題は手で書いて解く」ことを心がけてください。また、南附中・サイフロ附属中のような公立中高一貫校の適性検査にパズルが多いので、中学生の特色検査対策で、練習の選択肢に加えることをおすすめします。
最後に、「特色演習」から、希望ケ丘高校が求めるような「論理」について解説した部分を引用します。「特色演習」の解説から引用
「論理」とは前にも書いたように「○○だから●●である」といった、ものごとのつながりを表すものです。その代表的な書き方が西洋論理学の伝統「三段論法」です。では、その例です。 1:すべての日本人は人間である 2:すべての人間は必ず呼吸をする 3:(だから)すべての日本人は必ず呼吸をする ここに示した「論理」とは、何を、どう言っているのでしょうか? 次のように図式化しましょう。 1:日本人 = 人間 2:人間 = 呼吸するもの 3:日本人 = 呼吸するもの これは正しくありません。日本人はたしかに人間ですが、人間がすべて日本人ではありません。同じ事が人間と呼吸をするものの関係にもあります。あえて数式の記号で表すなら、次のようになるはずです。 1:日本人 < 人間 2:人間 < 呼吸するもの 3:日本人 < 呼吸するもの この関係を、以前、別の箇所で紹介した「ベン図」を使って表しましょう。右の図です。さて、高校数学で習う「集合」では、この関係を次のように表します。次の記号「∈」は「含む」と読みます。その通りの意味です。逆向きもあります。 日本人 ∈ 人間 ∈ 呼吸するもの ちなみに、この「三段論法」の結論は、次のとおりです。 日本人 ∈ 呼吸するもの 「たったこれだけのことに大げさな……」と思いませんでしたか? そのとおりです。たしかに大げさです。でも、見直してください。先の例でも、つい「日本人は必ず呼吸する」を「日本人=呼吸をするもの」と誤ってしまいました。言葉というものは、こんなにかんたんに誤った表現ができてしまうのです。だから、厳密さを優先する「学問」の世界では、ある程度世界共通の記号や説明の方法を整備して、誤解を減らそうとしているのです。 なお、この「三段論法」の手順を見て「数学の証明に似ているな」と感じたあなたは実に鋭い。そのとおりです。似ているのではなく、数学の証明の方法は、このような言語を抽象化(図式化)して組み立てられたものなのです。
2018年度の横浜サイエンスフロンティア高校の実際の特色検査を分析し、次年度への対策の指針をまとめました。
A : B : C : D比 3 : 5 : 2 : 2/時間 60分/配点 200点/観点:読解力・課題設定力・情報活用力・課題解決力
2018年度募集定員:238名 / 2018年度志願者数:380名 / 2017年度志願競争率:1.60倍
前半読解+後半企画:日本の問題を分析解決 ― グローバル・リーダーの資質を問う個性派
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問題の概要
少ない問題数ゆえに慎重に・最後はプレゼンテーション・じっくり考えて解答したい
- 横浜サイエンスフロンティア 特色検査
特徴と変化 - 1全体的傾向 資料読解+問題解決型プレゼンテーション
- □変化なし(解きやすくなる)
- 2教科の傾向 各教科の要素が統合された総合的問題
- □変化なし
- 3形式の特徴 語句記述・説明記述もあるが主力は論述
- □変化なし
今年の題材は「日本の科学技術の現状・課題・解決」という、幅も奥行きも広いものです。
[1]は英文読解による資料要約。「日本初の科学技術政策」についての中学生(ジャックとサキ)の会話を読み、内閣府による資料「科学技術基本計画」が意図している具体的内容をまとめる。英文そのものはそれほど重要ではなく、要旨が分かれば後は資料のポイントを要約することが課題。
[2]はデータ読み取り。4つのグラフ(世界と日本の科学技術系論文の比較)を読んで、そこに示された内容を正しく説明したものを、3つのテーマについてそれぞれ選択肢から選びます。 [3]は外国と比べた日本の学生の優れている点と課題点を資料群から考察し、記述します。
[4]はサイエンスフロンティア入試ではおなじみの「図やイラストも使用できる」プレゼンテーション型問題です。同校における中学生向けの体験教室の企画書を作成します。また、それが[3]での課題解決の取り組みになる理由を説明します。
設問数は事実上県下最少です(一種の「作文」である横浜緑ケ丘高校を除く)。 - 横浜サイエンスフロンティア 特色検査
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設問一覧 難易度平均[6.1](昨年度は7.4) ※表の詳しい見方は概要のページにあります
少ない問題数ゆえに慎重に・最後はプレゼンテーション・じっくり考えて解答したい
問題に解答するプロセスを見ると、「読解」についてそれほど難しい要素はありません。むしろ、読み取った内容についての考察を説明したり、企画案を示したりといった、「書く」ボリュームが大きいことが特徴です。
特に最後の「プレゼンテーション問題」には、内容はもちろん、図表などの手段をどう活用するかなど、考えるべきことがたくさんあります。資料のボリュームはありますが、設問が少ないので、じっくり考えて解答する時間はあります。それだけに、よく練った解答を書けるかどうかが重要です。この点が、複雑な情報と多数の設問で、読み取りに手間のかかる「速度重視」タイプの学校との違いです。
横浜サイエンスフロンティア高校の特色検査は、前期選抜の時代以来、受験者に求める思考の質から、3つのパターンに分けられます。次にその分類を示します。基本的な構造は毎年一定しています。なお、各行の最後にあるのは、今年の設問番号です。
1:情報処理 与えられた情報を客観的につかみ、判断したり計算したりする [2]
2:推理 与えられた情報から、内容や問題点などを整理して説明する [1][3]
3:プレゼンテーション 与えられた情報をもとに、解決策などを提案し、説明する [4] -
設問の特徴
読み、説明し、提案する「表現力重視」のアクティブ問題が核になっている
特色検査に限らず、テストで求められる学力は2種類あります。
第一が「受動的学力(パッシブ)」です。まず、指定されたことがらをしっかり覚えて「知識」として、使うことです。そして、示された素材について作業したり推理したりする「思考」も受動的学力に含まれます。共通点は、指示にしたがって行動することが中心で、意志表示は求められていない点です。
第二が「能動的学力(アクティブ)」です。こちらは基本的に意見を述べることです。作文や企画等です。毎年、最大の最終設問がこれにあたります。
能動的と受動的のどちらが良いとかどちらが難しいということではありません。学力検査は基本的に受動的学力を試します。特色検査では、能動的学力を特に重視するのが横浜緑ケ丘、能動が優勢なのが横浜サイエンスフロンティア、他の学校は受動がほとんどです。
今年の前半3問はストレートでシンプルな読解問題で受動的学力を求めます。最後の「企画」は、アイデアと表現力などの能動的学力を求めます。
資料はたくさんありますが、ていねいに読み進めれば難解ではありません。また、「どんな取り組みか」「課題は何か」「どんな解決がありうるか」などについて、大きなヒントになる情報があちこちに配置されています。資料を読む際の「注意深さ・センサーの感度の良さ」で差がつきます。
最後は図の使用も可能な「プレゼンテーション」です。「体験教室」の企画には次の課題があります。第一は、科学技術分野への日常的な関心の高さです。例として「ペットボトルロケット」「防災の技術」が示されています。これらと異なるテーマを考えて具体的に書かねばなりません。第二は、具体的に分かりやすく表現する技術です。 -
昨年との比較
解きやすくなる・方針は一貫して変わらず ― グローバル・リーダーの資質重視
前半は解きやすくなりました。資料の種類がシンプルになったことと、どの資料をどこで用いるかという「区切り」が明瞭になったことの影響です。作業も特に困難さはありません。「正確な読解と作業」で高得点可能です。昨年、複雑さがピークに達した反動かもしれません。昨年は「難問で少しでも得点する」ことが差をつけるポイントでしたが、今年は易化したことで「ミスをしない」ことが重要になりました。
最終設問も、資料を読み込む必要はあまりなく、作例もあるのでずいぶん解きやすくなりました。最低限の解答は誰でも書けます。ただし、体験教室の内容を整理して具体的に書きこみ、高得点となる解答を作成するのは平易ではありません。一定以上の点は取りやすくても、真の高得点にはそれなりのハードルが存在する、「浅くも深くも書ける設問」です。
同校が目指す人物像は「グローバル・リーダー」です。世界や社会への関心、科学技術の知識、説明と説得の力などがバランスよく備わって欲しい、というメッセージが込められています。その観点から見ると説明・提案の重視は変わっていません。また、科学技術による社会的課題の解決というテーマもこの数年続いています。
過去には社会科学色が強い問題もありました(フードロスなど)。来年、この数年のようなサイエンス(自然科学)および技術色が濃いものが出題されるとは限りません。しかし、横浜サイエンスフロンティア高校の求める人物イメージを知ることで、どちらも必要ということが理解できるはずです。 なお、前半の小規模な問題は平易ですが配点が大きいので、少しのミスでも大ダメージになります。注意してください。 -
問題・分析・湘ゼミの対策例
[4]日本の科学技術の課題を解決する「体験教室」を提案・説明する問題
設問は次のような内容です。
あなたが横浜サイエンスフロンティア高校の生徒だとします。世界の国々と比較した日本の小学生~高校生の課題点(設問[3]の解答にあたる)の解決に向けた取り組みとして中学生向け体験教室(参加20名)を企画書を完成させなさい。なお、図や絵を用いてもよい。
問題分析・解説:現代社会に関する問題発見とその解決策+説得力ある説明を求める
この企画のための条件が、以下のように設問と解答用紙で指定されます。
①タイトル
②場所
③必要なもの
④学ぶことができる教科
⑤具体的な内容
また、[3]の解答にあたる課題の解決になると考える理由も書くように指示されています(課題は、中学生になると、理科を楽しいと感じる人が減ってしまうことです)。
以上のような指定があることは、一見めんどうに見えますが、提案の基本的な方法を教えてくれるという面があります。「何について(タイトル)・どこで・何を使って・何を学び・どのような方法で・なぜそれが問題解決になるか」などの内容を備えるようにまとめることで、説得力が増します。
提案を表現するために身につけておきたいことです。
ここでは中学生にとって印象的な科学技術の中身とそれを体験させるアイデアを提出することが求められます。それではじめて「課題の解決」にもつながります。同時に、現代の科学技術の状況や、問題についての知識・関心の度合いも試されています。さらに、内容を条件にしたがって組み立てて分かりやすく説明する力が必要です。
では、解答例です。説明不十分なところも残してあります。「こうしたらいい」などを考えてください。①タイトル
水をめぐる冒険~生活・災害・グルメ
②場所
横浜サイエンスフロンティア高校
③必要なもの
水質検査や分析の装置 自転車型浄水器 各地の水
参加者の自宅の水道水や、近隣の川、側溝などの水
鶴見川の上流から河口までの何か所かで採取した水
羽田から横浜港にかけての海水も採取して用意
日本各地や世界の「おいしい水」ボトル
⑤具体的な内容
講座:水・汚染・浄水のしくみなどを学習
イベント1 水質調査と浄水作り
集められた各地の水を分析して水質マップを作成
浄水器で川や池の水が完全に浄化できることを分析結果で確認
イベント2 水グルメ大会
各地の名水と水道水を分析し、成分データを比較
名前を隠して「水の銘柄あて」クイズ~「本当においしいのはどれ?」
水による各種料理の「味比べ」と「水と食材の組みあわせ」コンテスト
企画が課題解決に向けての取り組みになると考える理由
身近で欠かせない「水」の現状に触れ、科学技術による問題解決のヒントを知ることができる
「水のおいしさ」を比べて知ることができ、飲食の楽しみが科学と一緒にふくらむ
※参考 「自転車型浄水装置」は、自転車をこぐ力で水圧を発生させ、高性能なフィルターに水を通し、汚水を浄化するという装置です。「シクロクリーン」という名称で川崎市の企業が商品化しています。
これはたいへん強力な装置で、河はもちろん、池やプールの水を1分間に6リットルのペースで飲料水に変えます。ガソリンも電気もいらず、どこにでもこいで
行くことができます。災害時の活躍が期待されますし、途上国の水環境改善にも有効です。バングラデシュからまとまった数の発注があったそうです。興味のある人はネットで検索してください。 この装置を使った「浄水競技」のようなことも可能でしょうし、これで料理ができるか、これで作った浄水を区別できるか、などのイベントも考えられることでしょう。
このような、世界の諸問題を解決するような科学技術の使われ方を考えることや、それを広く伝えるようなことに、みなさんが興味関心を抱くことを期待します。「横浜サイエンスフロンティア高校特色検査模試」の出題・解答例・解説(抜粋)
(食料・農業問題と、その解決のための科学技術の活用がテーマ)
【資料5】日本の主な農産物の国際競争力の評価 ※記号は、以下のような意味をもつ
◎: 仮に関税が撤廃されても十分な競争力がある
○: やり方次第で国際的な競争力はある
△: 関税を撤廃すると輸入品が国産品に取って代わる可能性があり、大胆な構造改革が必要
✕: 競争力に欠ける【資料6】 世界の農産物上位国および日本の農産物の輸出入額
【資料7】 世界の主要国の農業を型で分類した結果
【資料8】 世界の農産物輸出上位国および日本の主な輸出品目(2012年)
【資料9】世界の農産物輸出上位国および日本の農業環境(2012年)
[3] 【資料5】~【資料9】から、資料中の農産物の輸出が盛んな国々と比べた日本の農業の顕著な特徴を読み取り、まとめなさい。
[4] あなたが日本の農業や食料に関する問題を解決することを目的の一つとして企業(会社)を設立するとします。そこで、まず現在の日本の農業や食料に関する問題点を一つ挙げ、それを解決するために、資料にあるIoT、ICT、AIなどの各種技術や機器を活用してどのような企業活動をするのかその内容と、それによって先にあげた問題がどのように解決するか分かりやすく説明しなさい。また、その企業の活動にともなう問題点を1つ挙げなさい。ただし、【資料2】【資料3】に載っている具体例をそのまま使ってはいけない。
なお、現時点で法令などによる規制があったり、技術的な限界があったりして実現が難しいことでもかまわない。説明には図やイラストを用いてもかまわない。◆模試の解答例(抜粋・編集)
○現在の問題点
輸出額が小さい
○作る企業
全国の稲作農業の情報を取りまとめる企業
○企業としての目的
・稲作農業の進化
・稲作農業の効率化
・より強く美味しい新種の米の開発
・輸出品としての米を作る
○何をするか
全国の稲作農家をオンラインでつなぎ、情報共有と情報収集を行い、より効率的に美味しいお米を量産できる体制を作ります。各稲作農家からの情報提供を待つのではなく、IoTにより各農具を繋ぎ情報をデータとして収集します。そして各地の気温、湿度、水田の手入れの状態、収穫量など様々な情報を一括して処理し、AIにより最適化した情報を、各地域の米農家に、それぞれがより効率的な収穫ができるようアドバイスが送られます。各米農家は効率的な農作業ができるようになるため、水田や作業時間に余裕が生まれます。その余裕を使って新種の米の開発をしてもらいます。新種の米も各地で作ることで1回(1年の期間)でも複数の場所での育成データが取れるため、より早い品種改良が可能になります。そうした米を大量に作り海外への輸出量も増やすことで、各地の稲作農業のより安定した運用を可能にします。
○問題点
IoTやセンシングする道具を持ち、使うことに慣れない農家が多く、仕組みを説明し、理解し、賛同する農家を増やすまでに時間がかかる◆模試の解説(抜粋・編集)
図や箇条書きを用いることは、読み手にとってより理解しやすいものになる効果があります。そしてもう一つ重要な効果を覚えておいてください。それは「書き手が書くべき内容をよく整理できる」効果です。
設問が複雑で指定内容が多いので、つい、重要な項目をはっきり書かずにいて、大きく減点されてしまうというケースがあります。そうならないように、マークをしてメモを作ります。その上でさらに、箇条書きや図を用いれば、「漏(も)れ」は確実に封じ込められます。また、実際に解答欄に書かなくても、図でまとめながら考えるのは具体性を高めることにも役立ちます。ものの動作や配置などを、図式化することで具体的にイメージするのです。
図は必須ではありません。箇条書きではなく文章で解答するのももちろん問題ありません。それでも解答例をすべて箇条書きにしてみたのは、ミスを防ぎ、整理しやすいからです。弱点も指摘しておきます。最後の「問題点」の内容です。ここの内容は、「新しい技術や方法の導入」に常についてまわることであり、この企業の活動に特有のものとはいえません。 -
課題と対策
「どうすればよくなる?」という問題発見と解決策の提案がリーダーの資質
現実におこっている物事を観察して、その問題点と解決策を考えるというのが、前期選抜時代から10年単位で一貫した同校の課題です。来年も同じ題材で出題される可能性はありませんが、このテーマについて考えてみることには意義があります。
大切なのは、「何が問題? どうすれば良くなる?」と考え、表現してみる経験です。「リーダーの育成」といった目標を、全国で多くの高校が掲げていますが、その目標を、入試問題の形で具体化している学校は多くありません。横浜サイエンスフロンティア高校は、特色検査の問題を通じて、現実の社会問題に触れ、考えるよう求めます。
また、「リーダー」たる人物は、単に解決策を立案するだけでなく、その実行のために多数の人々を説得して、さまざまな困難を突破しなくてはいけません。点を取ること自体が目標なのではなく、将来のリーダーにふさわしい能力を訓練した結果、合格もついてくるというのが理想です。忘れないでください。もちろん、最新の科学技術などのトピックにも注意を払うべきです。
2018年度の横須賀高校の実際の特色検査を分析し、次年度への対策の指針をまとめました。
A : B : C : D比 3 : 5 : 2 : 1/時間 60分/配点 100点/観点:理解力・情報活用能力・論理的思考力・表現力
2018年度募集定員:318名 / 2018年度志願者数:374名 / 2017年度志願競争率:1.18倍
教科、知識と論理、難易度のバランスに配慮したパズル的教科横断型問題群
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問題の概要
理数の発展型が多数―設問数・文字数・作業数が多いので最後まで気が抜けない
- 横須賀高校 特色検査
特徴と変化 - 1全体的傾向 パズル重視・教科の知識の必要性は限定的
- □知識問題が加わる
- 2教科の傾向 英語・数学・理科・社会のパズルが中心
- □歴史パズルで知識を求める
- 3形式の特徴 選択と計算の比重大・ページ数最大
- □ページ数など多少減
- 問1
- ストレートな英文読解。テーマは「国際化・海外旅行・外国語習得」です。学力検査の英語のレベルを高めたような問題群です。語注のかわりに「単語集」を用います。
- 問2
- 「海外から見た日本」をテーマにした4つの歴史的資料が示されます。ここから論理判断、歴史知識による正誤判定、理科(化学反応式)などの設問が続きます。
- 問3
- ゲームのルールを読む算数的パズル(希望ケ丘に酷似した問題あり)と、図形パズルです。
- 問4
- ニュートンの科学理論(規則と命題など)の解説があり、それをもとにした万有引力の法則をめぐる論理判断や計算が並びます。
- 問5
- 顕微鏡のしくみの説明があり、それをもとにした計算や作図、座標などの応用問題が並びます。 設問数は24。文字数は約10,000で、県下最多です。英単語は1,000語弱。柏陽高校と並ぶ県下最多レベルです。新潟県や福岡県などの「入試の英語」が例年全部で1,200語程度であることを考えると、英語部分のハードさが分かります。さらに横須賀高校の英文読解は、語注のかわりに別紙の「単語・熟語集」を用います。アルファベット順に語が並ぶので、探す手間が増え、難易度を高めます(横浜翠嵐高校と同じ)。
- 横須賀高校 特色検査
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設問一覧 難易度平均[5.8](昨年度は6.3) ※表の詳しい見方は概要のページにあります
理数の発展型が多数―設問数・文字数・作業数が多いので最後まで気が抜けない
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設問の特徴
「速さ・正確さ・ねばり強さ」を特に重視―単語・熟語集の扱いも重要
特定の教科の知識を必要とせず、その場で与えられた情報を読み、その指示にしたがって作業するタイプの問題を「パズル」とします。全特色検査中、希望ケ丘高校と並んでパズル的な性格が特に強く見られます。
ページ数、設問数ともに県下最大です。文章や図などの情報量が多く、作業も多いので、冷静にかつ、速く進めなければいけません。前述しましたが、問題1の英文読解での未履修の語彙に目印や語注が無く、別紙の「単語・熟語集」にアルファベット順でまとめられています。語を探しだすのに手間がかかります。語句を探すのに時間をとられると、その後のパズルなどに響きます。このように全体的に手間がかかるので、集中力の持続も重要です。「速さ・正確さ・ねばり強さ」のハイレベルなバランスが求められています。 -
昨年との比較
知識型問題が復活・突出した難問が無くなり、多少平易に
昨年度は事実上ゼロだった知識で解決する問題が復活しました。内容の性質は初年度(一昨年)に戻ったとも言えます。
ただし、過去2年度分にあった、即座に「これは難しい」と感じさせる難問(非日常的な内容で、具体的なイメージがつかみにくい)は姿を消し、やや平易になりました。ただし、設問数と作業量は増えたので、相変わらず手強い問題であることは変わりません。 -
問題・分析・湘ゼミの対策例 ①
問1 データ読み取りを重視する英文読解
2ページ分の会話文とグラフを見て、設問に答えます。
日本人のハルキとサクラ、留学中のアメリカ人リリー、タイ人のコムスンの4人の会話です。全校生徒に行ったアンケート「国際化に当たって身につけるべき資質・能力は何か?(複数回答可)」の結果が右のようなグラフになっています。会話はこれをめぐって進みます。
英文の要旨を記します。
グループは次のように分けた。
グループ1:海外に住んだことがある
グループ2:海外に旅行したことがある
グループ3:海外に行ったことがない
(ここから会話内容の要約)
Dの項目で3つのグループがほぼ同じ割合でDの項目が重要だと考えている。異なる海外経験を持つ生徒の間にほとんど見解に違いはない。対照的にAは海外経験の有無ではっきりとした違いがある。しかも、グループ2の生徒がグループ1の生徒よりも多く「はい」と答えている。外国語が話せれば海外旅行をもっと楽しめそうである。外国語の習得についてCの項目も興味深い。グループ1がグループ2よりも高い割合で「はい」と答え、Aとは逆になっている。海外に住んでいたら、自分の意見を言うことが大事で、自分がどのように考えて感じているかを話せなければ、特にアメリカでは現地の人と良い関係を築くことはできないかもしれない。
Eの項目では歴史と文化について各グループが異なった意見を持っている。例えば、“国際化”という言葉を聞いたときに私は自分たちの歴史や文化について学ぶことが重要だとは思わないものである。しかし、実際には重要だ。自分の国について聞かれたとき、あまり多くを知らないことに気が付くことがある。単なる外国旅行よりも、そこに住むときのほうがこの種の質問を受ける機会が多くなるだろう。日本に来た外国人が日本語を話せたとしても、自国の文化や歴史について知らなければ日本人から自分の国について質問されても回答できない。
(ハルキによるまとめ)国際化社会で生きるには自分の国の歴史や文化について学ぶことが重要な段階のひとつである。
次に設問です。
(ア) 英文中の空欄に適するアンケートの項目を選びます。例えば、「次は( え )の項目を見て。歴史と文化について各グループが異なった意見を持っているよ(日本語訳)」。英文読解とグラフのデータ読み取りの問題です。
(イ) 英文中の下線部が空欄になっており、ここに当てはまる語句を選びます。(ア)と似たタイプの読解です。
(ウ) 会話の内容について、次の質問の解答として適切な英文を選びます。i「サクラが言う、タイと日本の共通点は何か?」。ii「日本の文化や歴史についての知識を身につけるべきと回答した割合が、グループ1が特に高かった理由について、どのように話し合われたか?」。
(エ) 話し合いの内容と一致する英文を2つ選ぶ。問題分析:「速さ・正確さ・ねばり強さ」を求める英文読解パズル
設問そのものは英文読解のベーシックなスタイルですが、受験者にはなかなかの重荷です。 この設問の難しさは、次のように整理できます。 1 グラフが複雑でよく整理しないと混乱しやすい 上の図と要約を日本語で読むだけでも何回もグラフと文章を見比べたはずです 2 会話文を部分的に読んだだけでは正解しにくい設問が多い 3 単語・熟語集を参照する手間が負荷を大きくする 4 全体の最初にあるため、時間がかかると残りのページが気になって心理的に不安定になる データの読み取りを含むパズル的英文読解は、学力検査でも重要な分野ですし、全国的に見ても増える一方です。これは、そのタイプの中でも複雑で手間のかかるものです。上記のポイントを克服できるかどうかが課題と言えます。
「特色演習」の出題
《資料1》 Ayumi is a high school student. *During her summer vacation, she went to a museum with her aunt. There she learned the history of *lights. She knew that people used *candles to light a room before *electric lights were made. But she couldn't think life without electric lights. When she went into one of the rooms in the museum, she was surprised that the room with just one candle in it was very dark. She said to her aunt, "It's so dark in this room. Did people use a lot of candles *a long time ago?" Her aunt said, "I don't know about it well, but I think they went to bed earlier than we do now, so they didn't have to use so many candles. They didn't use much *energy. How much energy do we use in our life?" Ayumi came back home. She thought, " A long time ago, people lived without electricity. But how about Japan now?" She began to study about energy.
Japan has to keep buying energy sources from foreign countries. Are other countries also buying energy *sources? Ayumi studied the *data in some books. Look at data *below. 【 A 】 have to get more than 90% of their energy sources from foreign countries. 【 B 】 have to buy only about 20% of their energy sources. 【 C 】are lucky countries. These countries don't have to buy energy sources.
Is there the best way to live without energy sources from foreign countries? In another book, she learned about new energy sources.
①*Solar energy generation and *wind energy generation are among them. Japan has already begun to use them and it is planning to use them more and more in the *future.
In her room, Ayumi thought about energy in her life. She was using a lot of energy, maybe more energy than she needed. She decided to start *saving energy. She remembered ②her aunt's question at the museum. She thought, " I alone can't do many things to save energy, but I remember that I have to do something to make a better future."
- - - - - 語注と《資料2》は省略(1) 《資料1》の【 A 】【 B 】【 C 】のそれぞれには表にある国のうちの2カ国が入る。その国名を英語で答えなさい(順不同)。
(2) 次のX, Y各グループの4つの英文は、《資料1》の下線部①に関して《資料2(省略)》に書かれた内容を英語に訳したものである。それぞれのエネルギーの説明として誤りのあるものを1つ選び、記号で答えなさい。
X) solar energy generation
ア They think that solar energy generation is more expected than any other *renewable generation.
イ Solar energy generation has a good chance to a lot of workers.
ウ Now Japan is the largest country in the *amount of solar energy generation.
エ Solar energy generation is more expensive than any other generation.
Y) wind energy generation
ア The cost of wind energy generation is the lowest in the cost of other renewable energy generations.
イ They think that they need to *support wind energy generation.
ウ They also think that the *institution of wind energy generation should be built on the sea.
エ We are able to build the institution of wind energy generation in the *National Park. *語注省略
(3) 《資料1》の下線部②について、her aunt's
questionとは何か。本文中から探し、はじめの3ssss語を書きなさい。 -
問題・分析・湘ゼミの対策例 ②
問4 万有引力の法則をめぐる論理判断と計算
万有引力の法則で知られるアイザック・ニュートンの著書を解説した文章を読んでまとめたレポートをもとに、問題が展開されます。 (ア)(イ)は、レポート中にある〔規則1〕~〔規則4〕および〔命題1〕~〔命題7〕をもとに、仮説を説明するのに必要な語句や規則を抜き出します。(ウ)は、「距離の2乗に反比例する」関係を使って、関係表に当てはまる数を計算する問題です。(エ)は、レポートの内容と一致しないものを選びます。
問題分析:論理判断と原理の根本的理解を組み合わせた活用的問題
一見理科に見えますが、実際には文章を読み取って判断を要求する「論理パズル型」の問題といってよいです。また、(ウ)は直接学んだことのない「 yはxの2乗に反比例する」という関係です。「反比例」自体はありふれた数学用語ですが、その意味をきちんと理解しているかどうかが問われます。
(ア)は、〔命題4〕「月は地球から受ける力により、地球に向けて落下し続けている」をヒントにします。木星や土星に対する衛星、太陽に対する惑星の運動も、地球に対する落下運動と『同じような』運動ですから、〔規則2〕の『同種の現象』が当てはまります。
(イ)は、空欄の前の文章「これは、実験の達しうる範囲内のあらゆる物体の性質であり」とあるので、〔規則3〕が当てはまります。このように、文章をていねいに読み、探すことで解答します。理科の知識は必要がありません。「論理パズル」といえます。
(ウ)は、まずxを2乗します。次に、「反比例」という関係は、積が等しくなる関係ですから、yとx2をかけ算します。すると、すべて40という一定の値が出てきます。これが比例定数です。よって、x=3のときのyの値は、40÷9=4.444…≒4.44という答えになります。「yはxの2乗に反比例する」という関係は、直接学ぶことはありませんが、「yはxの2乗に比例する」関係と、「yはxに反比例する」という関係は学んでいますから、ここから関係を推測する作業が必要です。
学習した原理を、ただの語句や数式として暗記しただけなのか、内容の意味するところをしっかり理解していたのかを判定しようという問題です。「夏ゼミ」の出題
メートル法を確立するための委員会には、大革命当時のフランスを代表する科学者が顔を並べた。その中でも代表的な一人に、シャルル・ド・クーロンがいた。彼は、力学および電磁気学の当時最高の研究者で、電荷の単位「クーロン」や電気を帯びた粒子の間にはたらく力(電磁気力)の性質をまとめた「クーロンの法則」にその名を残している。 「クーロンの法則」は、右上の式で、電磁気力(F)、2つの粒子が帯びる電気の量(Q1,Q2)の積、粒子間の距離(r)の関係を示している。なお、kは比例定数である。 この法則は、アイザック・ニュートンが解明した「万有引力の法則」の式(右下)にたいへんよく似ている。これは万有引力(F)と二つの物体の質量 (m1, m2) の積、物体間の距離(r)の関係を示すものである。Gはクーロンの法則におけるkと似た性質を持つ比例定数で、「万有引力定数」と呼ばれている。 以上の二つの法則がよく似ていることから、物質間にはたらく力の大きさが、距離の2乗と( A )の関係にあると推測できる。( A )にあてはまる語句を書きなさい。
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問題・分析・湘ゼミの対策例 ③
問5(ウ) 顕微鏡のレンズで見える像を座標平面で考え、ある箇所が見える点を座標で表す
光の道すじを座標平面上で考えます。長さ2の物体を座標(-1.5 , 0)の位置に置き、そこからy軸上に置いた凸レンズを通ってできる像の先端の座標と支点の座標を求める問題です。
問題分析:理科と数学の教科横断―知識を他分野に応用する力を要求
凸レンズを通って物体の像を作図する問題は理科、座標平面上の直線に関する問題は数学の内容です。理科と数学を融合した「教科横断型問題」の典型です。
まず、理科の知識「光軸(x軸)に平行な光は、凸レンズを通ると屈折して焦点を通る」を使います。
物体の先端(-1.5, 2)からx軸に平行に引いた直線は、y軸上で(0, 2)と交わります。ここで屈折して、焦点を通るのですが、問題文にある「焦点距離が1」というヒントから、x軸上の点(1, 0)を通ることがわかります。ここから数学の1次関数の知識を使います。
(0, 2)、(1, 0)を通る直線の式は、y=-2x+2です。
次に、「凸レンズの中心(原点)
を通る直線は、そのまま直進する」という理科の知識を利用して、原点を通る直線の式を考えます。この2つの直線が交わったところが、実像の先端A’の座標となります。交点は、2つの直線の連立方程式を解くことで求められ、x=3、y=-4となります。
よって、実像の先端A’の座標は(3, -4)、B’の座標は(3, 0)となります。
この問題には、平面図形と相似の関係を利用した解き方など、いくつかの解法がありますが、「図形色・関数色の強い理科」「他分野への活用色が強い数学」という教科横断型問題に対応できることが重要です。
前の項目でも書きましたが、これは特殊な学力ではありません。学んだことをしっかり理解して、応用・活用できる状態にしておくということです。もともと数学は商業、天文、地理などの実用的な問題を解決するための技術として生まれたものでしたし、自然科学(理科)のどの分野も、数学の助けなしには成り立たないものです。
横須賀高校の問題は「常に、学ぶことがらの意味をよく考えよう」というメッセージを伝えています。「夏ゼミ」の出題
図はオランダの画家、フェルメール作「音楽の稽古」である。この絵では透視図法が用いられているが、その消失点*は画中のどこに設定されているか。図を数学における座標平面に見立て、横(下)をx軸、縦(左)をy軸とし、図の左と下の目盛りを用いて、最も近いと思われる座標 (x , y ) を整数で1組答えなさい。
※消失点: 透視図法において、画面中のすべての平行な直線が集まる点のこと。 -
課題と対策
教科を問わないパズル的な作業型問題の練習と英文読解の速さ
どんな素材が出題されても冷静に解き進めることが求められます。また、多くの作業の処理力「速さ・正確さ・ねばり強さ」も重要です。
何度か書きましたが、学んだことを「よく理解する」ことが重要です。そのためには「この法則は現実の何に使われているのだろう?」「この原理を他の分野に広げると何にあてはまるのだろう」といったことを考える習慣を身につけることです。そして、各教科の幅広い応用・活用的問題や全国の入試問題に積極的に挑戦することです。
英語は、単語・熟語集をていねいに参照していたらとても読みきれません。語彙力と、前後の文脈からある程度推理する読解力を同時に求められていると考えてください。たとえば、特色検査レベルの長文問題を「語注」を切り離して、辞書を使って読むという練習も有効です(ただし、厳しめの制限時間を設けてください)。パズル的問題は、公立中高一貫校の適性検査に多く見られます。その中でも南附中の問題は大型で、練習に適します。
2018年度の厚木高校の実際の特色検査を分析し、次年度への対策の指針をまとめました。
A : B : C : D比 3 : 5 : 2 : 2/時間 50分/配点 200点/観点:様々な情報を的確に把握する力・論理的思考力・判断力・表現力
2018年度募集定員:358名 / 2018年度志願者数:461名 / 2018年度志願競争率:1.29倍
完全マークシート化で全設問選択に・やや平易な学力検査拡大型
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問題の概要
英語読解と社会の横断+理科・数学の発展的問題
- ■特徴と変化
- 1全体的傾向 学力検査の拡大発展型
- □変化なし
- 2教科の傾向 国語読解を除く各教科・教科横断色は薄い
- □変化なし
- 3形式の特徴 解答用紙にマークシート使用・全て選択問題
- □設問数やや減・全設問が選択に
問題Ⅰ 英語会話文。野球場をめぐる日米の若者の会話を読みます。内容は野球場の立地や形状、地域との関わりなどについて、日米の違いが示されます。設問は英語読解、データ読み取り、社会の知識問題が並びます。
問題Ⅱ 二酸化炭素と森林に関する資料読み取りとパズル的な情報判断を交えた主に理数の問題群です。
問題Ⅲ 理科の発展的問題群です。題材は「チャーハンの形状とサイズ」の関係。この話題から、ものの表面積と体積の関係や、放熱などに関する設問が出されます。
英語読解+社会の問題Ⅰ、数理横断型の問題Ⅱ、Ⅲと、文系理系に区切られています。分量的にも下の表のように半分ずつとなっています。
複雑な読解や難解な設問は無く、全体的性格は、幅の広い各教科の学力検査といったところです。 -
設問一覧 難易度平均[5.5](昨年度は5.7) ※表の詳しい見方は概要にあります
前半英語+後半理数~全設問が選択問題
選択問題ばかり(県下最大の比率)です。選択式とはいえ、文字数・設問数ともに県下最大級で、時間的に厳しい状況になります。
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設問の特徴
各教科の応用問題の正しい姿を示す
基本構造は英語・数学・理科・社会の学力検査に、発展的性格を与えたものです。なお、文系の前半はストレートな学力検査型です。理数系の後半では応用的性格がより強くなっています。
- 問題Ⅰ
- 日米の野球場に関する会話文を読んで設問に答えます。問1は社会の知識問題で英文とは無関係。問2・問4・問7・問9・問10はストレートな英文読解。問3英文読解+計算。問5はストレートな計算。問6は歴史+データ読み取り。問8は英文読解+地理の知識問題です。素材は教科横断的ですが、内容的には過半数が単教科問題です。
- 問題Ⅱ
- 二酸化炭素濃度の上昇に関する会話文(日本語)を読んで設問に答えます。理科・数学の応用問題です。問11はストレートな計算です。問12は北半球で濃度変化が大きいことに関する理科の知識問題。問13~問15はグラフや表の読み取りで、理科的な素材ですが知識は不要です。
- 問題Ⅲ
- 中華料理店と自宅のチャーハンの形状の違いから設問が出発します。問16~問19は体積と表面積の関係などを理解しているかどうかが問われる数学の発展的問題です。問20は動物の体型と放熱の関係を確かめる理科の応用問題です。
「理科・数学の応用問題」というと、理科では説明記述、数学では「文章題」などがイメージされるでしょうが、多くはパターン化されており、真の応用とは言えません。応用とは本来「場面に応じて知を用いる」というものです。厚木高校の問題ⅡとⅢは、理科的な題材をより幅広く確かめたり、数学の原理のより確かな理解を必要とするような問い方をしたりするなど、パターンどおりの解決では終わらないようになっています。
応用問題の正しい姿と言うことも可能です。 -
昨年との比較
マークシート全面採用+設問数微減の結果、難易度はやや下降
マークシートの全面採用で傾向に変化が見られました。設問数減少に加え、全体に素材がシンプルになり、解きやすくなりました。数学の設問では選択肢があるおかげで解答への道筋が見つけやすくなりました。
同じことが昨年の学力検査にありました。マークシート導入初年度のため、慣れていない受験者が混乱しないように平易な問題が増えたのです。今年の厚木高校特色検査の変化もこのパターンかもしれません。共通選抜・学力検査の数学は、今年マークシート2年目で、多くの選択肢が直感的に判別しにくいものになりました。厚木高校も来年そう変えるかもしれません。
英語の会話文は過去の「ホッキョクグマの生態と環境」「電子書籍」「日本とオーストラリアの文化比較」「複数の言語を習得する方法」などに比べるとわかりやすいテーマでした。ただし、野球や野球場についての知識がある人とそれが無い人との間に読解のスピードの差が生じたことが予想されます。その点で微妙なアンバランスをもっていた可能性はあります。
なお、英語の拡張型学力検査+理数の応用問題という基本的な性格は変わっていません。 -
代表的な問題と湘ゼミの対策例 ①
問題Ⅰ 地理的な知識による判断を含む英文読解問題
問題分析:英文内容の読解から社会の知識にも広がる
近年の学力検査において、教科横断に近いものが見られるのは事実です。英語の読解には例年計算問題が出題されます。また、昨年度は雨温図の判別が出されました。ただし、学力検査では社会の知識は不要でした。あくまでもデータ読み取りや常識的な計算だけの問題です。特色検査では英語を読んで社会の知識を使った判断を行います。難易度はそれほどではありませんが、慣れていないと戸惑うものです。
問8は、英文を読んで、そこに空欄で示されたアメリカの「州」が地図中のどこにあるか選びます。解答はフロリダです。州名は不要ですが、英文にある気候の説明から高温多雨地域を選ぶ必要があります。「特色検査模試」の出題
次の資料1~4は、アフリカ(中でも特に貧困が深刻な国シエラレオネ)に関するデータと、この状況について調べ考えた、高校生の神奈子さんによる英文レポートの一部である。それぞれを見て、あとの問いに答えなさい。
資料4
By using *Data 1, I *calculated the *death rate of *pregnant women and *women who have just given birth to a child. *According to this, the death rate of pregnant women and women who have just given birth to a child in *Sierra Leone is about[ ] times as large as than that in Japan. I did some *research on this. One of the reasons for this high death rate is that they don’t have *access to clean water. The other reason is that they don’t *decontaminate their water *thoroughly. Look at Data 2 and 3. You can also see that the top *causes of death in African children are *infectious diseases. The *probability of getting an infectious disease is very high *compared to Japan. To *improve this *situation, it is very important that we send *medicines and *medical equipment to Africa. We should also send doctors and nurses to support them. However, *in the long run, the key to improve this situation is in improving environmental *hygiene. It is important to *help them improve their environmental hygiene. We should also *support them to study about hygiene, so they can *realize the *importance of it. This will *lead to *resolving the problem faster and more *effectively.ア The *author learned Japanese phrases by making English sentences that sounded similar to the original one.(1) レポートの空欄[ ]にあてはまる数値として最もふさわしいものを次のア~オの中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 150
イ 200
ウ 250
エ 300
オ 350
(2) レポートにあるアフリカの環境衛生状況を改善するためにどのような具体的な方法があるか。成果をあげられる考えられる方法を一つ、レポートの内容を参照して日本語で具体的に答えなさい。 -
代表的な問題と湘ゼミの対策例 ②
問題Ⅱ 二酸化炭素濃度の周期的上昇の理由を考察
地球全大気の平均二酸化炭素濃度の推移グラフと与那国島の月別平均二酸化炭素濃度のグラフと関連する会話文を読んで問いに答えます。
問題分析:「資料読み取り」の基本を再確認
前半は二酸化炭素濃度についての知識問題、後半は森林についての資料を読んで答える問題です。
たとえば図3として、スギ、ヒノキ、ブナ、クヌギを比較したグラフが示されます。これらの「樹齢」と「炭素吸収量」の関係が表現されています。スギが特に目立ちます。スギは樹齢10年程度から炭素吸収量が急激に大きくなります(他の倍以上です)。60年以上になると変わらなくなりますが。この性質からスギを植える場合の意図を想像できます。「二酸化炭素をどんどん吸収させる」ということです。さらに推理を広げれば、この数十年でスギの植林が盛んになったのではないかと想像することも可能です。
データを読む際、そこに何らかの意味が示されていることを想定しながら読まないと何も得られないことになってしまいます。データの「読み方」と、読んだことの意味を他の知識に結びつけることが求められています。「特トレ」の出題
(3) 下の資料Aは、英文中の「CO2」(二酸化炭素)濃度の近年の推移を示すものである。これによると、CO2の排出量は増加の傾向にあるが、規則的に変化しながら増えていることがわかる。この変化の理由を推測して答えなさい。
(4) 下の資料Bは、英文中の「CO2」排出量の緯度ごとの状態を示すものである。これによると、CO2の排出量は緯度によって大きく異なることがわかる。この相違の理由を推測して、特に多い地域がそうである理由に触れながら答えなさい。 -
代表的な問題と湘ゼミの対策例 ③
問題Ⅲ チャーハンを題材に、物体の体積と表面積の関係、放熱効果や動物の体型などを判断
・中華料理店の「半球状のチャーハン」を半径r[cm]の半球とする。
・自宅の「平らに盛られたチャーハン」を半径r[cm]、高さh[cm]の円柱とする。
・半球と円柱の体積は等しいとする(同じ量の米を用いているという意味)。
・チャーハンが空気に触れることで、外へ熱が移り、冷めていくとする。
※ただし、チャーハンは空気や皿より高温で、熱の移動は皿を含むチャーハンの表面からのみとし、空気と皿は同じように熱が移るものとする。
以上の条件をもとに問いに答えます。問題分析:原理の理解+ていねいな読解を求める活用型問題
「保湿性」をテーマに展開されます。テーマは理科ですが、理科知識はほとんど使いません。体積と表面積を考える「図形」の問題です。原理を現実のできごとに活用する、典型的な「活用型問題」です。
問16は、半球と円柱の体積が等しいことを利用して、円柱の高さを求めます。問17は体積あたりの表面積の値を求めます。どちらも、円柱や半球の体積と表面積を求める公式を頭から引き出して、多くの文字記号を処理することがポイントです。図形の応用問題です。
問18の放熱効果は、「体積あたりの表面積の値が大きい形状のチャーハンが冷めやすい」という仮説を立てていることに着目します。より低温の空気に、より広い面積で接することで、より大きな放熱効果が得られます。「熱の伝導」の原理です。
問19、半径x[cm]の半球の体積当たりの表面積の値yは、y=9/2xとなるので、反比例の関係と分かるので、「双曲線」のグラフを選びます。この関係は、「チャーハンが大きい形状であるほど冷めにくい」ことを表しており、問20の選択肢から「恒温動物の近縁な種では、大型の種類ほど体積(体重)当たりの放熱量が少なく、寒冷な地域に生息する」を選ぶことにつながります。
与えられた情報をていねいに読むことと、原理の知識を使いこなすことが求められています。「特色演習」の出題
下に記した会話は、食後の家族団欒(だんらん)の1コマである。お父さんとお母さん、小学5年生の長女真由美さん、そしてなかなかの理科好きの中学3年生の長男貴之君。
お母さん 「お茶をどうぞ。」
真由美 「どうして私の湯飲みは小さくて、お父さんのはおすし屋さんで出てくるような大きな湯飲みなの?」
お母さん 「真由美は熱いお茶は飲めないでしょ。直ぐに冷めるように小さいのよ。お父さんは熱いお茶が好きなのよ。」
真由美 「へえ!大きい湯のみだと冷めないんだ!」
貴之 「お父さんの湯飲みに触れてごらん。」
真由美 「あつい! ねえ、お父さん、私のはもう冷めてきているのに、どうしてお父さんの大きいのはなかなか冷めないの?」
お父さん 「貴之兄ちゃん、どう思う?」
貴之 「お父さんの湯飲みは大きいし壁も厚い。真由美に比べてたくさんのお茶が入っている。」
お父さん 「いいところに眼をつけたねえ。それじゃ明日ビーカーと温度計を借りてくるから、実験してみよう。」
そして翌日、親子で以下のような実験が行われた。■実験内容
大ビーカー(500ml用、内径86mm)と小ビーカー(200ml用、内径63mm)のビーカーを準備した。このとき、材質とガラスの厚さは同一である。お湯の温度測定は60秒ごとに行った。
実験① 大きなビーカーに400ml、小さなビーカーに200mlのお湯を同時に入れて、時間経過に伴う温度変化を温度計で測定した。このとき、ビーカ一のお湯の高さは、大ビーカー6.9cm、小ビーカー6.3cmであった。
実験② 大きなビーカーに200ml、小さなビーカーに200mlのお湯を同時に入れて、温度計を用いて時間経過に伴う温度変化を測定した。このとき、ビーカーの中のお湯の高さは、大ビーカー3.5cm、小ビーカー6.4cmであった。
実験③ 大きなビーカーに100ml、小さなビーカーに200mlのお湯を同時に入れて、時間経過に伴う温度変化を温度計で測定した。このとき、ビーカーの中のお湯の高さは、大ビーカー1.7cm、小ビーカー6.4cmであった。 得られた実験結果は表のとおりであった。■実験結果
表:時間に伴うお湯の温度の変化(℃)■実験後の会話
お父さん 「さて、表の結果を図に書き直してみよう。横軸に時間、縦軸にお湯の温度として、真由美、書いてごらん。」
真由美 「あれ、まっすぐじゃあないよ。」
お父さん 「実はこの問題は難しくて、この曲線は複雑な関数であらわされるグラフになるんだよ。真由美には、難しいから、最初と最後の温度で比べてみよう。」
真由美 「一番お湯の温度が下がったのが、大きなビーカーに100ml入れたときで、一番下がらなかったのが大きなビーカーに400ml入れたときになったよ。」
お父さん 「このお湯の温度の話から、動物の形態とその動物の生活地域の温度環境との関係も考えることが出来るんだよ。」
以上の会話文、実験内容および実験結果から、以下の問いに答えなさい。ただし、お湯の冷め方は、時間に対して複雑な関数であらわされる関係であるが、ここでは直線関係であらわされるものと仮定する。
(1) 真由美さんがお父さんに教えられ、実験①の結果を時間に伴う温度の推移として、折れ線グラフに表したものが上の図①である。同じように実験②と実験③の結果について図②、図③に記入しなさい。
(2) 表に示した結果および図示した結果から、ビーカーの大きさ、入れたお湯の量と時間に伴ったお湯の温度変化にはなんらかの関係性を考えることができる。ビーカーの大きさ、入れたお湯の量とお湯の冷めやすさの関係を40字以上50字位内で説明しなさい。ただし、外気温はお湯の温度に比べ充分に低く、ビーカーの材質は2種類間で同質のものとする。お湯に触れていないビーカーのガラス部分は空気と同じと仮定する。
(3) 生物の生活圏を温度の環境としてとらえたとき、高温地域と低温地域に住む、同じ種類の動物の形態の違いについて、上の実験結果とその解釈を用いて説明することができるが、それはどのように考えられるか。次の説明を参考にして書きなさい。なお、解答には必ず[体表面積]の語を用いること。
説明:熊の中で体が最も大きいのはホッキョクグマである。また、シベリアの虎はインドの虎よりも体が大きい。 -
課題と対策
英語読解力と数学の計算力向上が最優先課題~幅広い応用問題に積極的に挑戦
英語読解力と理数の応用力が重要です。また、今年のように全体に平易な場合、ミスをしないことが重要な意味をもちます。一方、来年度がマークシート使用2年目の場合、難化する可能性もあります。
英語の対策は、読解の幅を広げることです。自然科学や社会科学系の文章にも、他の地域の公立高校入試問題を使ってチャレンジすべきです。
理数については、応用問題の練習の幅を広げることと、計算力を高めることです。他の学校の特色検査も含め、慣れていない応用問題に積極的に挑戦してください。そのときのポイントは「正確に書いて解く」ということです。選択ばかりの厚木ですが、選択肢に安易に頼る学習は逆効果です。正しく解答を導き、その上で選択肢から選ぶという、正統派的な練習が重要です。また、より多様なパターンの応用問題を解き、同時に「これをきちんと計算したらどんな数値になるだろう」「これを記号化して整理してみよう」「このことを英語で質問したらどうなるだろう」といったことも意識しましょう。
教科の問題ではありますが、既存の問題パターンにしばられない学力を鍛えることが、厚木高校合格の、そして何より、実践的な学力向上の有効な手段です。
2018年度の平塚江南高校の実際の特色検査を分析し、次年度への対策の指針をまとめました。
A : B : C : D比 3 : 5 : 2 : 2/時間 50分/配点 200点/観点:表現力・理解力・情報活用能力・論理的思考力
2018年度募集定員:318名 / 2018年度志願者数:424名 / 2018年度志願競争率:1.33倍
コンパクトで幅広い設問で、5教科をまんべんなく問う―基本重視の教科横断型問題群
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問題の概要
ベーシックな「教科横断型」:前半文系・後半理系
- 平塚江南高校 特色検査
特徴と変化 - 1全体 多様性重視・コンパクトな設問でバラエティ豊か
- □変化なし
- 2教科 5教科+論理・多様な出題が一貫している
- □変化なし
- 3形式 選択が多いが、説明記述もある
- □選択やや減・「意見」が2問登場
- 課題1
- 文系の教科横断型です。「旅行」をテーマにした、日本語のエッセイと英語の会話文が続き、これらの文章から派生する英語、国語、理科、社会の読解や知識問題が並びます。
- 課題2
- はじめに「比」に関連した5つの説明があります。これを手がかりにして、地理、理科、数学のパズル的な応用問題が続き、最後に歴史の問題が置かれます。
全体の構成は教科横断型です。ただし、個々の設問を取り出して見ると、下の表のように単教科が大半です。実質的には「資料」から派生した「小問集合」的な問題群です。設問数は多めですが、小さな設問が多いので、速度よりも正確さを重視しています。
- 平塚江南高校 特色検査
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設問一覧 難易度平均[5.6](昨年度は5.3) ※表の詳しい見方は概要のページにあります
「思考プロセス重視」―設問数が多く、変化に富むため最後まで気が抜けない特色検査
上の表で分かるように、説明記述が2問ある以外は、全体に「読解プロセス」「解答プロセス」はシンプルなので「思考重視」と言えます。
時間配分が重要になります。前半から後半に向かって難しくなるような性格はないので、問題の全体的配置をざっと確認し、勝負ポイントを見極めてから、とりかかる順番と時間配分を考えると良いでしょう。 -
設問の特徴
基本的な内容を、自由自在に使いこなすことが課題
教科横断型というとそれだけで難しそうな印象を与えますが、平塚江南は、あえて基礎基本中心に出題しています。一つ一つの問題は単独で見ると意外に解きやすいものが多いのです。ただし、学力検査のように、設問を読めば「ああ、この内容についての問題なのか」と分かるようなパターン化された性格はありません。学んだことを、設問の求めに応じて「頭の倉庫」の中から引き出し、自由自在に使いこなすことが課題です。
説明記述問題に特徴があります。「行きたい土地(日本語)」「連れて行きたい土地(英語)」について「自分の意見」を書くものが2問出されました。ただし、論述(意見を説明する)と呼ぶには規模が小さいので、先ほどの表では「説明」に分類しています。プレゼンテーション的な「横浜サイエンスフロンティア」「横浜緑ケ丘」以外で意見を書く問題があるのは現在、同校だけです。 典型的な「教科横断型」問題を今年の問題から示します。 -
課題1・問2
論述無くなる+基本と多様性の重視は変わらず+文理のバランス回復
次の説明と統計データ中のXは大西洋に面する国を示している。Xの国名を日本語で書きなさい。国名は正式名称でなくてもよい。 説明 X's leader got the Nobel Peace *Prize in 2009.(*prize:賞) ※このパターンの教科横断型問題は、特色検査対策の教材や模試で繰り返し出題されています。あえて実例はあげませんが、受講者には「おなじみ」と言って良いでしょう。
説明部分を日本語に直せば「X国の指導者が2009年度のノーベル平和賞を得た」となります。概略を示せば、「英語で書かれた社会の問題」です。該当する人物はアメリカ合衆国のオバマ大統領(当時)です。
特色検査の対策問題では「おなじみ」ですが、こういった設問に慣れていないと、戸惑うことでしょう。英語ではここまで具体的な知識が問われることはまれですし、社会では問題が英文で書かれることはありません。 しかし、どの教科の知識にしても、その「知識」だけが単独であっても使い道はありません。「アメリカの人口はおよそどれくらいか」「アメリカは大西洋に面しているか」「ノーベル平和賞受賞者にはどんな人がいたか」などをお互いに無関係な「言葉の記憶」のままにしておくのではなく、相互に関連づけられてすぐに引き出せる「スタンバイ」状態にしておくことが重要なのです。それが学んだ知識の活かし方であると言っても良いでしょう。 -
昨年との比較
「意見」を書く説明記述が復活+小問集合的性格は変わらず
コンパクトな設問が多く並ぶ形式、基本重視の変化に富んだ問題の性格などの基本は変わっていません。難易度も大きく変わっていません。 昨年無くなった「意見」を書く問題が、上に書いたように復活しました。(特に難しいわけではありませんが、選択問題が増える一方の潮流の中では珍しいことです)。設問単位で見た場合の「教科横断」の度合いは小さいままで、「課題(大設問)」単位で見ると様々な教科の問題を混合していますが、個々の設問はシンプルです。小問集合的性格は一貫して続いています。
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問題・分析・湘ゼミの対策例 ①
課題1 問10 神奈川県の観光地について「選択し、理由を記す」小型英作文
ロンドン出身のアレックスと神奈川県民のミサキの会話を読みます。その前に漫画家ヤマザキマリの旅に関するエッセイを読んでおり、ミサキは「将来外国に住みたい」と言います。アレックスは「なぜ? 神奈川は素晴らしいところなのに」と返し、神奈川を訪れる観光客との応対や、間もなく東京オリンピックで来訪者がさらに増えることなどについて会話が進みます。最後に、アレックスは、2020年に妹が来るので神奈川を案内したいと言い、どこが良いかたずねます。ミサキはこれに「Oh, you should take her to( 地名 )because( ).」と答えます。
上の2つの空欄を補って台詞を完成させます。「特色検査模試」の出題
あなたが日本にある「caldera(カルデラ)」を英語で紹介するとしたら、どのようにするか。2つ以上の英文で答えなさい。なお、第一の文にはその名前と場所を、第二の文以降にその特徴を書きなさい。
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問題・分析・湘ゼミの対策例 ②
課題2 問3 音階とその振動数の間にある関係を整数比で表すパズル的計算問題
「ド」で始まる音階の2番目の音を「レ」とし、「レ」に対し、1オクターブ高い音を「レ(●)」と表すことにし、「ソ」と「レ(●)」の振動数を2:3になるようにするときの、「ド」と「レ」の振動数の比を求め、最も簡単な整数比で表します。
なお、設問の前の「資料」には、次の2つの情報が示されています。
・音が1オクターブ上がると振動数が2倍になる
・音階の1番目「ド」と5番目「ソ」の振動数の比が2:3
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問題分析:よく知っている「比」の理解と活用力を試す
この問題は、資料を読み取る「情報処理型」と、割合の感覚を試す「計算処理」の融合です。ていねいに情報を整理する「作業の正確さ」が求められています。また、比についての説明は「資料」にありますが、比や割合の理解がどれだけできているか、使いこなすことができるかも重要なポイントです。
では、解法を説明します。
まず、「資料」から「ド:ソ=2:3」が、問題文から「ソ:レ(●)=2:3」が読み取れます。ここから、ド:レ(●)を計算します。「ド:ソ=2:3=4:6」、「ソ:レ(●)=2:3=6:9」のように、「ソ」の数値を同じにします。ここから、「ド:レ(●)=4:9」となります。ここで、音が1オクターブ上がると振動数が2倍になることから、「レ:レ(●)=1:2」となります。先ほどと同じように、「レ(●)」の数値を同じにすると、「ド:レ=8:9」となります。 -
「夏ゼミ」の出題
ヴァイオリンなどの弦楽器は、強く張った弦を弓でこすって発音する。弦の振動によって発せられる音の高さは、弦の長さによって決まるので、ヴァイオリンなどでは、演奏者が指で弦の一部を押さえ、弦の長さを変えることによって音高を変え、旋律を演奏できるようにしている(ピアノの場合は、鍵盤ごとに異なる長さの弦が張られている)。
この弦の長さと音高の関係については、古代ギリシアの数学者、ピタゴラス(紀元前582~496)の時代には、次のようなことが知られていた。
・弦の長さを半分にすると、1オクターブ上の音になる
・弦の長さを3分の2にすると、5度上の音になる
・弦の長さを4分の3にすると、4度上の音になる
そこで、このことを利用して音階を作ることが考えられた。
まず、はじめの音として、弦長「1」の弦をはじいて出る音を「ド」とする。次に、弦長1/2の音を1オクターブ上の「ド」とする。その後、下の「ド」から順に5度ずつ音を上げていき、1オクターブ上の「ド」を超えたら1オクターブ下げる、という作業を順に行い、それぞれ音階を順番に「ソ」「レ」「ラ」「ミ」「シ」とする。
例えば「ソ」は、下の「ド」の弦を2/3倍するので弦長は2/3となる。その次の「レ」は、「ソ」の弦長をさらに2/3倍するので2/3×2/3=4/9となるが、弦長が1オクターブ上の「ド」より短くなったので、「レ」を1オクターブ下げるために2倍し、弦長は8/9となる、といった具合である。また、「ファ」は以上の原理から外れる音ということで、下の「ド」を4度上げた音と決めた。
ある高さの「ド」の振動数が264Hzであったとする。このとき、1オクターブ上の「ミ」の高さの振動数はいくらか、答えは四捨五入して整数で答えなさい。ただし、振動数は弦長と反比例するものとする。 -
問題・分析・湘ゼミの対策例 ③
課題2 問5 示されたルールにしたがって作業して進める図形パズル
右の図のように、1本の線分を三等分して、真ん中の線分(CD)を取り除きます。そこに、2つの線分をはめこんで三角を作ります。これを操作Iとします。この「操作I」を、1辺3cmの正三角形のすべての辺に対して行い、できた図形(図2)の全ての辺にもう1回行うと、下の 図1→図2→図3 のように変形していきます。
このときの図3の「すべての辺の長さ」と「面積」を求めます。問題分析:情報の整理と正確な作業を求める発展的図形パズル
問題にあるような方法で作られた図形を「フラクタル図形」と呼びます。この図形は、規則正しく線分の長さが増えていきます。「規則性問題」の典型です。公立中高一貫校の適性検査にもよく使われる有名な題材です。
まず、「すべての辺の長さ」から考えます。
1辺が3cmの線分に、操作Iを一度行うと、1cmの線分が4本現れます。
その4本について、もう一度操作Iを行うと、の辺が16本現れます。
正三角形ですから、もともと辺は3本あるので、となります。
次に「面積」を考えます。
もとの正三角形は、底辺が3cm、高さはなので、
となります。
操作Iを一度行うと、新たに1辺が1cmの三角形が3つ増えます。
この三角形は、もとの正三角形との相似比が1:3の関係なので、もとの正三角形よりも面積がになります。
よって、増えます。
もう一度操作Iを行うと、1辺がの正三角形が12個でき、
これはもとの正三角形との相似比が1:9なので、もとの三角形よりも面積がになります。
よって、増えます。
よって、となります。
操作を重ねる段階で、どのように長さや面積が増えていくかをていねいにメモしていくことが、この問題を解くポイントです。「特トレ」の出題
下の図1のような部品ア、イ、ウがある。それぞれの部品は、凸部と凹部で隙間なくつなぐことができる。図2は、ア、イ、ウのそれぞれを他の部品とつなぐ様子を示したものである。また、イとウの斜線部分は正三角形である。例えば、ア、イ、ウをつないだものを真上から見ると図3のようになる。また、図4は、図3の部品のつなぎ方を模式的に表したものである。ア、イ、ウの部品をあわせて10本使い、部品をつないで枠をつくる。ただし、すべての種類の部品を使い、部品は裏返して使えないものとする。
(1) 図5は、ある枠の部品のつなぎ方を模式的に表したものである。この枠は、ア、イ、ウをそれぞれ何本使っているか、答えなさい。
(2) ウを1本だけ使って枠をつくるためには、アとイをそれぞれ何本使えばよいか、答えなさい。また、その求め方とこのときできる枠を図4にならってかきなさい。課題と対策
自由な思考の習慣+基本重視の練習を
教科横断型の問題群ですから、あるものごとを学んだとき、教科の枠にとらわれずに思考を広げてゆく習慣をつけることです。たとえば課題1では、計算を除く英語・国語・数学・社会がどう結びつくかのサンプルが示されています。問われているのはあくまでも教科の具体的な知識ですが、相互に関連づけられてすぐに引き出せる「スタンバイ」状態になっていることが大切です。 たとえば、社会で気候が登場したら、理科の気圧配置や飽和水蒸気量を連想し、同時に示されたデータを計算し、さらにその気候がその土地の文化に与えた影響を想像する……このような思考ができるということです。 細かい知識の量よりも、理解の質が重要ということなのです。特に有効な対策は、学んだことを誰かに説明することです。これ以上有効な内容理解の方法は無いと言っても良いくらいです。 次に、設問で聞かれている内容と条件、解答の根拠となるものに目印をつけるといった、問題を解くための基本動作を徹底することが重要です。もちろん、ていねいな作業を忘れてはいけません。 では、対策の2つの柱をまとめます。
1 重要事項について「なぜ?」「どのように?」といったことを考える習慣を身につける
2 設問を正しく読んで、なすべきことを明らかにする習慣を身につける
スムーズな作業力も欠かせません。問題練習において、制限時間を設けることを強くすすめます。
以上のことを心がけながら「今度はどんな問題でくるかな」のように楽しみにできれば、平塚江南の合格はぐっと近くなります。
以上で2018年度神奈川県特色検査の「高校別分析と対策」を終わります。
ぜひ来年以降の合格に向けて進んでいきましょう。
尚、公立高校の募集定員や入試日程、5教科の共通問題の傾向などの最新情報は『神奈川県高校受験情報』ページもぜひご参照ください。