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コラム

キャリア教育:ワールドライブラリー×翻訳家 かまちゆかさん×湘南ゼミナール/特別コラボ授業【後編】

2020.01.22

特別コラボ授業【前編】の、世界中の絵本を日本の子ども達に届けるワールドライブラリーの記事はご覧いただけましたか?

湘南ゼミナールでは、難関高受験コースの生徒さんを対象に様々な仕事をする"素敵な大人"と共に特別コラボ授業を企画しています。今回は、株式会社ワールドライブラリー取締役の林さんと、翻訳家のかまちゆかさんご協力のもと開催しました。


【後編】では、翻訳家かまちゆかさんによる、日本の子ども達に海外の絵本を届けるには欠かせない翻訳という仕事の奥深さを学びます。さらには、普段の勉強では触れたことのない英語翻訳に挑戦します!


ぜひ、以下よりご覧ください。



超ロングセラー作品といわれる
近代絵本の元祖とは!?


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写真:ワールドライブラリー取締役の林さん()、翻訳家のかまちゆかさん()


翻訳家 かまちゆかさん:
いきなりですが、問題です!
子どもが楽しむための絵本はいつ頃できたでしょうか?

約300年前

約240年前

約170年前

さて、この3つのうちどれでしょう?皆さん手を上げてください。

②が一番多いですね!


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翻訳家 かまちゆかさん:
正解は、③の約170年前なんです。実はあまり昔じゃないんですね!
日本でいうと江戸時代の頃に、子どもが楽しむための絵本ができました。それより前にも絵の入った本はありましたが、子どものしつけのために作られたものがほとんどでした。

約170年前にドイツで初めて子どもが楽しむために作られた絵本、それが、この日本語タイトル『ぼうぼうあたま』っていう本です。(笑)
以前は『もじゃもじゃペーター』というタイトルでも出ていました。


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写真:約170年前に発行され、今も愛されている絵本の邦訳『ぼうぼうあたま』ハインリッヒ・ホフマン作、伊藤庸二 訳/五倫文庫

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―――この絵本は、今もドイツや日本でも出版され、多くの人に読み継がれるロングセラー中のロングセラー!こうした絵本に欠かせない"翻訳"とはどんな仕事なのでしょうか。


翻訳家 かまちゆかさん:
翻訳ってなにかというと、まず外国語を日本語に訳すことを和訳といいます。
翻訳は原文を正確に日本語に訳すだけじゃなく、原文の雰囲気を読み取って、汲み取って、分かり易く読みやすいものにすること、それが翻訳です。
もちろん外国語を日本語にするので、語学力は必要ですが、それ以上に必要なのが日本語の表現力なんです。どんなに正しく訳されていても文章が面白くなかったり、読みにくかったらダメ!そこが大切なところです。




苦節(通算)10年
翻訳家になるまでの道のり

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写真:手に持った本 『プラム・クリークの土手で』ローラ・インガルス・ワイルダー作/ガース・ウィリアムズ画/恩地三保子訳/福音館書店


―――かまちゆかさんは、小さなころから本を読むのが大好きで、なかでも特に海外の本が大好きだったといいます。


翻訳家 かまちゆかさん:
私は「大草原の小さな家」というシリーズがすごく好きで、繰り返し読んでいました。大学で英語を勉強しましたが、卒業後は普通の会社員になって普通に生活をしていました。
その後、ふと寄った書店で大好きだったこのシリーズの原書に出会ったんです。
原書と邦訳を読み比べてみて、「この英語ってこんな日本語になるんだ!」と衝撃が走り、即行動したんです。

それからは翻訳の通信教育を受けたり、学校に通ったりして子どもの本の翻訳の勉強をひたすらしました。でも‥‥勉強したからって翻訳家になれるわけじゃないんですね。
修業時代には原書を読んでレポートを書くという出版社向けの仕事を何年もやり、ようやく翻訳の仕事につけるようになりました。
勉強を始めて、自分の訳した本が出るまでに通算10年くらい掛かったんです。途中でやめようかとも思いましたが、今思えばあきらめなくて良かったと感じています。


―――努力して手にした翻訳家の仕事。なかでも絵本の翻訳はどんな風に行うのでしょうか。


翻訳家 かまちゆかさん:
絵本の翻訳って易しそうって思いますか?
原文も難しくはないので、簡単そうって思う人が多いんですが、実は結構手強いんです‥‥。

その理由は大きく3つ。
1つは、少ない文章から意味を深く読み取らなければならないこと。
2つは、絵本は子ども達が親御さんに読んでもらうので耳で聴きます。ですからリズムがすごく大切です。
3つは、小さい子ども達は知っている言葉が少ないので、その限られた言葉のなかで文章を訳さないといけない。


―――子ども向けの翻訳の難しさは、ご本人曰く両手を縛らて訳しているような感じだといいます。


翻訳家 かまちゆかさん:
次に意訳についてです。意訳というのは、意味を訳すと書きます。
どうしても日本語にできない言葉が出てきた時には、文章全体の意味を汲み取って分かり易い表現に訳す、それを意訳といいます。
実際に例を見てみましょう。

雌鶏が主役のお話に出てくる一例:A Dreamer

辞書を引くと夢見る人とかって訳されていますが、主役は鳥なので人は使えないですよね。このドリーマーというのは日本語に訳すのは無理なんですね...なので別の方向から訳すことにしました。
この雌鶏の性格を例えるなら、"マイぺース"とか"のうてんき"でしょうか。
それで探し当てたのが「のんき」という言葉でした。ドリーマーの意味とイコールではないですが、この文脈には合う。こういうのを意訳といいます。




翻訳家100人なら、訳も100通り。
正解の無い世界で求められるのは


―――翻訳家が100人いれば、100通りの訳があるといわれる翻訳の世界。その世界感が分かる題材を見ていきます。


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翻訳家 かまちゆかさん:
シェル・シルヴァスタインの絵本「THE MISSING PIECE Meets the BIG O」を題材として見てみましょう。『ぼくを探しに』という絵本の続編として刊行されたもので、この本を最初に訳したのが倉橋由美子さんです(1982年)。さらに2019年11月、村上春樹さんがこれを新たに訳した本が出版されました。
それらは、同じ本だと思えないくらいの違いがあります。


<訳の例>

原書タイトル:『THE MISSING PIECE Meets the BIG O


倉橋由美子さん訳:『続 ぼくを探しに ビッグ・オーとの出会い』

(シェル・シルヴァスタイン作/講談社)

村上春樹さん訳:『はぐれくん、おおきなマルにであう』

(シェル・シルヴァスタイン作/あすなろ書房)



―――どちらの訳も正しい...。正解が無いからこそ翻訳家として信頼を得る難しさも伝わってきます。実際に翻訳開始から出版までは、どのくらいの期間を要するのでしょうか。


翻訳家 かまちゆかさん:
絵本の場合は2~3週間で訳します。読み物の場合で3~4カ月です。
とはいえ、いきなり訳し始めたりはしません。

絵本の翻訳の手順は、

文章を何度も読み込みます。

絵を隅々まで見ます。

この絵本は何歳くらいの子に適したものかを判断します。

キャラクターを設定します。(どういう性格か、どんな話し方をするか)

作中に出てくる見たことがないものや初めて聞いたものを調べて準備します。

①~⑤の作業を終え、作品のイメージが固まったら初めて訳します。


―――そうして何度も読み返し、推敲してようやく形となった翻訳文も、出版社に送った後に何度もやり取りし、1カ月ほどかけて手直しを行うといいます。本を訳し始めて出版まで、実に半年から1年程度は掛かるといいます。


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―――そこで、生徒さんも翻訳を体験!これまでのお話を聞いて、とても楽しそうに英語に向き合う生徒さんたち。いつもと違う方法で触れる英語にみなさん抵抗なく挑戦していました。


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翻訳家 かまちゆかさん:
子どもの本の翻訳というのは、子どもたちに夢や冒険を届けられる楽しい仕事だと思っています。良い翻訳がどんなものかというと、読んでいて翻訳だと分からないような自然な日本語になっている、子ども達が夢中になって読めるような訳だと思います
これからもそういう翻訳ができるように私自身も努力をしていきたいと思っています。
その為にも私が特に大切にしているのは、自分自身が楽しんで訳すこと。自分自身が楽しんでいないと、どんな訳をしたって読んでいる方が楽しめないと思うので、これが何より大切だと思っています。


―――小さな頃から抱いていた子どもの本への想いが、今の翻訳家としての姿勢に繋がっているかまちさん。その想いは言葉となって、絵本を読む子ども達に届けられています。


以上、取材【後編】より。


イベントの最後にはワールドライブラリーより、絵本レンタルサービスで一定期間使用した絵本を様々な施設へ寄贈する*リユースプログラムで利用している絵本をご提供いただき、生徒さん自身の手で修復しました。

*リユースプログラムの活動はこちら

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―――生徒さんが自分で選び、修復した絵本をワールドライブラリーより寄贈いただきました。終始イベントを楽しんでいた生徒の皆さんからは、最後まで笑顔が溢れていました。


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特別授業を実施いただいた、ワールドライブラリー取締役の林さん、翻訳家のかまちゆかさん、誠にありがとうございました。

ワールドライブラリー×翻訳家×湘南ゼミナール 【前編】記事はこちら


※※本企画は株式会社ワールドライブラリーと、湘南ゼミナールの企業交流プロジェクトVISIONARY SWANS双方が、CSR(社会貢献)活動の一環として、難関高受験コースの生徒さん向けに無料にて行っております※※


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